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【社説】

米国一般教書 「偉大な国」と誇れるか

 融和を訴えながら、対立を呼んでいる国境の壁の建設に固執する。トランプ米大統領の矛盾した一般教書演説である。米国を再び偉大にするという公約とは相変わらず逆行している姿勢を憂える。

 いつもの攻撃的なトランプ節は鳴りを潜めた。代わりに「報復や抵抗の政治を拒んで、協調と妥協を受け入れよう」と訴えたところは、別人のようだった。

 ところが、その舌の根も乾かぬうちに、メキシコ国境の壁の建設の必要性をあらためて主張した。

 建設費を盛り込んだ予算案をめぐる民主党との対立で、予算成立のめどが立たないまま一部の政府機関が史上最長の三十五日間、閉鎖に追い込まれた。

 迷惑を被ったのは一般国民と、無給を余儀なくされた約八十万人の政府職員だ。暫定予算が切れる十五日までに決着しなければ、この危機は再燃する。

 トランプ氏は壁建設の理由として、不法移民による麻薬密売などの犯罪や、米国人労働者の雇用減少という「実害」をしきりに言い立てた。

 だが、全米科学アカデミーの調査では、移民の犯罪率は米国出生の人よりむしろ低い。それに米経済も、農作物の収穫などの低賃金労働に携わる多くの移民によって支えられている。

 人々の不法移民への恐怖や反感をいたずらにあおる態度は改めるべきだ。社会の分断を深めるだけである。

 トランプ氏が壁建設にこだわるのは、再選をにらんで支持層固めの思惑があるからだ。看板公約を下ろすわけにはいかないのだろう。それでも民主党が下院の過半数を占める「ねじれ議会」だ。双方が歩み寄らないと政治は機能不全に陥る。

 就任以来の二年間で米国のイメージは著しく悪化した。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが昨年、二十五カ国で実施した世論調査によれば、七割の人がトランプ氏を信頼していない。

 指導力を発揮するどころか、逆に温暖化対策のパリ協定離脱をはじめ身勝手な行動で国際社会をかき回し、中国との貿易戦争という波乱も巻き起こした。「トランプ・リスク」と呼ばれるほど世界から厄介者扱いされている。

 トランプ氏は演説で「米国は空前の好景気に到達した。米国は連日、勝ち続けている」と自画自賛したが、米国の国際的地位を低下させた現実を認識すべきだ。

 

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