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【社説】

米朝再会談 ベトナムの歩みに学べ

 二度目の米朝首脳会談が今月下旬、ベトナムで行われる。会談の行方は予断を許さないが、北朝鮮は、国際社会に進出し、敵対した米国と良好な関係を築いたベトナムの歩みを参考にすべきだ。

 ベトナムが会談場所になったのは、北朝鮮から比較的近く、直行便で行くことができるからだ。

 さらに会談開催の有力候補とされる中部の都市ダナンは、二〇一七年にアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を開催し、ホテルも充実している。

 ベトナムを提示したのは米国側だが、地理的条件だけではなく別の狙いがありそうだ。ベトナムの経験を学んでもらうことだ。

 ベトナムは一九七五年に米国との戦争に勝利し、南北統一を実現した。八六年にドイモイ(刷新)と呼ばれる経済政策を発表。社会主義体制を守りながら、徐々に改革・開放路線に進んだ。

 米国からは経済制裁を受けていたものの、段階的に協力関係を拡大。九五年に正式に国交を結んでおり、密接な交流をしている。今では、東南アジア諸国連合(ASEAN)の一員などとして、国際社会で存在感を増している。

 ダナンは、ベトナム戦争で米軍が初上陸した、かつての激戦地。今は、年間数百万人の外国人観光客が訪れ、海外資本のホテルが林立する人気観光地になった。

 戦争での勝利にこだわらず、経済成長を最優先にして、米国との関係改善を進めた成果だろう。

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は、観光産業に関心が強いという。会談の合間に、直接めざましい変化を確認してほしい。

 世界の注目を集めた昨年六月の首脳会談では、米朝関係の正常化や朝鮮半島の完全な非核化など、四項目の合意を発表した。

 残念ながら内容に具体性がなく米朝間で対立が生まれ、その後の高官協議も停滞に陥った。今回は、非核化に向けた具体的な進展や措置に関する合意が必要だ。

 ちょうど平壌で、米朝の実務者協議が行われている。米国は、非核化が実現するまで経済制裁は解除しないと明言しているものの、結果を生むため見返りを用意しているようだ。

 北朝鮮は核、ミサイル開発を継続中だとする専門家の分析が相次いでいる。安易な妥協は禁物だ。

 駆け引きは今後も続くだろうが、交渉が長引くほど、北朝鮮は国際社会からの厳しい経済制裁に苦しむことになる。正恩氏は、このことを忘れてはならない。

 

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