【首都スポ】<大学スポーツ紙1面ヒロイン> 明大・劉、青学・宇治川2019年3月5日 紙面から 首都スポ恒例の大学スポーツ紙競演企画「わがスポーツ紙1面を飾ったヒーロー・ヒロインたち」で、各紙の担当記者のみなさんに記事を書いていただきました。2018年度の第1弾は、青山スポーツが女子バレーボール部を率いた4年生キャプテン、明大スポーツは射撃部史上初の女子団体日本一に貢献した4年生と、それぞれヒロインたちを紹介します。6日付で第2弾(慶應スポーツ&帝京スポーツ)、来週には最終第3弾(スポーツ法政&早稲田スポーツ)を予定しています。 ◇明大スポーツ 劉〓慈(りゅう・げんじ)
1921(大正10)年の射撃部創部以来、初のインカレ(全日本学生選手権)女子団体完全優勝-。その中心にいたのは間違いなく、女子唯一の4年生である劉〓慈(りゅう・げんじ、商4=日大桜丘)だ。団体メンバーとして出場したSBR(スモールボアライフル)三姿勢では全選手中最高の1148点。「有終の美を飾れた試合だと思う」。胴上げでは7年間の射撃人生を締めくくるにふさわしい笑顔が輝いた。 射撃との出会いは偶然だ。第一志望に不合格で進学した日大桜丘高。たまたま行った射撃部の体験で運よく10点を当て、入部を決意した。「結果がはっきり数字に出てくるって面白い」。それからは競技にのめり込んだ。誰よりもストイックに。練習では誰でも関係なくアドバイスを求める。家でも有名選手の動画を、その人になり切るつもりで何度も見返した。「射撃は自分の成長が目に見える。だから努力し続けられる」。“努力する才能”が何よりの武器。結果が出るのはもはや必然だった。 うまくいかない日もあった。高校で最初の関東大会では下から2番目の順位に終わった。団体優勝を果たした2年次のインカレ。思うような結果が出せず、歓喜に沸くチームの中、悔しさをかみしめた。それでも腐らず、一歩ずつ前進。「努力した分だけ結果は出る」と信じて、銃を構え続けた。好きな曲はテイラー・スウィフトの『Mean』。多くの挫折を経て成功を収めた歌手に自分の姿を重ね、苦しい時も気持ちを奮い立たせた。 胴上げの瞬間を収めた写真を見た。そこには劉の笑顔はもちろん、部員全員の笑顔があった。「本当にみんなも優勝を喜んでくれたのかな」。個人競技である射撃。それでもその努力は周囲に伝わっていた。「かっこよくて、憧れ」と後輩たち。明大を創部初の快挙に導いたヒロインの背中は、次世代に受け継がれていく。【楠大輝】 ※〓は、火へんに玄 ◆筆者のひと言◆▽楠大輝(2年・政治経済学部)「明治大学射撃部は大学射撃界で最古の歴史を誇ります。その伝統に今年度、新たな1ページを刻みました。記者として、その場に立ち会えたことを非常にうれしく思います。最後になりますが、何度も何度も取材を受けてくださった劉さん、多大なるご協力をいただいた射撃部の皆さま、本当にありがとうございました!」 ◇青山スポーツ 宇治川景
愚直に努力する、真面目で責任感のあるキャプテン・宇治川景(ひかり、総4・都立駒場)。チームの大黒柱は、深い悩みを抱えていた。発端は、関東大学秋季リーグ戦の後半戦。一つのミスから崩れる場面が増え、青学大はまさかの3連敗を喫する。2018年度の目標は春季・秋季リーグ戦、東日本大学選手権、全日本大学選手権の4冠。ところが、春季リーグ戦は4位、東日本は準優勝に終わり、結局、秋季リーグ戦も4位と沈んだ。 勝てない原因は、プレーの原動力である「気持ち」の弱さ。そこで秋季リーグ戦終了後、宇治川は皆を集め、互いの意見をぶつけ合った。仲間から「主将としてしっかりしてほしい」という厳しい声も上がった。主将でエース。背負うものの大きさを突き付けられたなか、「しっかりやろうと思えた。勝ちたいと思える集団にできて良かった」と手応えをつかみ、連覇が懸かった全日本大学選手権に挑んだ。 青学大は初戦から攻めの姿勢を貫き、決勝まで勝ち上がってきた。相手は昨年度と同じ筑波大。セットカウント0-2と青学大の窮地で迎えた第3セット、「ここからやってくれるだろうなと思っていた。本当に信じていた」とベンチで見ていた宇治川主将の強い思いが全員に作用した。 フェイントではなく、スパイクで決める。サーブを“入れる”のではなく、サーブで“決める”。次々と選手たちが強気のプレーへと変わっていく。これは、1年間磨き上げてきた、勝ちたいという強い気持ちを体現できた瞬間であった。このセットを気迫で奪取する。しかし、最後は筑波大に圧倒され、第4セットを落とし敗戦。東日本に続き、準優勝で大会を終えた。 4年生はこれで引退。試合後、宇治川主将は「みんなの思いを背負って戦ってくれた。本当にありがとう」と仲間をねぎらった。一点の曇りもない、晴れやかな表情の選手たち。最後まで強い気持ちを貫いた彼女たちの勇姿は決して忘れない。 (猪又啓太郎) ◆筆者のひと言◆▽猪又啓太郎(3年・理工学部)「青学大は陸上競技部長距離ブロックだけが強豪ではありません。バレーボール部をはじめ多くの部会と選手が国内はもちろん、世界でも活躍しています。有名無名にかかわらず、目標に向けて必死に努力する選手たちを、私たちが作るスポーツ新聞を通してより多くの方に知っていただけるように日々精進しております」 ※署名は大学スポーツ各紙と同じスタイル ◇ 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。
|