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【社説】

シナイに自衛官 安保法の実績が狙いか

 政府が自衛官をエジプト・シナイ半島の多国籍軍・監視団に派遣する方針だという。安全保障関連法の初適用だが、切迫性よりも、違憲の疑いが指摘される同法の既成事実化が狙いではないのか。

 派遣される要員は陸上自衛隊の佐官二人。シナイ半島でイスラエル、エジプト両軍の停戦監視活動を行う「多国籍軍・監視団」(MFO)の司令部要員として両国とMFOとの連絡、仲介を担う。

 菅義偉官房長官が二月二十八日、派遣方針を正式に発表した。防衛省が現地情勢を調査し、当事者間の停戦合意など国連平和維持活動(PKO)参加五原則を満たすと判断すれば、政府は派遣の実施計画を閣議決定する。

 派遣の根拠は、安倍政権が二〇一五年に成立を強行した安保法で新設された「国際連携平和安全活動」である。国連以外でも国際機関の要請があれば自衛隊を派遣できるよう、旧PKO協力法を改正したもので、シナイ半島に派遣されれば、同活動の初適用になる。

 シナイ半島は情勢が比較的安定しているとされる。PKOの危険度が近年高まり、自衛隊の部隊派遣が困難となる中、MFOへの要員派遣は国際貢献の姿勢を示すには妥当との判断もあるのだろう。

 国際平和に貢献する必要性は認める。しかし、MFOは国連が統括しない米軍を中心とする軍事的活動である。参加打診は以前からあったとされるが、なぜ今、という疑問は拭い去れない。

 当面は要員派遣にとどまるにしても、政府は将来の部隊派遣を視野に入れているのではないか。その際、自衛隊員は国連が統括しない、より危険な活動に従事させられることになりかねない。

 歴代内閣が憲法違反としてきた「集団的自衛権の行使」を一転、できるようにした安保法は、違憲の疑いがいまだ払いきれず、違憲訴訟も各地で起きている。

 にもかかわらず安倍内閣は、自衛隊が平時から米軍艦艇などを守る「武器等防護」を一八年に十六件実施するなど安保法に基づく自衛隊活動を積み重ねてきた。MFOへの要員派遣にも、安保法の適用事例を拡大し、既成事実化する狙いがあるのではないか。

 二十九日に三年を迎える安保法の施行後、安倍内閣は「防衛計画の大綱」を改定して事実上の空母保有を認めるなど平和憲法の「専守防衛」に反する動きが続く。

 MFOへの要員派遣もその一環だとしたら見過ごせない。国会での徹底した議論が必要だ。

 

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