◆ ただの主婦からフリーライターへの転身で得たもの


  

自ら起業して会社をつくったり、フリーランスとして会社に雇われずに働くこと。かつてそれらは私にとって「まったく関係のない話」であり、「選れし人だけができること」でした。ビジネスや経営といった世界からは縁遠く、何の取り柄もない主婦だった私がなぜフリーライターに転身し、それによって何を得たのか。今回はそれについてお話したいと思います。

・「挑戦したい」小さな芽を摘みたくなかった

 

フリーライターとして活動し始める前の私は、2人の子どもを保育園に預けながら事務員として働く主婦であり、母親でした。多くの働くママ達同様に、日々の家事・育児・仕事にいっぱいいっぱいになりながら、毎日を走り抜けていたのです。

 

会社でのゴタゴタ、常に時間に追われ慌ただしい毎日、思い通りにならない子どもの体調や機嫌……出口の見えないトンネルの中をただただ突っ走っているようで、私はすっかり疲弊していました。

 

そのうえ、小学校へ上がったら今度は「小一の壁」なんてものが待ち受けているという。これはとても耐えられそうもない、でも働き続けなければいけない。じゃあどうしたらいいの?

 

思えばこの自分への問いかけが、フリーランスへ向けて踏み出した初めの一歩でした。

 

今でこそフリーライターなんて名乗っている私ですが、実はこれまでライター業はおろか、文章に触れる仕事に携わったことすらありませんでした。経験もなければ、もちろん業界へのコネもなし。今思えば、そんな状態からよくスタートを切ったものですよね。

 

それでもチャレンジしようと思ったのは、文章を書くのが好きだったし、少しでも子どもと穏やかに過ごせる時間を増やしたかったから。そして何より一番の原動力となったのが、「後悔したくない」という気持ちだったのです。

 

やってみたい、挑戦してみたい――そんなふうに芽生えた小さな芽を、「どうせ無理だから」と自ら摘んでしまうのは、あまりにかわいそうだと思いました。そしてそれはきっと、何年経っても後悔として自分の中に残るだろう、と。

 

もちろん、不安がなかったわけではありません。でも失敗したところで、命まで取られるわけじゃない。いよいよダメになったら、また時給で働くパートに戻れば良いだけだし。そう考え方を改めてからは、もう迷いはありませんでした。

・フリーランスとして働く、メリットとデメリット

 

フリーライターとして活動するようになると、予想していた通りメリットもデメリットも一気に押し寄せてきます。

 

メリットは、時間や休みの融通がきくようになった点。子どもが熱を出しても「すみません、休みます」と胃をキリキリさせながら会社に謝る必要がなくなったので、気持ちが安定して穏やかに過ごせるようになりました。(もちろん、それを理由に締切に間に合わないなんてことはできないので、自分の中でのスケジューリングはしっかりやる必要がありますが)

 

一方デメリットは、金銭的に不安定になった点です。会社を辞めれば毎月一定のお給料が振り込まれることはありませんし、健康保険料や年金の半分を払ってもらうこともできません。ビジネスが成功すれば一攫千金も夢ではない一方、仕事がなければ収入はゼロです。

 

私にとってはメリットの方が大きいですが、それでもときどき、「定期的にお給料が振り込まれれば安心なのに」と思うことがあります。

 

起業・フリーランスとしての働き方にも会社員としての働き方にも、それぞれメリットがあり、良いとこ取りはできません。それでも自分にとって何が最も重要なのかを明確にしておけば、ブレることはないと思います。

・両立できる働き方を選ぶ

 

未経験からの挑戦は、正直不安ばかりでした。でもその先に得られたものは、ずっと続けていきたいと思える仕事、子ども達と笑顔で過ごす時間、状況に応じて柔軟に対応できる働き方、そして今まで知らなかった広い世界……思っていた以上にたくさんの収穫がありました。

 

会社に勤めるだけが、働く道ではありません。好きな仕事でキャリアアップを目指すことと、いつか必ず終わりのくる子どもとの時間を大切にすること、これらはちゃんと両立できるのだと、フリーライターになって私は初めて知りました。

 

女性が働きやすい社会なんて叫ばれて久しいですが、なかなか実感できないのが現状です。その点、仕事の内容や方向性、受注量などをすべて自分の裁量で決められる起業やフリーランスなどの働き方は、働くママの選択肢の一つとして十分“アリ”だと言えるのではないでしょうか。

 

・プロフィール

 

七尾なお

https://nanaonao.com/

 

生活コラムから経済誌まで、ウェブや雑誌を問わずさまざまな媒体で執筆をするフリーライター。取材やインタビューを通して、人やモノの魅力を知ることが大好き。

 

今後は、より地域に根ざした「文章の何でも屋さん」としての活動にも力を入れていきたいと考えている。