精神科女医　奥田弘美のメンタルヘルスとボディケアのためのハッピー・コーチング・カウンセリング

　ストレス社会の現在、うつ病が増えていることは、周知の事実ですよね。

なんと１５人に１人が、現在、一生の間に、うつ病になるといわれています。

　私の勤務しているクリニックにも、連日、うつ病の患者さんが

やってこられます。

　日本橋という場所柄、ＯＬさんや、ビジネスマンの方が多いのですが、

その人たちに、ほぼ共通していることがあります。

　それは、ほとんどの方が、うつ病を発症する前に、

過労状態であった、かつ、食事がいいかげんになっていたということ。

　うつ病というと、悲しいことや辛いことなど、

大きな精神的ショックがあっておこるという

イメージがあると思いますが、実は、そういう人ばかりではありません。

　むしろ、最近増えているなあと感じるのが、過労による、うつ病です。

　職場の人間関係や仕事には、

そんなに大きなダメージを被るほどのストレスやトラブルがない。

上司や同僚とも、そこそこやっているし、

仕事でも大きな失敗などしでかしてはいない。

　ですが、やたらめったら忙しく、

毎日終電近くまで残業し、休日も出勤する週が増え、

当然のごとく、忙しすぎて食事の時間もままならない。

朝は、ほとんど食べず、昼と夕は、適当に、

ハンバーガーや、コンビニおにぎり、立ち食いソバ、サンドウィッチ、

ドーナッツ、菓子パン、マフィンなど、

手軽な炭水化物メインの軽食で

すませてしまう。

夜遅く帰って、朝早く行かなければならないので、

睡眠時間も、不足気味・・。

　そんな肉体的な過労と、栄養不足状態が１ヶ月以上続いていた・・。

　初診でこられた、うつ病患者さんのお話を訊いていると、

そんなエピソードをもつ方が、どんどん増えてきています。

　で、今まで、当たり前にこなしていた仕事に対して、

すごく疲れるようになった、やる気が起きなくなった、

とか、集中力が下がってミスするようになった、とか、

同僚やクライアントと話をするのが、とても億劫で、辛くなったと

そんな抑うつ症状が現れているのです。

ひどいときは、朝、会社へ行こうとすると、頭痛やめまい、嘔吐がおこる

といった、体の拒絶反応が出るまでになる人もいます。

　これらは、すべて、人間として最低限必要な

休養と、栄養を、ないがしろにして働き続けた結果、

体と心のエネルギーが底をついてしまっている状態だといえます。

　私の勤める東京メディカルケアセンターでは、

３０項目からなる血液データをとり、分子栄養学的正常値を基準に

血液データから、栄養不足状態を判定するのですが、

このような患者さんからは、ほぼ例外なく

タンパク質不足、各種ビタミン、ミネラル不足といった

解析データが出てきます。

　つまり、体の栄養不足が起きるほど、過労してしまった結果、

頭も栄養不足、過労状態になってしまって、

朗らかな気持ちや、やる気、集中力、行動力といった

思考ができなくなり、うつ病の症状がおこってしまったと考えられます。

当たり前ですよね、脳も、髪の毛や皮膚、筋肉といった

体の一部ですから。

栄養が足らなければ、皮膚が荒れて、髪の毛がぱさつき、

筋肉がやせ衰えていくように、

脳にも何らかの変化がおこっても不思議ではありません。

　しかし、怖いことに、現代人は、栄養不足であっても、

カロリー不足ではない。

ファーストフードや甘い飲み物、アルコール類は、

しっかりカロリーだけはあるんです。だから、体は痩せない。

そのため、いい加減な食事をしていても、

本人は栄養不足だって気がつかないのです。

むしろ女性なんかは、ちょっとぐらい過労で痩せても、

自然にダイエットができて、ラッキー！ぐらいに感じて、

逆に喜んでしまったりしている人もいるくらいです。

　ホワイトカラーエグゼンプション制度の導入を求めている経営者もいますが、

そういった制度が導入されると、もっともっと過労状態に陥る人が増え、

もっともっとうつ病が増えるでしょうねえ・・。

リストラが当たり前となり、終身雇用制が崩れ、

ただでさえ実力成果主義の世の中になってきています。

そんな中、オンとオフの境目がなくなるホワイトカラーエグゼンプション制度が

導入されると、皆が、どんどん無理して仕事をして、

より多くの成果をあげようとする競争が激化するでしょう。

そうなると、まさに「過労競争」というべき状況を生み出しかねなません。

　これからは、心と体の正しい自衛手段を持って、

賢く、自分で自分のメンタルヘルスケア、ボディヘルスケアをしていかないと、

生き残れない時代になっていく・・・・。

うつ病の新患を診察するたびに、

そんなことを、痛感している私です。

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