破壊神のフラグ破壊 作:sognathus
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こんなもので自分達や自分たちの世界が救われるのなら安いものです。
ビルス「おおっ、これ全部プリンか!」
目の前に並ぶプリンの数に目をキラキラさせながら嬉しそうな声を上げるビルス。
その子供の様な純粋な態度はどう見ても破壊どころかただの神にさえ見えなかった。
まどか(あ、ちょっと可愛いかも)
さやか(プリンが好きな神様ねぇ……ふふ、おもしろっ)
マミ(これ、全部食べるのかしら……一つ欲しいなぁ)
ほむら(本当にこんなのでいいのかしら)
ウイス「私も驚きです。プリン一つでこんなに種類があるなんて」
ビルス「前は一種類しかなかったからな。しかも食べ損ねたし」
ウイス「今度は食べれそうですね」
ビルス「ああ、では早速……」
ウイス「頂きましょうか♪」
ビルス「おい」
ウイス「はい?」
ビルス「何でお前が食べるんだ?」
ウイス「え? まさかビルス様、これ全部お一人で食べるおつもりだったんですか?」
ウイスはビルスの言葉にショックを受け、悲しそうな顔をした。
ビルス「当然だろう。だってお前はあの時一人だけ食べてたんだからな。これは罰だ」
ウイス「そんな! あんな昔の事! それにその事ならさっき散々お付き合いをしてさしあげたではありませんか」
ビルス「あれは、ただの八つ当たりだ。当然だろう?」
ウイス「ええっ、ビルス様ズルい!」
ビルス「煩い。ズルくない。これは僕一人で全部食べるからな?」
ウイス「むむ……」
さやか「な、なぁ、なんか喧嘩し始めたぞあの二人」
まどか「う、うん。プリン取り合ってるね」
マミ「あんなにあるんだから一つくらい分けてあげてもいいのにね」
ほむら「マミ、あなたのその目、明らかにビルスさんの為に向けられてない気がするのだけど?」
そんな風に賑やかな様子を建物の影から窺っている影があった。
杏子「なんだあれ……あれがひょっとして魔獣か? 堂々としてやがるな」
QB「そう。あれだよ」
杏子「なんか魔獣の他にも普通の人間っぽいのがいるけど、あれはどういう事なんだ? 普通にコミュニケーション取ってるように見えるけど」
QB「多分、上手く会話で自分は危険な存在じゃないと安心させてるんじゃないかな」
杏子「ああ、なるほどな。そうやって人目のつかないとこまで連れ込んで……非力な女を狙う辺りも利口だな」
QB「そうだね。最初は殆ど無差別だったけど、今では女性や子供を狙っているのかもね」
杏子「……ますます見過ごす事はできねーな。よしっ、やるか。おいQB、お前はあたしの死角に回り込んで攻撃のタイミングを計ってくれ」
杏子「なるべく無関係な奴らは巻き込みたくないからな……こっちのタイミングと合致した時にしかける」
QB「分った」
ビルス「だから、お前には絶対やらん!」(お、)
ウィス「後生です! 一つだけでいいですから!」(来てますね)
未だにプリンの取り分について揉めていた二人は早速杏子たちの存在に気付いた。
ビルス(このタイミングで来るとは……)イラッ
ウイス(ダメですよ。あくまで原因はインキュベーターなんですからね)
ビルス(分ってる。ふむ……隙を探ってるのか)
ウイス(そのようですね。キュウベぇさんは丁度私達の真上です)
ビルス(取り敢えず鬱陶しいから、あいつもまとめてこの星に居る奴を全部消すぞ)
ウイス(了解です)
喧嘩をしながらビルスはその場にいるキュウベぇだけでなく、同時にその時に地球に存在している全てのインキュベーターをウイスの能力の補助によって知覚した。
ウイス(どうです? ビルス様)
ビルス(ああ、確認した。これで全部か?)
ウイス(この星に居るのはこれで全部ですね)
ビルス(ま、他に残ってるのは奴の事は後で考えるか。よし……)
念話をしながら口喧嘩をしていたビルスが突然黙り込んだ。
突然の沈黙にまどか達も何事かと振り向く。
身を隠して攻撃のタイミングを計っていた杏子たちも同様だった。
杏子(バレたか? いや、そんな様子はなかった)
QB「……?」
ビルス「……」
小さな風の様なものがその場を走り抜けた。
その見えない風はビルスとウイス以外に認識される事もなく瞬く間に地球全体を包み込み……。
QB「!?」パッ
見た目には何も起こっていないので、まどか達や杏子からすれば突然沈黙しただけにしか思えなかったが、その何気ない一瞬でビルスは苦も無くインキュベーターを地球から一人残らず消し去ったのだった。
杏子(……ん? キュウベぇ? おい、どうした?)
キュウベぇの気配が消えた事に即座に気付いた杏子は、何度も彼に呼びかけるが当然ながら返事はなかった。
杏子(なんだ? 何かあったのか? くそっ、どうする? 今ならやれそうな気はするけど……よしっ)
バッ
事態の認識より自身の使命の遂行を優先する事を決定した杏子は、意を決して物陰から飛び出した。
杏子「…………ふっ!」
洗練された動作に無駄は無く、しなやかな筋肉の動きに応えるように投げられた槍は綺麗な軌道でを描きビルスとウイスへと向かって行った。
その時点でただの少女だったまどかとさやかは気付く事もなかった。
その一瞬の攻撃に反応したのはやはりというか、魔法少女として戦いの経験があるマミとほむらだった。
マミは攻撃こそ察知できたものの、見事なまでの杏子の一投を防ぐには間に合わずに、槍が彼女の側を過ぎ去るのを感じるしかなかった。
対してほむらは自身の能力である時間操作をはつどうさせ、槍がビルス達へと届くギリギリのところで槍に力を加えてその軌道を逸らすことに成功した。
だが……。
ビルスは最初から杏子の攻撃を認識しており、別に当たっても死ぬことは無いが、それでもそうなってしまうと格好が付かないので軽く防ぐつもりだった。
ただ問題だったのは、ビルスが警戒していたのはあくまで杏子の攻撃のみで、それ以外に関しては特に注意を払っていなかった事だった。
キンッ
ビルスより前にほむらによって防がれた槍が標的を外れ、ある物へと向かって行った。
パシャッ!
逸れた槍はビルス達を横切り彼の手元にあったプリンに命中したのだった。
全壊こそ免れたが、テーブルに並んでいたプリンの殆どが槍の暴力によってなぎ倒され、貫かれ、無残な姿となった。
あーあー、といった感じです。
次どうしよう……(震え声)
一瞬で退場してしまったQBが羨ましい……。