【日本の解き方】消費増税…安倍首相の“豹変”ある! ラストチャンスは来年4~5月 平成の次の時代を暗い世の中にしないために
安倍晋三首相が2019年10月からの消費税率10%への引き上げについて、予定通りの実施を表明したと報じられた。財政の緊縮路線である消費増税をめぐる動きの一方で、日銀の金融政策はどう動いてきたのか。
日銀は14年4月に5%から8%への引き上げの後、同年10月に追加緩和を行ったが、結果として消費増税の悪影響は回避できなかった。その中で、同年11月に安倍首相は、翌15年10月に予定されていた10%への引き上げを、17年4月に延期。16年6月には19年10月に再延期した。
「三度目の正直」なのか「二度あることは三度ある」のか。今のところ、安倍首相は「三度目の正直」のようだ。
率直にいって、短期的にはマクロ経済に対する効果は財政政策のほうが金融政策より大きい。税率10%への消費増税が行われた場合、全品目を軽減税率としない限り悪影響は残るだろう。恒久的な消費増税は恒常所得を減少させるので、長期にわたって消費にマイナス効果になり、一時的な景気対策のプラス効果も及ばない。これに対し、金融緩和の効果は短期的には大きくないからだ。
ただ、増税は法律にも書かれていることで、安倍首相のスタンスが特にこれまでと変わっているわけではない。増税に対応した予算措置についても進めていくだろう。
そのうえで、スケジュール的には増税見送りのラストチャンスとなるのは来年度予算成立後の4月から5月だ。その時点で何が起きているかは分からないが、政治的には「リーマン・ショック級の事態に備える」と表明すればいい。法律を変える必要があるので、自民党内を抑えられるかは問題だが、参院選で信を問う形もありうる。
それともこのまま増税になるのか。安倍首相は平成の後の新しい時代を増税で暗い世の中にしたいのだろうか。
日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁にとって、消費増税を2度成功させるとなれば、財務省OBとして合格かもしれない。だが、日銀総裁としてはデフレ脱却に失敗したという汚名を免れることはできない。黒田総裁は財務省の「遺伝子」が強く影響しているのか、「人は増税も予測して行動するので景気には影響がない」という思想に固執しているのが気がかりだ。
安倍首相にとって、消費増税はどう考えても政治家として合理的ではない。来年4月以降に君子豹変(ひょうへん)もあり得ると、筆者は思っている。
国際通貨基金(IMF)も、日本の純債務額はほとんどないと言い出しており、財務省の消費増税の根拠が失われている。財務省は「財政危機」と言えなくなり、年金など社会保障のための消費増税と言っているが、社会保障財源としての消費税というのは、かつて財務省も主張していたように暴論だ。
社会保障財源は保険料と累進所得税が適切だ。そこからの帰結は、マイナンバーや歳入庁設置などによる所得税と社会保険料の徴収漏れの防止や、金融所得の総合課税化などが最適な対策になる。決して消費増税ではない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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