ブラックホールはどうやってできるのだろうか?


ブラックホールは莫大な重力のために光さえ外に出てこれない天体である。普通、星が球状の姿を保っているのは、重力と圧力が釣り合っているためである。 しかし非常に強い重力を及ぼす星では、力の釣り合いを保てずに重力崩壊を起こして収縮を続け、最後には一点に崩壊してしまう。これがブラックホールが創 られる大まかなシナリオである。
 太陽質量ぐらいのブラックホールの"平均密度"は、1立方cmに200億トンという非常な高密度である。もし地球をブラックホールにしようとすれば、地 球の半径を4.44mm以下にまで縮めなければならない。とても人類の能力ではできそうにない。しかし自然界には、それを簡単にやってのけるところがあ る。星の進化である。
 星はそのエネルギーを核融合によって作りだし、光り輝いている。星は一生の殆どの過程で、水素を燃焼してヘリウムを合成している。やがて多くの星は赤 色巨星へと進化し、その中心核にあるヘリウムが燃え始め、最終的に最も安定な鉄の中心核が作られる。その後、星を支えるエネルギーを作ることができなく なった星は収縮を始め、爆発的に収縮して超新星となる。
 太陽程度の質量の軽い星であれば、鉄の中心核ができる段階まで進化することはなく、途中で白色矮星となって冷えていく。しかし、太陽の3倍以上の質量 を持った重い星では、超新星爆発が起きると言われている。太陽の8倍以下の場合には、爆発によって全て吹き飛んでしまう。8~30倍の場合には中性子星 が後に残る。それ以上重い場合、中心核は限りなく重力崩壊を続け、ブラックホールが形成される。ブラックホールが単独で存在するときは、観測することが 難しい。しかし連星の一方が崩壊してブラックホールになっている場合には、観測が可能である。


 近接連星系SS433
SS433は約13日の軌道周期を持つ連星で、明るく輝く高温度星と、
ブラックホールと思われる崩壊した天体を含んでいる。
降着円盤に流れ込んだガ スはX線を出し、
物質のジェット流はブラックホールの回転軸に沿って噴出される。
ブラックホールの回転軸は、軌道面に対して傾いており、
約163日の周期ですりこ木運動をしていると推測されている。


近接連星系におけるブラックホールの生成 


 近接連星系でブラックホールが生成される過程を示した。伴星の質量は太陽質量の約8倍、主星の質量は約30倍としてシミュレーションしてみた。
 1
太陽のように輝く星、恒星が複数個、互いの重力によって引き合い、
共通な重心の周りを回るものを「連星系」と呼ぶ。
恒星のうちの半分以上が連星系であるらしい。
太陽のような単独星はむしろ少ない。
尚一般に質量の大きい方を主星、小さい方を伴星と呼ぶ。


 2
恒星の進化はその質量で決まってしまう。
大質量星ほど明るく輝き、その分早く燃料を消費してしまうので、
進化が早く。寿命も短い。
1000万年ほどたつと、質量の大きい主星が先に赤色巨星へ進化していく。
その膨張した大気は伴星の引力圏にまで流れ込む。

 
 3
1200万年ぐらいが経過すると、主星はついに超新星爆発を起こす。
爆発した星の外装部分のガスは、
毎秒1万kmにも及ぶ速度で星間空間へ広がってい く。
伴星も爆発の影響を受けるため、連星系自体が崩壊する可能性もある。

 
 4
超新星爆発によって、星の内部は中心に向かって圧縮され、
高密度天体(中性子星やブラックホール)を形成する。
それが太陽質量の30倍以上の場合、ブ ラックホールになると考えられている。

 5~6


5000万年以上たつと、質量の小さい伴星の進化も進み、赤色巨星の段階に達する。
その膨張した大気がブラックホールの引力圏にまで広がる。
ブラック ホールの周囲には、流入してきたガスによって降着円盤が形成される。
伴星から流れ込むガスは回転エネルギーを持っているので、直ちにブラックホールに落 下するわけではない。
降着円盤の中でガス同士が摩擦を繰り返すことで、回転エネルギーを少しずつ失い、内側に落ち込んでいく。
摩擦熱によってガスは高温になり、X線やガンマ線が放射される。メカニズムはまだよくわかっていないが、
中心部付近からは円盤に垂直な方向に上下にプラズマのジェットが放出される。

illust by KiwameteHaraKiriri