ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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今日は三月三日、ひな祭りです。
ありんすちゃんはアウラとマーレに誘われてナザリック地下大墳墓 第六階層にやって来ています。
「ほら、すごいでしょ? やまいこ様のコレクションなんだよ?」
アウラは五段飾りのひな人形の前で得意そうに胸をそらします。
「やまいこ様は、あの……ぶくぶく茶釜様と餡ころもっちもち様と女子会を、あの、よく開いていらっしゃっていたんです」
「…………ふーん」
ありんすちゃんは気のない返事をしていましたが、視線は可愛らしいひな人形に釘付けでした。
8センチ程の小ぶりな人形はネコやイヌなどの動物を模していて、どれも綺麗な装束をまとっています。なかでも男雛女雛は実に素晴らしく、ありんすちゃんは思わずため息をついてしまいました。
「ね、あたし達のひな人形、すっごいでしょ?」
アウラが更に胸をそらします。
「……べ……別にうらまやしくないでありんちゅ。……あ・り・ん・ちゅ!」
ありんすちゃんはそう言いきりましたが、相変わらず視線はひな人形に釘付けのままです。
「……ふーん」
アウラはありんすちゃんの視線を遮るようにひな人形の前に立ちました。
「……ありんちゅちゃもひな人形、もってるでありんちゅ。ペロロンチーノしゃまから貰ったでありんちゅ。ほんちょでありんちゅ」
「……ふーん」
アウラはジト目でありんすちゃんを見つめます。
「……じゃあさ、ありんすちゃんのひな人形をあたし達に見せてくんない?」
「わかったでありんちゅ」
ありんすちゃんは真っ赤な顔で出ていこうとします。
「……その前にポケットからあたし達の女雛様、返してほしいんだけど?」
ありんすちゃんはしらをきろうと頑張りましたが、双子にひな人形を取り返されてしまいました。
※ ※ ※
「……ありんちゅちゃのひな人形、探すでありんちゅ」
第二階層に戻ったありんすちゃんは早速シモベを集めます。
「……あの……ありんすちゃん様。恐れながらありんすちゃん様はひな人形をお持ちではありませんが……」
ヴァンパイア・プライドはおずおずと意見します。
「……ちょうでありんちゅ。今から第六階層へ行ってひな人形もってくるでありんちゅ。あれはほんとはありんちゅちゃのひな人形でありんちゅ」
ありんすちゃんは鼻からフンスと息をはきながらシモベに命じます。しかし誰一人として動こうとしません。
「ありんすちゃん様。この屍蝋玄室の階段に赤い絨毯を敷いてひな人形みたいに人形を飾ってはいかがでしょう?」
別のヴァンパイア・プライドがありんすちゃんに提案します。ありんすちゃんはニッコリすると飾る人形を探し始めました。
※ ※ ※
最上段の内裏びなはすぐに決まりました。男雛は以前にリ・エスティーゼ王国に行った時に手に入れた超合金アインズ様人形です。女雛にはいつも寝る時に抱いているウサギのぬいぐるみにしました。
問題はその他の三人官女や五人囃子といったひな人形です。ありんすちゃんは他の人形もぬいぐるみもありませんでした。
「……困ったでありんちゅ」
そこに先程のヴァンパイア・プライドが明るい顔でやって来ました。見ると人形の形をしたクッキーを手にしています。
「ありんすちゃん様。このジンジャーブレッドを人形の代わりにしてはいかがでしょう? カラフルな紙で衣装を作ればだいぶ見映えがよくなると思います」
ありんすちゃんは手を叩いて喜びました。
※ ※ ※
そしていよいよアウラとマーレにありんすちゃんのひな人形をお披露目する時がやってきました。
ありんすちゃんは得意そうに屍蝋玄室の扉を開きます。
ありんすちゃんのひな人形を目にしたアウラとマーレは言葉を失いました。
※ ※ ※
「これはこれは我が階層守護者たるありんすちゃん様。この度は我が眷属の為にご馳走をご用意頂きまして誠に恐悦至極にございます──」
恭しくお辞儀をする恐怖公の後ろにはありんすちゃんのひな人形のジンジャーブレッドを貪る眷属の大群が──
仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。
──あれ?