涙が頬を伝うことはなかった。日本ハムのドラフト1位吉田輝星投手(18)=金足農=が2日、同校の卒業式に出席。この3年間で、日本一有名な農業高校生となった右腕は感慨に浸ることもなく「雑草魂」を胸にプロの道を進む。
「ここ、泣くところだろうなと思うことはあった。けど、堪えるまでもいっていない」。涙より笑顔。輝星らしい別れの告げ方だった。
地元出身者ばかりの野球部で自らを雑草軍団と称して鼓舞してきた。3年間の厳しい練習で培ったのは踏まれても踏まれても立ち上がる強さ。プロに入ってもそれは同じだ。「心の中で雑草魂を持って、どれだけ踏まれてもという気持ちを忘れずやりたい」。学ラン姿もこれで見納め。第2ボタンの行方は「決まっていないです」とクールに答えたが、学ランを渡す相手は決まっていた。新2年の加藤響投手。「面白いピッチャーだなと思って。球速も1年生の自分より少し落ちるくらい。自分以上になってほしい」。後継者に粋な計らいだった。
滞在中は野球部で焼き肉に出掛けるなど充実の時間を過ごした。「みんな初登板見に来てくれると言われたので、早く1軍上がりたい」。決意新たにルーキーイヤーを駆け抜ける。 (土屋善文)