ペルチェで発電




    

この実験は昔、ロシアにランプの熱を利用した小型の発電機があったというWeb記事を目にするところから始まる。
そのランプは真空管ラジオを鳴らす能力があり、出力は2W、A電源90V(12mA)、B電源1.5V(125 or 250mA)を同時発電できる優れもの。
上部は発電素子(熱電対?)と大きな冷却フィン、下部は灯油ランプという構造、全高約60cm、重量約10kg程(サイズはWebより抜粋)。




  

これは近年に作られた(現在は絶版)ロウソク熱による発電ラジオ。 
ロウソク1本の熱で最大1.3V程を発電し、下部に内蔵されたラジオへ電気を送っている。 
素子を直接火で炙って発電するタイプなのでロシアの発電ランプと違い、大きな放熱部分が無くスッキリしている。
このラジオについては詳しくは




  

そして現在のペルチェ素子。
沢山の半導体が板に挟まれてびっしりと並んでおり、薄くて使いやすい。
通常はパソコンのCPUを冷却する為のパーツであり、電圧を加えることにより片面が冷え、反対の面が発熱するという素子。




  
             日本電子冷熱製                    小松電子製

  
                 不明                 Westinghouse Electric Co
昔のペルチェ素子、30~40年くらい前のパーツ。 製品ではなく試作品。 (電池はサイズの比較)
現在のものと比べると1素子がとても大きく、また20~30Aという大電流を使うわりには効率があまり良くなかったらしい。
20Aの電源なんて持ってないので、手持ちの5A電源で試したが 、両面触ってなんとなく温度差があるかな?程度である。






そしてこれが今回の実験にて使用するペルチェ素子、秋葉原の千石電商にて購入。 規格は15Vで温度は90℃くらいまで。
面積またはワット数の違う商品が数種あるが、まずは40mm四方で最もW数の小さい(電流3A、最大吸熱28W)ものを選択。
実際、3Aも流すと片面は熱くて触れず、片面は冷たくて触れずという程冷える。




  

表面はセラミックなので、ロウソクの熱が均一に伝導するよう、放熱グリスを塗った銅版で両面を挟む。
これで実験パーツ完成。




  

テストベンチとして既製品のキャンドルラジオをそのまま使うことにする。
それまで載っていたオリジナルの発電パーツを外し、穴を開けた缶の蓋を取り付け、その上にペルチェを載せる。




  

上部にパソコン用のヒートシンクを乗せて完成。 有りものだけで作っているから変な形ですな(笑)




  

点火すると意外にオリジナルのろうそくラジオの素子より発電能力が高く、無負荷で2.8V 60mAを発電する。






炎は素子から3~4cm程離しており、オリジナルの直接炙るタイプと比べてかなりの低温で発電している。
加熱側の温度は非接触測定で推定70~80℃、放熱側は23~30℃程(室温15度)。
ただこの素子は高温になるほど発電するのではなく、両面の温度差が大きいほど発電するタイプなので、
加熱よりも放熱がカギとなると思われる。






28W級でテストの様子↑ 撮影時間短縮の為、予備加熱してあります



                       ペルチェで発電 第二弾




今回も千石電商でペルチェを購入、ただし今度は前回より入力が4倍大きい12A(吸熱113W)の物を使用。
吸熱効率の違いで発電効率が変わるのかを実験する。




  

2号機は温度センサーを取り付けられるように工夫してみた。
ペルチェの加熱側(下段)と放熱側(上段)の温度と、電圧を同時に測れるテスターも作ってみました。
温度計は汎用品、電圧計は秋月電子で売っているバッテリーチェッカーを流用。




  

接合面には放熱グリスを塗る。 これがないと熱伝導が良くならない。






完成!
・・・・・・段々とオカシくなるなこれは(笑)






↑温度と電圧の関係の様子(113W)

実験の結果判ったことは、

1、電圧を得る為には高温度であるよりも加熱側、放熱側の温度差が重要。 
  放熱器の容量を考慮すると外気温度は低い程効率が良い。
  また、加熱側の温度を上げすぎると放熱器が飽和してしまい、上下の温度差がなくなって電圧は下がり始める。

2、計測という意味では実験を空冷で行うと外気温や素子の温度に大きく左右されるので結果が安定しない。
  正しい比例関係を知るには放熱側に安定した温度管理(水冷)が必要と思われる。
  また、ロウソクという熱源も温度が一定しない為、加熱側にも電熱等での安定した熱源が必要である。

3、ペルチェ素子は吸熱W数の低い物ほど発電能力が高く、逆にW数が高いと発電し難い。
  結果として28W物は最大で3.3Vを発電し、113W物は1.2Vしか発電しませんでした。
  ↓下記動画は吸熱W数の低い(28W)ペルチェを使い、加熱側が100℃を超えるまでの記録です。



    撮影時間短縮の為、ペルチェは予備加熱してあります(合計3分21秒)
   なお、室温は14度、ラジオは消した状態(無負荷)で撮りました

雑な実験で恥ずかしいですが、28W級では 大まかに温度差30℃で1.5V~、 40℃で2V~、 50℃で2.5V~、 60℃で3V~程の発電を確認しました。
安易な方法では毎回全く同じという観測条件を揃えることが出来ない為、計測という意味では温度関係について安定した結果は出せませんでしたが、吸熱W数の違うタイプの素子は発電能力も違うことを発見できたことは収穫でした。




独り言

ロシアの熱発電ランプは(電流は大したことないとしても)90Vを発電できることと比べると、実験のペルチェ素子ではかなり小電力に思えます。
ロシアンランプについてWebでは加熱側570℃、放熱側が90℃とあるので、その温度差なんと480℃!。
直感的な話ですがもしかするとロシアのランプはガンガン焚いてもガンガン冷却できるという極寒の中でのみ性能を発揮する物なのかもしれません。


オマケ  とりあえず試してみる

  

大型ヒートシンクは良く冷えますが重くてかさ張り過ぎ、
水鍋もよく冷えるがこぼれると面倒なので使い勝手が良くない (^^)