玉城デニー知事が安倍晋三首相と会談し、辺野古新基地建設に伴う埋め立てに7割超が「反対」した県民投票の結果を伝えた。安倍首相は「(米軍普天間飛行場の)危険な状況を置き去りにするわけにはいかない」と述べ、沖縄の民意を拒絶した。
首相の言葉は明らかに矛盾している。普天間の危険性除去は喫緊の課題だ。2013年に政府が発表した現行計画では、普天間飛行場の返還期日は「22年度以降」となっている。
しかし、政府が目指す普天間の代替施設としての辺野古新基地の工事は始まったばかりだ。しかも埋め立て海域には、首相自ら改良工事が必要と認めた、「マヨネーズ状」と称される軟弱地盤の問題がある。首相は国会で「今後の工期や費用について確たることを申し上げることは困難」と答弁し、明言できない。工期が長期化する可能性は極めて大きい。
普天間の危険を置き去りにしないために政府は、今すぐ米国と交渉し、普天間の運用停止に取り組むべきだ。辺野古新基地建設は直ちにやめることだ。
2月24日投開票の県民投票は辺野古の埋め立てに「反対」が72・15%、「賛成」19・1%、「どちらでもない」8・75%だった。玉城知事は県民投票条例に基づき、首相と在日米大使館に投票結果を手渡した。
安倍首相との面談で玉城知事は2点を求めた。反対が7割超となった県民投票の民意を尊重し、埋め立て工事を中止すること、沖縄の負担軽減を決めた日米によるSACOに沖縄を加えた新しい三者協議の場をつくることだ。
いずれも正当な要求だ。辺野古の埋め立てという、ただ一つの賛否が問われた県民投票で、反対が7割超となった。政府は辺野古新基地を「唯一の選択肢」と言い続けてきたが、さまざまな利害調整を経て課題解決を図る政治の問題で「唯一」はあり得ない。
在日米軍専用施設の7割を負わされる沖縄が、負担軽減を話し合う枠組みに入っていない問題は繰り返し指摘されてきた。
SACOで合意された基地返還のうち、普天間をはじめとしてキャンプ・キンザー(牧港補給地区)、那覇軍港など主だった基地は返還が進んでいない。いずれも沖縄の要望を聞くことなく県内移設が条件とされたからだ。
安倍首相は玉城知事との面談で県民投票の結果については「真摯(しんし)に受け止める」としたものの、「日米合意から20年以上がたつ中において、もはやこれ以上の先送りはできないと考えている」と民意を突っぱねた。玉城知事の要望2点に対する言及はなかった。
安倍首相が置き去りにしているのは、沖縄の民意だ。黙殺することは断じて許されない。沖縄の声を受け止め行動するのは政府の務めだ。