国境を越えて稼ぐ巨大IT企業への課税強化は世界共通の課題。だが国ごとの対応では効果が限定されてしまうのが現実だ。税の不公平は社会不安に直結するだけに国際的な枠組み構築が急務だ。
一月、米グーグルの日本法人が東京国税局から約三十五億円の申告漏れを指摘された。同社はすでに修正申告したという。
ただこれが課税強化につながるかは不透明と言わざるを得ない。
国際展開する企業への課税は、原則として、進出した国で支店や工場など、恒久的な施設を持って利益を上げた場合に対象となる。
IT企業は、進出国に拠点がなくてもビジネスができる。仮に日本市場で稼いでいても、国と国の間を自由に行き交う取引に対して、国内の税法を適用するには困難が伴う。
さらに、複雑な手法で法人税率の低い国に利益を移すなどして節税を行っているケースが多い。現地法人が、一般の上場企業と違い有価証券報告書など決算内容の開示義務を負っていない場合もある。国別の売上高の把握などが難しく、課税を阻む一因にもなっている。
英国は二〇二〇年から売上高に一律2%の法人税を課す制度を独自に導入する。欧州連合(EU)も3%課税する案を検討中だ。しかし、課税強化の対象となるIT大手四社、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コム)を抱える肝心の米国が消極的で、国際的な足並みはそろっていない。
ネット空間には国境がない。IT企業の多くは、社会基盤の維持に向け、特定の国や自治体に税を支払うという意識が薄いのではないだろうか。
だが企業自体も成長過程で、各種行政サービスや道路などを利用してきたはずだ。こうした社会基盤の大半は税金で整備されている。IT企業も当然、社会に育てられたという一面を持っている。
EUの政策執行機関、欧州委員会は、世界展開するIT企業の法人税率は一般企業の平均の半分程度と試算する。きちんと税を払っている人々が「不公平だ」と怒りを感じるのは、むしろ自然だろう。
各国政府はその怒りの意味を理解し、国境を超えたルールづくりのため連帯すべきだ。六月、大阪で開かれる二十カ国・地域(G20)首脳会合は、その意識を共有する格好の場となるはずだ。
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