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【社説】

米朝ハノイ会談 粘り強い非核化交渉を

 非核化に向けた、粘り強い交渉が必要だ。米朝首脳の再会談が、二十七日始まる。十分かつ具体的な進展がないまま米国側が見返りで譲歩すれば、過去にあった失敗の繰り返しになりかねない。

 金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は、二十三日、平壌を専用列車で出発した。会談場のハノイまで四千キロあるが、自身の祖父や父も専用列車で外国訪問をしており、国内に向けた権威付けとみられている。

 一方トランプ米大統領は、非核化の実現後、経済発展を助けると呼びかけている。

 事前の米朝実務者協議で、まだ合意を巡る綱引きが続いているからだ。トランプ氏は「非核化を急がない」とも語っており、首脳会談の行方は予断を許さない。

 思い出されるのは昨年六月のシンガポールでの初会談だ。「完全な非核化」「新たな米朝関係構築」で合意し、期待が膨らんだ。

 その後、核やミサイル実験は中断、緊張が緩和された。ところが、肝心の非核化は、北朝鮮側がまず経済制裁の解除を求めたため、中断したままになっている。

 今回の協議の焦点は、なんと言っても北朝鮮北西部にある核開発の心臓部、寧辺(ニョンビョン)核施設の査察・廃棄が実現するかだ。

 さらに包括的な核開発計画の申告、核拡散防止条約(NPT)への再加盟を含んだ「行程表」も示せなければ、十分とはいえない。

 トランプ氏は、北朝鮮の出方に応じて、人道支援や連絡事務所の相互開設、米朝間での「終戦宣言」を検討しているという。

 また、北朝鮮の金剛山観光や開城工業団地を、国連制裁の特例とすることも念頭にあるようだ。

 二〇二〇年の大統領選での再選に向けトランプ氏は、外交面の実績をアピールしたいのだろう。成果を焦れば、核開発を止められなかった過去の二の舞いになりかねない。慎重な対応を求めたい。

 正恩氏は昨年、米朝交渉の場で「自分の子どもが、核兵器を背負って暮らしていくことは望んでいない」と語ったと伝えられる。

 それほど固い決意があるのなら、実現困難な条件にこだわるべきではない。非核化に踏みだし、本気度を証明すべきだ。

 トランプ氏は、安倍晋三首相との電話会談で、日本人拉致問題の早期解決に向けた協力を約束し、正恩氏に伝えると応じた。

 しかし、日本政府が重視する問題を、人任せにしたままでいいはずはない。安倍首相は自分の手で解決を図ってほしい。

 

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