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【社説】

コンビニ24時間 「いい気分」を続けたい

 「あいててよかった」という経験を誰もがしているはずだ。コンビニの二十四時間営業をめぐり運営企業と一加盟店が対立している。人手不足の中、長時間営業の在り方を考えてみてもいいだろう。

 対立しているのは大阪府東大阪市の加盟店とセブン-イレブン・ジャパンだ。

 この店は人手が足りないため午前一時から同六時に閉店する短縮営業を実施。これに対し、運営企業側は契約条項を根拠に二十四時間営業の再開を求め、応じない場合契約の解除を通告した。

 深刻な人手不足の背景には少子化もある。ただ、深夜勤務が過酷だと敬遠され、時給を高く設定しても店員を集めにくいケースもあるようだ。

 東大阪の店舗は、人員補充が進まない中、過重労働に耐えきれず短縮営業せざるを得なかった実情を主張している。

 運営側からみると、二十四時間営業はいわば常識で、物流網などもそれに合わせて構築している。営業時間を短縮すれば売り上げが減る恐れもある。コンビニは利便性が生命線で営業時間についてはにわかには譲れない面がある。

 その一方で考えたいのは消費する側の姿勢や心理だ。多くの人が深夜最寄りの駅に降り立ち、コンビニで朝食の材料など買う。開いていればとりあえず寄るケースもあるだろう。

 時間を選ばないコンビニへの立ち寄りは今や暮らしに溶け込んでいる。運営側もそれに応えようと長時間営業に努める。こんな負の連鎖が起きているのではないか。

 仮に深夜にコンビニがなくても、救急医療などと違って死活問題ではない。消費行動がもし過酷労働の下地になっているなら、多少不便であっても消費者は二十四時間でないことを受け入れるべきだろう。

 一般的にコンビニが足元の売り上げやライバルとの競合にこだわる気持ちはよく分かる。しかし現場へのしわ寄せが過重になる中、最前線で働く人たちへの配慮ももちろん持ってほしい。公共性への意識は企業の責務だ。

 今回の場合、やはり運営側が強い立場にある。物流や会計処理など運営全体の見直しで、二十四時間にこだわらない工夫はできないものだろうか。

 実際に少しずつ時間短縮に取り組み始めた他社もいるようだ。運営企業と店舗、双方が「いい気分」で営業を続けられる創意工夫を期待したい。

 

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