偶には星以外の物を破壊してみないか?
そんな従者の提案に興味を持ち、破壊神は早速時空旅行を決行した。
第1話 「神を超える神」
「ひっ、貴方は?」
少女は突如目の前に現れた異形の者に驚きの小さな悲鳴をあげた。
傍らには見た目は人間に見える者が一人だけいたが、やはりその人物も身に纏う雰囲気と格好から人間とは思えなかった。
「暇だからいろいろ破壊しに来たんだ」
「ビルス様いきなり印象悪すぎですよ」
「は、破壊?」
案の定、少女は恐怖に震えた声をあげる。
「あ、貴女は悪魔なのですか?」
「いきなり失礼な子だね。そりゃ人間から見たらそう見えるかもしれないけど、僕は神様だよ?」
「神......様......?」
少女は今度は呆気にとられた顔で、従者と思しきウィスという人物がビルスと呼んだ異形の者を見る。
「あ、神様と言っても破壊の神様ですけどね。くれぐれも失礼のないように。変に機嫌を損ねてしまうと大変ですよ?」
「っ......!」ビクッ
「そんなに怖がらなくていいよ。ま、恐れられる気分は悪くないけど」
「あ、はい......すいません。それで、その......ビルス......様はここへ何を破壊しに来たのですか?」
「ん。礼儀正しい子だね。んー、特に決めてなかったんだけど......ああ、取り敢えず君にしようかな」
「わたし!?」
衝撃的な言葉に少女は今度こそ恐怖に震えた。
本当に神様かどうかはまだ定かではないが、それでも少なくとも人間ではない異形の者にこんな事を言われては無理もない。
「わたしが何を......」
「ああ、ごめん。君といっても君自身じゃないよ。破壊すると言ったのは君の中にある変な因果の事さ」
「わたしの、因果?」
「何か君、特別な力を持ってるみたいだね」
「っ! ち、地上代行者の力を......破壊するのですか!?」
「うん、多分それ。君みたいな礼儀正しい普通の子がそんなだいそれた力を持っているなんてね。気に入らないから破壊させてもうらうよ」
ビルスはとんでもないことを言った。
自分の勝手な都合で神から授かった地上代行者の力を破壊すると言う。
だが、少女は驚くのと同時にこうも思った。
そんな事は出来るはずない、と。
この力は悪魔と抗する為に神より授けられた聖なる力だ。
例え、自分が望まずして授けられた力だったとしてもその力は神聖なもの。
ましてや、神かどうかも分からない異形の者に破壊できるはずがない。
「そ、それは無理だと思いますよ。だって、これは神様から授けられた力ですから......」
「ああ、こっちの神の事か。いや、問題ないよ。僕の方が偉いし、何よりカッコイイからね」
「ビルス様、そこはカッコイイではなく、強い、が適当だったと思います」
対するビルスたちはそんな少女の言葉を気にする風もなといった様子だ。
「な、なにを仰っているのですか......?」
「ここの神はどうやら特定の形を持たない精神体みたいだね。ん、信者の信仰心を糧にするタイプか」
「この手の神は姿がないので、信仰する信者にとっては先ず抗えない絶対の存在になりがちですね」
「そうだな。全く大して働きもしないのに、偉そうに色々やってるみたいだ。そういうのは破壊、してもいいよな?」
「それは、ビルス様は破壊神であらせられますから。どうぞ御心のままに」
「だな。という事でお嬢さん、悪いけどついでにその神も破壊させてもらうよ」
少女はもう言葉が出なかった。
ビルスは、破壊神と呼ばれた異形の者は、ついに自分の力どころかこの世界の神すらも破壊すると言い出したからだ。
「でもビルス様、この星の神を破壊してしまうと、そちらのお嬢さんの力も消えてしまうのではないですか?」
「あ、そっか。その力が神に与えらえれたものなら当然か」
「神だけ破壊してハイ終わり、じゃちょっとつまらないなぁ......。あ、そうだ」
何かを思いついたのかビルスはポン、と手を付くと。
ビルス達の会話に着いていけず、もはや言葉を失くして立ち尽くしていた少女に質問してきた。
「ねえ君、さっき僕のことを悪魔と言ったよね?」
「あ、それは......」
ビルスの言葉に少女は再び恐怖に震えだした。
「ああ、さっきの事なら怒ってないからいいよ。それよりさ、僕が訊きたいのは悪魔の事なんだけど」
「あ、悪魔ですか?」
「そう。さっき僕のことを悪魔と間違えたでしょ? ということはこの世界には悪魔がいるって事だよね?」
「は、はい」
「よし。取り敢えず悪そうな悪魔を全部破壊して神様らしい事をしよう。で、その後にここの神を破壊だ」
「なるほど。それは名案です」
少女はこの時点で確信した。
この二人は普通ではない。
神かどうかは未だに判らないが、それでも彼らの会話を聞いているとこれだけは判った。
彼らが放つ言葉の全てにこの世界に対して遠慮がなく、そして自身の力に絶対の自信を持っているのを感じたからだ。
もしかしたら、本当に神様なのかもしれない......。
少女は段々そう思うようになってきていた。
「あ、あの」
「うん?」 ウィス「はい?」
「わ、わたしアズマリアと言います!そ、その......ビ、ビルス様に少々お尋ねしたい事があるのですが」
この者たちが本当に、神だと、力あるものだというのなら、確かめなくてはならない。
地上代行者として彼らの善悪を判断しなければならない。
「ああ、そういえば君の名前を聞いてなかったね。ご丁寧にどうも。僕は……そういえば名前もう言っちゃてたね」
「そうですね。では、改めて自己紹介しましょう」
「そうだな。僕はビルス。この星を含めた全宇宙の破壊神をしている」
「わたしはウィスと申します。この通りビルス様の付き人をしております。どうぞ宜しく」ニコ
突然の自己紹介を受けたビルスは別に驚く風もなく、アズマリアの言葉に耳を傾けてくれた。
それどころか、丁寧に自己紹介を改めてしてくれた。
自己紹介の内容さえ想像を絶するものでなかったら、アズマリアはここで少しは安心したところだったが、残念ながら現実はそう甘くはなかった。
「ぜ、全宇宙の神......様ですか......」
予想外だった。
違う世界だったらまだしも、全宇宙なんて言葉誰が予想できたものか。
「そう。だからとっても偉いんだよ? あ、僕に質問だったね。何かな?」
「あ、あの......失礼を承知でお尋ね致します。ビルス様は破壊の神様だと仰られましたが......その......悪い、方ではない......ですよね?」
その質問にビルスは目を丸くしてアズマリアを見つめ返した。
ウィスも不意を突かれて驚いていた顔をしていた。
しまった、怒らせてしまったか。
アズマリアは質問をもっと考えてするべきだと絶望した。
だが、その絶望とは裏腹に幸運にもビルスは愉快そうに笑いながら言葉を返した。
「ほう。面白い事言うねぇ。神様に善悪かぁ......」
「ほほ。初めての質問ですね」
「アズマリア、だったかな」
「は、はい」
「結論から言うけど、神様に善も悪もないよ」
「え」
「この世の理の全てを超える力を持つ者、それが神さ」
あまりにも衝撃的すぎる言葉を、ビルスはアズマリアの前で容赦なくそう断言した。
完璧に自分専用のただの妄想です。
時間がある時に書く程度に決めているので更新は亀の如しです(確定)
あと、ビルス様はドラゴンボールで2番目に好きなキャラです。
因みに1番は桃白白。