提督の日々(凍結)   作:sognathus
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ある日“クリスマスパーティーに身に着ける下着を見てもらう”そんな大胆な理由で金剛は提督を外出に誘った。。
提督も最初は理由が理由なだけに流石に逡巡の表情を見せたもの、最後は溜息を一つ吐き、“はしゃいで目立たない”という約束を条件のもとに金剛に付き合う事に同意したのだった。


第17話 「淑女」

「……なぁ金剛」

 

「um ? なんデスカ? 大佐」

 

「非常に居辛いんだが」

 

「Oh」

 

提督は金剛の買い物に付き合ってとある場所に来ていた。

彼の眼前には色とりどりにして様々なデザインの女性用の下着が並んでいた。

金剛は沈鬱な顔をしている提督を逃がさない為に腕に絡みついて苦笑した。

 

「大佐ワタシを置いてい行っちゃダメヨ? それにそんなに気にする事ナイワ。gentleman オンリーだったら不審だけど、恋人と一緒なんですカラァ」

 

「……だけどな」

 

「あっ、大佐。コレ、この underwear 見てくだサイ! コレ、ワタシに似合うカナ?」

 

「ん?」

 

明らかに話を逸らす意図は判ったが、提督はそれ以上抗うのは一旦やめて金剛が指さす方を見た。

そこには薄いピンク色をしたビキニタイプのショーツが掛かっていた。

デザインこそシンプルだったがビキニタイプ特有の股上が浅く小さいデザインが魅力的にも見え、控え目だがフロントの上部に着けられた小さなリボンが可愛らしかった。

提督はそれを見て特に表情は変えなかったものの、一瞬沈思しているような間の後に一言同意した。

 

「……いいんじゃないか?」

 

「大佐、今何を考えまシタ?」

 

「ん?」

 

「さっきの一瞬の time 気になりマス。その時なにを thinking しまシタ?」

 

「……ちょっと、な」

 

「推測するに、どうもワタシが身に付けた姿を imagine した感じでもなかった気がしマス」

 

「……」(こいつにしては控え目なものを選んだなんて言ったら、次にどんな過激なものを選ぶか分ったものじゃないしな)

 

「ウー……」

 

金剛は提督が何を思ったのか半ば予想できていたものの、彼から回答を引き出せない事もそうであったし、何より自分の予想通りである事自体が何か負けた気がして悔しかった。

 

(最初は控え目なものを選んでから徐々にエロティックなのを選んで大佐の反応を見る計画が裏目にでたわね。なら……)

 

金剛は最初に選んだ下着よりあまり目立たないやや離れた位置に掛けられてあるモノに目を着けた。

ソレはビキニタイプより布地が少なくより煽情的で危険な香りがするもので、なにより華やかなデザインが好きな自分の好みからは若干離れていた。

だがあのタイプの下着も一応ソレ用に所持はしていたし、さり気に日常においても実は身に付けていた事もあるのでそれほど抵抗もあるわけではない。

ならここは多少の恥じらいは捨てて彼の心を揺らす為に妖艶に攻めるが得策だろう。

そう考えた金剛は提督の肩を揺らしてソレを指さした。

 

「あっ、大佐、アレ。アレはどうデス?」

 

「ん……? ん……」

 

提督は金剛が指したものを確認するなり眉を寄せて明らかに反応に困った顔をした。

 

(ヤッタ! この反応を待っていたのよ!)

 

金剛は心の中でガッツボーズして踊りながらソレを手に取ってより近くで大佐に見せた。

 

「ふっふー、ネェ、コレ……どう、デス?」

 

「……」

 

提督はまだ金剛の問いに答えず呻き声の様な息を漏らしながら黙ってそれを見つめる。

そんな彼が重い視線を投げかけていたのはTバックタイプのショーツだった。

ビキニタイプよりぐんと布地が少なくサイドもストリングのものとまでは言えないが細くて煽情的だ。

だがやはり何よりも特徴的なのはバックの部分だった。

これはスカートなど下の衣類を着けていなければほぼ半裸であると言っていいほど尻の部分の肌が見えた。

提督はこういった下着の装着を制限するほど普段から規律を厳しくしていなかったし、特に自分に関係がなければ艦娘たちがそれを身に付けているのを偶然目にする事があっても何も言わなかった。

だが直接意見を求められるとなると、若干硬い性格の彼としては反応に困る所がある。

提督はこめかみと眉間に手を当てながら苦渋に満ちた顔をしてどう言ったらいいか真剣に考えていた。

金剛はその反応を見てとても嬉しそうに、より強く彼の腕に絡んで自分の胸を押し付けて彼の思考を乱そうとした。

 

「ふふふー♪ ねぇ、ネェ? どう? どうデスカ?」

 

「おい金剛……いや……そう、だな……」

 

「大佐ァ、コレ私に似合ってると思いマスかぁ?」

 

「まぁ……たまに穿いてる事もあるようだし、いいんじゃないか」

 

「えっ、えっ? 大佐、今何て言いマシタ?」

 

「言い訳はしないぞ。あれだけの女がいたら気を付けていても目にする事くらいあっても仕方ないだろう」

 

「オーウ、大佐見えてるなら見えてると言って欲しかったネー♪」

 

「なんでそこで嬉しそうな顔をするんだ」

 

「気の所為ヨ」

 

「はぁ……まぁ、それでもいいんじゃないか」

 

「大佐、これ新しいの穿いてるの見たら興奮シマス?」

 

「いや、しない」

 

「ふぁっ!?」

 

攻勢に転じていたと確信していただけに、予想外の提督の淡白な答えに今度は金剛が動揺を隠す事も思いつかずに驚きの声を出した。

 

「勤務中にそういった事で気が逸れるようではいかんだろう?」

 

「オーウ……間違ってはいないですケド、とっても dry な答えデス……」

 

「時と場合くらい選んでこそ英国淑女だろう」

 

「ウー、じゃぁ今は大和撫子になりマス」

 

「余計あり得ないだろそれ」

 

「Oh 朝潮や秋月に怒られそうネ」

 

「駆逐以外も入れてやれよ」

 

「ノンノン、差別するわけじゃありませんが軽巡以上の見た目が adult な子たちは言わずもがな、ヨ?」

 

「……英国かぶれのようで所々の言い回しはやっぱりお前は日本のものだと思うよ」

 

「それはそうデス。だってワタシは本当は大和撫子なんですカラ♪」

 

先程までの落ち込んだ雰囲気はどこへやら。

いつの間にかお互いに笑いあって明るくなっていた金剛は、結局最初に選んだ下着を持ってレジへと向かっていった。

それは、何だかんだ言って衝動的でない限りは提督や自分の好みを優先する怜悧さを彼女が持っているという証拠だった。

提督はそんな彼女の後姿を苦笑して見ていた。




12月になってしまいました。
仕事が忙しいのでそういう意味では嫌いな季節ですねぇ……(遠い目)
まぁ嫌いな理由はそれだけなんで、休みの日は割と快適に過ごしていますがw

あとこれは全く個人きな余談ですが、艦これの冬イベントが終わったらまたゲームを再開しようとか考えています。



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