cat_150735_issue_c417994f3e9f oa-trafficnews_c417994f3e9f_82371d564a20_京葉道路一部80km/hにアップ 過去引き下げの区間、なぜ今? 82371d564a20 0

京葉道路一部80km/hにアップ 過去引き下げの区間、なぜ今?

外環道の開通が契機に?


 NEXCO東日本が管理する京葉道路の一部区間で、2019年3月1日(金)より、最高速度が60km/hから80km/hに引き上げられました。

京葉道路下り線、京葉市川IC~原木IC間(画像:写真AC)。

 対象は千葉県内の京葉市川IC~船橋料金所間、約3kmです。京葉道路は現在、首都高7号小松川線との接続点から千葉市の穴川ICまでが最高速度60km/h、穴川ICから館山道との接続点までが最高速度80km/hとなっていますが、京葉市川IC~船橋料金所間以外は現状のまま据え置かれます。最高速度引き上げの理由を千葉県警交通規制課に聞きました。

――なぜ最高速度を引き上げるのでしょうか?

 京葉道路では、実勢速度(クルマが走行する平均的な実際の速度)が規制速度を上回っている状況です。「より合理的な交通規制の推進」という、警察庁が掲げた方針のもと、全国的に最高速度の見直しが進められており、そのなかで検討されました。

――なぜ京葉市川IC~船橋料金所間だけなのでしょうか?

 この区間は全て片側3車線であり、渋滞や事故も少ないためです。当初は2018年6月、外環道の千葉区間(三郷南IC~高谷JCT)が開通し、京葉道路に接続するのと同時に引き上げることも検討されていましたが、影響を見てからということになりました。結果、従前と大きな変化はなかったため、行楽シーズンを避けたタイミングでの実施に至りました。

※ ※ ※

 千葉県警は2017年2月にも、一般道である国道464号「北千葉道路」の一部区間(印西市内)を、最高速度60km/hから70km/hに引き上げました。また、千葉県以外では京葉道路と同じく2019年3月から、新東名と東北道の一部区間で最高速度を110km/hから120km/hに引き上げる試行も開始。このように、全国で速度規制の見直しが進められているのです。

昔も最高80km/hだった!?


 千葉県警交通規制課によると、最高速度の「引き上げ」は、県内の高速道路や有料道路では初めてとのこと。しかし実は、千葉県内における京葉道路の最高速度60km/h区間は、かつて最高80km/hでした。

 というのも、1970年代に沿道地域から騒音に対する苦情が寄せられ、60km/hに引き下げられたのだそうです。今回、京葉市川IC~船橋料金所間で引き上げの実施に至ったのは、高さ8mに及ぶ遮音壁の設置がほぼ完了し、騒音の影響が低減されていることも理由のひとつだといいます。

 しかし、ほかの区間は遮音壁の整備も十分ではなく、道路構造や騒音の問題、渋滞の状況などから、引き上げの判断には至ってはいないそうです。

 今後、ほかの区間でも最高速度の引き上げはあるのでしょうか。千葉県警交通規制課は、「状況の変化を見ながら、道路管理者と協議のうえで見直しを進めます」と話します。

 NEXCO東日本によると、京葉道路では特に船橋料金所より東の千葉市側、船橋料金所~武石IC間の上り線で、朝夕の通勤時間帯を中心に慢性的な渋滞が発生。このため同区間では現在、IC前後の加速・減速車線を延長したり、それらをつないだりして車線を増やす工事(付加車線の整備)が行われています。

最高速度が引き上げられる京葉道路 京葉市川IC~船橋料金所間の位置(国土地理院の地図を加工)。

 こうした車線の増設による渋滞対策は、すでに穴川IC~貝塚IC間の下り線でも行われており、2016年に整備が完了した同区間では、渋滞発生回数が約8割、渋滞時間が約7割減少したそうです。

 千葉県警交通規制課によると、「付加車線などの対策により、船橋料金所から東側の区間でも渋滞も緩和されてきています」とのこと。今回の区間以外でも将来、最高速度の引き上げが実施されるかもしれません。

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cat_150735_issue_c417994f3e9f oa-trafficnews_c417994f3e9f_a1b8dca01321_「国鉄急行形」塗色、道南いさりび鉄道のキハ40系で復活 a1b8dca01321 0

「国鉄急行形」塗色、道南いさりび鉄道のキハ40系で復活

キハ40系ディーゼルカー「国鉄急行形塗色」のイメージ(画像:道南いさりび鉄道)。

 北海道の五稜郭駅(北海道函館市)と木古内駅(同・木古内町)を結ぶ第三セクター、道南いさりび鉄道は2019年3月1日(金)、保有するキハ40系ディーゼルカー9両のうち1両を、国鉄時代の急行形塗色に変更すると発表しました。

 国鉄の急行形塗色は、キハ56系急行形ディーゼルカーなどで採用。道南いさりび鉄道線の前身である江差線などでも、この塗色の車両が急行列車や普通列車として使われていました。

 今回の対象車両はキハ40-1798号です。定期検査後に「クリーム4号」と「赤11号」による塗り分けで登場します。

 道南いさりび鉄道のキハ40系は、これまで急行形塗色の採用はありませんが、同社は急行形塗色の採用について「沿線にお住まいの方をはじめ、日本全国に『懐かしい』と思われる方が多くいらっしゃると思われ、その懐かしき青春時代を再度謳歌して頂こうと思っております。さらには親から子、子から孫へ、新たに鉄道と親しむきっかけとして頂き、ご家族の会話を弾ませて頂きたく思います」と説明。沿線地域来訪のきっかけ作りの一助にもしたい考えです。

 急行形塗色の車両は、通常の定期列車として運用されます。一番列車は3月17日(日)の、函館14時04分発 上磯行きです。なお同日の函館15時16分発 木古内行きと、木古内16時32分発 函館行きの車内では、記念乗車証が配布されます。

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cat_150735_issue_c417994f3e9f oa-trafficnews_c417994f3e9f_7ac0a4f60d35_722号車が"朱色"に! 叡電の700系電車、順次リニューアルへ 7ac0a4f60d35 0

722号車が"朱色"に! 叡電の700系電車、順次リニューアルへ

722号車のリニューアルイメージ(画像:叡山電鉄)。

 叡山電鉄は2019年2月28日(木)、700系電車のうち、リニューアルした722号車を3月21日(木・祝)から運行すると発表しました。

 700系は1987(昭和62)年のデビューから30年以上が経過していることから、リニューアルを行うことに。今回の722号車の工事では、座席の交換や車いす・ベビーカースペースの設置、車内灯・前照灯のLED化などが実施されるほか、車内6か所にスタンションポールが増設されます。

 外装は、沿線の神社仏閣をイメージしたという朱色に変更。車体前面の鋼板を厚くし、台枠下部覆い(スカート)を新設するなど安全性の向上を図っています。

 叡山電鉄は今後、ほかの700系電車についてもリニューアルを順次進めていく方針です。

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cat_150735_issue_c417994f3e9f oa-trafficnews_c417994f3e9f_8226c9a3c316_高速バス"都心スルー路線"開設の狙い 圏央道の活用広がる 8226c9a3c316 0

高速バス"都心スルー路線"開設の狙い 圏央道の活用広がる

東武と神奈中、初タッグ


 東武バスグループの東武バスウエスト(さいたま市北区)と、神奈川中央交通(神奈中)グループの神奈川中央交通西(神奈川県平塚市)が2019年3月16日(土)、高速バス新路線「圏央ライナー川越湘南線」の運行を開始します。主に圏央道を経由し、埼玉県川越市と神奈川県厚木市、藤沢市を直結する路線で、運行概要は次のとおりです。

「圏央ライナー川越湘南線」のイメージ(画像:東武バス)。

・運行区間:川越地区(神明町車庫、本川越駅、川越駅西口)~本厚木駅~藤沢地区(辻堂駅北口、藤沢駅北口)
・運行本数:1日2往復(朝と夕方)
・所要時間:川越駅西口から本厚木駅まで1時間40分、藤沢駅北口まで2時間30分
・運賃:川越地区~本厚木駅間1800円、川越地区~藤沢地区間2000円(小児半額)

 神奈中グループでは、埼玉県を拠点とする事業者との共同運行は今回が初めてとなります。東武バスグループでは2018年から京浜急行バスと共同運行している「鬼怒川温泉・日光~羽田空港・横浜線」で神奈川県内に乗り入れていますが、県中央部への乗り入れは、やはり初めてです。

 一般的に関東とその近郊エリアで運行される高速バスは、山手線の駅をはじめとする大ターミナル駅と地方都市、観光地(遊園地や商業施設含む)、あるいは空港を結ぶものが多いですが、いわば東京の「衛星都市」どうしを結ぶ路線は珍しいでしょう。加えて、川越~藤沢間は鉄道でも乗り換え1回、所要1時間40分前後、1500円以下(東武東上線とJR湘南新宿ラインを利用した場合、IC運賃で1435円)で移動できるなか、新路線にはどのような需要があるのでしょうか。

需要の「掘り起こし」成功なるか


 新路線について、東武バスに話を聞きました。

――今回の路線は、どのような狙いがあるのでしょうか?

 川越市と、藤沢市をはじめとする湘南地区は双方とも人気の観光エリアで、国内はもとより、近年は訪日観光客も多く訪れています。今回の路線は、圏央道の開通により埼玉県と神奈川県のアクセスが飛躍的に向上したことで、双方の観光地を結ぶ新たなアクセスルートを開設し、観光需要を掘り起こすものです。

 途中で停車する本厚木駅は、神奈川県内でも乗降客数が多く、周辺には工業団地や大学が立地するほか、観光地である箱根や大山への玄関口でもあることから、多くの方にご利用いただけるものと考えております。

圏央道を活用する高速バスのひとつ、高崎・前橋~成田空港線「アザレア号」千葉交通車(2018年3月、中島洋平撮影)。

――所要時間、運賃ともに鉄道を上回りますが、「強み」はどのような点でしょうか?

 鉄道では都内で乗り換えが発生しますが、今回の路線は乗り換えが不要で、トイレ付きのバス車内でゆったりと、座ってお過ごしいただける点が「強み」です。乗り換えのない「わかりやすさ」も、訪日観光客の需要にも応えるものでしょう。

 とはいえ、観光やビジネスにおける行き帰りのいずれか、片道利用のウエイトが高いと想定しています。アクセス手段の選択肢として選んでいただけるよう、幅広くPRしてまいります。

※ ※ ※

 また神奈中グループは2015年に、圏央道を経由する藤沢・辻堂・本厚木~河口湖線、町田・橋本~河口湖線を開設しています。「両路線とも多くのお客様にご利用いただいています。そこで今回、次なる『圏央道を活用した路線』として(川越~藤沢線を)開設しました」とのことです。

圏央道を活用した高速バスの「乗り継ぎサービス」も


 圏央道の開通により、特に群馬・栃木関係の高速バスで、ルートを首都高経由から圏央道経由に変更するケースも増えています。これを受け、国土交通省も圏央道を使った高速バスの「乗り継ぎサービス」の社会実験を、2019年2月21日(木)から約1か月間、実施しています。

 これは、2017年に首都高経由から圏央道経由に変更した前橋~成田空港線(関越交通、千葉交通)と、長野~新宿線(アルピコ交通、京王電鉄バス)を、関越道の高坂SA(埼玉県東松山市)で乗り換えることで、長野~成田空港間の所要時間を都心経由から平均で30分短縮させるというものです。関越道を経由し地方と東京を結ぶ高速バス路線が多いなか、それらと圏央道を経由する路線とを結び付けることで、乗り換えに便宜を図り、交通ネットワークを拡充することが狙いです。

 実験を主導する国土交通省 関東地方整備局によると現在、たとえば圏央道経由で埼玉県と千葉県を結ぶ新たな路線について、圏央道の沿線自治体からも運行の要望が上がっており、その開設を具体的に検討している事業者もあるといいます。

さいたま市と千葉市を外環道経由で結ぶ小湊鐵道「ちばたまライナー」(画像:小湊鐵道)。

 ちなみに、圏央道だけでなく、2018年6月に開通した外環道の「千葉区間(三郷南IC~高谷JCT)」も、高速バスに変化をもたらしています。

 たとえば小湊鐵道が2017年に運行を開始した千葉市とさいたま市を結ぶ「ちばたまライナー」は、外環道千葉区間の開通後、首都高経由から外環道経由にルート変更し、所要時間が30分以上短縮しました。また、松戸新京成バスと京成バス、京浜急行バスが外環道開通を受け、新松戸・松戸~羽田空港線を新たに開設しています。こうした、都心の外側をつなぐ“環状道路”を活用した高速バスの新路線が、今後さらに誕生するかもしれません。



【時刻表】川越~藤沢間は所要2時間以上


「圏央ライナー川越湘南線」は1日2往復。川越駅西口~藤沢駅北口間の所要時間は2時間30分(画像:東武バス)。

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cat_150735_issue_c417994f3e9f oa-trafficnews_c417994f3e9f_732122de314d_千代田線の北綾瀬駅、ホーム10両化 駅出入口を新設 732122de314d 0

千代田線の北綾瀬駅、ホーム10両化 駅出入口を新設

膜屋根が設置される北綾瀬駅新ホームのイメージ(画像:東京メトロ)。

 東京メトロは2019年3月1日(金)、千代田線の北綾瀬駅(東京都足立区)で、10両編成列車の発着と、しょうぶ沼公園側出入口の営業を16日(土)から開始すると発表しました。

 千代田線の綾瀬~北綾瀬間は、1979(昭和54)年の開業以来、3両編成の列車が折り返し運行されています。北綾瀬駅は、これまで3両編成に対応した短いホームでしたが、代々木上原方面から10両編成の列車が直通で乗り入れられるよう、ホームを延伸する工事が進められていました。

 今回、その10両化工事が完成。ダイヤ改正が行われる16日(土)から北綾瀬~代々木上原方面で10両編成列車の運転が始まります。また、駅西側のしょうぶ沼公園に直結する出入口が新設されます。

 今後は、環状七号線の北側にも出入口を増設。駅全体のリニューアルは2020年12月に完了する計画です。



【画像】公園直結の新しい駅出入口


北綾瀬駅西側のしょうぶ沼公園に直結する出入口のイメージ(画像:東京メトロ)。

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cat_150735_issue_c417994f3e9f oa-trafficnews_c417994f3e9f_3fb06e057889_小田急電鉄が「1日全線フリー乗車券」発売 期間は年4回 3fb06e057889 0

小田急電鉄が「1日全線フリー乗車券」発売 期間は年4回

小田急線に「1日全線フリー乗車券」が登場(画像:小田急電鉄)。

 小田急電鉄は2019年2月28日(木)、小田急全線が1日乗り降り自由になる「1日全線フリー乗車券」を学校の長期休みや行楽シーズンにあわせて発売すると発表しました。

 価格は大人2000円、子ども1000円。利用期間は毎年3月21日~4月5日、4月28日~5月6日、7月1日~8月31日、12月25日~1月10日です。

 ただし2019年は、特急ロマンスカー「GSE」のデビュー1周年を記念した「特急ロマンスカーモバイルスタンプラリー」の開催期間にあわせて、3月21日(木・祝)から5月6日(月・祝)までが利用期間とされます。また今後も、イベントなどにあわせて利用期間が変更される場合があります。

 発売は2019年3月21日(木・祝)からで、以降は利用期間の1か月前からです。小田急線各駅の窓口や券売機、小田急トラベルの各店舗(一部除く)で販売されます。小田急電鉄は「本乗車券でお得に小田急線を乗りこなし、魅力あふれる小田急線途中下車の旅をお楽しみください」としています。

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cat_150735_issue_c417994f3e9f oa-trafficnews_c417994f3e9f_3222a931b0dd_関越道 寄居スマートIC、3/28に下り線側開通 寄居PAに併設 3222a931b0dd 0

関越道 寄居スマートIC、3/28に下り線側開通 寄居PAに併設

関越道 寄居スマートICの位置(画像:NEXCO東日本)。

 埼玉県の深谷市、寄居町、美里町とNEXCO東日本関東支社は2019年2月28日(木)、関越道の寄居スマートICが、3月28日(木)13時に下り線側のみ先行開通すると発表しました。

 寄居スマートICは、花園IC~本庄児玉IC間の寄居PA(埼玉県寄居町)に併設されます。今回開通するのは下り線側のみで、上り線側は工事中です。

 ETC搭載車専用で、24時間利用可能。寄居スマートICまで(から)の通行料金(普通車、ETC通常料金)は、練馬ICが2060円、所沢ICが1760円、前橋ICが920円、沼田ICが1810円です。

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cat_150735_issue_c417994f3e9f oa-trafficnews_c417994f3e9f_f57c0dc7dbe7_皆、船通勤!? しまなみ海道の下の"渡し船銀座"1日数百往復 f57c0dc7dbe7 0

皆、船通勤!? しまなみ海道の下の"渡し船銀座"1日数百往復

狭い海峡を結ぶ尾道の渡船


 広島県尾道市の南側に、向島(むかいしま)と呼ばれる島があります。「島」とはいっても、1万6000もの人口があり、大規模なスーパーや量販店が立ち並びます。

向島側にある駅前渡船の富浜港。江尻川の真ん中に突き出す桟橋に接岸する(oleolesaggy撮影)。

 JR尾道駅などがある本土側とのあいだには、「尾道水道」という幅300mもない海峡が長く伸び、その海峡をひっきりなしに小さな渡し船が行き交っています。2019年1月現在で就航している渡し船は3社あり、朝のラッシュ時などは、ほとんど常に、海峡のどこかで渡し船が動いている状態です。

 3社でそれぞれ異なる航路を受け持ち、住み分けができています。1日を通じて賑わいを見せるのは、発着ターミナルの利便性が良い「駅前渡船(向島運航)」です。尾道側の港は、尾道駅とペデストリアンデッキ(空中歩道)で直結しています。向島側の富浜港も、市役所の向島支所や量販店に近く、島内のバスもほとんどがこの港を経由します。

 通勤・通学に重宝されるのは「福本渡船(福本フェリー)」です。本土側では尾道駅から東に徒歩5分ほどの桟橋に、向島側では江尻川の河口に位置する小歌島(おかじま)港に発着。向島側のバスとの接続はよくないものの、運賃が他社より安いことから利用が多く、島の中高生や造船所の通勤客などで、港は朝から人だかりです。

 最も東側の航路を取るのは「尾道渡船」で、1984(昭和59)年までは通称「公営渡船」として自治体の出資で運航されていました。本土側は市役所近くに、向島側では兼吉地区に発着し、同地区の重要な足となっています。どちらの港も渋滞に巻き込まれにくいこと、駅前渡船は自動車を積載できないことなどから、福本渡船と並んで自動車や貨物の利用も多いのが特徴です。

 運賃は、福本渡船が片道60円、ほか2社は100円。3社とも旅客運賃プラス10円で自転車を運べるため、それぞれの需要に合わせて利用されています。福本渡船と尾道渡船は自動車も運ぶことができ、全長4m車の運賃はそれぞれ90円、120円です。

橋があるのに数百往復 しかし経営は苦境


 尾道市の資料によると、3社の航路を合計した1日の運航本数は2016年10月現在で721本、360.5往復とされています。各船とも、港に到着するとあっという間に乗客を降ろし、また積んで手早く折り返していくという頻発ぶりです。とはいえ、尾道と向島には橋も架かっていて、実質陸続きの状態。なぜ渡し船がここまで重宝されるのでしょうか。

 全盛期には渡船会社が7社あり、船長が休む暇もないほど年中賑わっていたという向島は、1968(昭和43)年に尾道大橋が開通して本土とつながりました。ここから、渡し船はじりじりと乗客の減少に悩まされることになります。

 その後、「しまなみ海道(西瀬戸道)」の建設が進み、1999(平成11)年にはその一部として尾道大橋に並行し新尾道大橋が架けられました。しまなみ海道など本州と四国を結ぶ橋の「開通後2年内に航路を廃止すると補償金が出る」という「本四特別措置法」の期限内に2社(玉里渡船、有井渡船)が撤退。その後、島の東端にあった「桑田航路」も撤退し、現在の3社が残ったのです。

港に着いた船は、手早く乗客と車を降ろしてすぐ折り返しの準備を始める。尾道渡船「にゅうしまなみ」(oleolesaggy撮影)。

 当初は有料だった尾道大橋も、開通から45年を経た2013(平成25)年に無料化されました。このため、残った3社の渡し船も乗客が減少傾向にあり、尾道市が渡船に出す補助金も少しづつ増えています。また、人手不足や担い手の高齢化も無視できません。2018年11月には、福本渡船が平日の日中と日曜に運航を休止するという大幅な減便を行っています。

 しかし、徒歩や自転車で向島に向かう人々には渡船が欠かせません。尾道大橋が架かっている場所は島の中心部から3km東にあり、本土側の尾道駅などから島の中心部へ向かう場合、大きく迂回を強いられます。また朝晩の尾道大橋は渋滞も激しく、その点でも渡船の優位性はまだまだ大きいのです。

サイクリングに聖地巡礼 渡し船はますます重要に


 しまなみ海道では基本的に、橋に自転車歩行者道が併設されており、尾道から自転車で四国まで縦断する観光客が近年増えています。2014年から自転車の通行料が無料(2019年3月末まで)になったことも人気に拍車をかけ、楽天トラベルの調査による2017年の「サイクリングが楽しめる旅先ランキング」では、1位が「今治・しまなみ海道エリア」、3位が「尾道・しまなみ海道エリア」と、サイクリストのあいだでしまなみ海道の人気が高まっているのです。

 しかし、しまなみ海道でも新尾道大橋には自転車歩行者道が併設されておらず、並行する尾道大橋も歩道部が狭いため、しまなみ海道を縦断するサイクリストには、尾道~向島間で渡船の利用が勧められています。2017年には700万人近くの観光客が尾道を訪れるなか、渡船の重要性も高まっているといえるでしょう。

本土側にある福本渡船の土堂港。『さびしんぼう』など数々の映画に登場した(oleolesaggy撮影)。

 ちなみに、尾道には「映画の街」としての側面もあります。特にその存在を知らしめたのは、尾道出身の大林宣彦監督が1980年代に制作した「尾道三部作(『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』)」、1990年代に制作した「新・尾道三部作(『ふたり』『あした』『あの、夏の日』)」でしょう。ほとんどの作品で尾道の渡船が登場しているため、ロケ地やゆかりの地を巡る「聖地巡礼」で渡船に乗る観光客も少なくありません。



※記事制作協力:風来堂、oleolesaggy

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