切削工具メーカー「富士精工」(愛知県豊田市)の製品設計データを不正に持ち出したとして、県警豊田署などは27日、同社社員で中国籍の申永輝容疑者(31)=同市中根町小訳=を不正競争防止法違反(営業秘密の領得)の疑いで逮捕した。県警は外部に流出させる目的だった可能性があるとみて調べる。
豊田署によると、申容疑者はUSBメモリーにデータをコピーしたことは認めたうえで「勉強のためだった。不正な利益を得る目的はなかった」と容疑を一部否認しているという。
申容疑者が持ち出したとみられるのは、自動車部品の製造に用いられるドリルの刃先の設計データなど。ほかにも複数の製品のデータがコピーされた痕跡が確認された。
逮捕容疑は1月29日ごろ、不正な利益を得る目的で同社のサーバーにアクセスし、営業秘密にあたる製品データを私用のUSBに複製し、持ち出した疑い。
申容疑者は日本の大学を卒業後、2014年に富士精工に入社した。技術部門の社員として、製品のマニュアル作成などの業務を担当し、データを見るために必要なIDとパスワードを知らされていた。
県警や富士精工によると、1月末の内部調査で不正の疑いが発覚し、2月15日に同社が県警に相談した。県警はデータが海外などに流出していないか、押収したパソコンの解析を進める。
富士精工は名証2部上場で、18年2月期の連結売上高は約207億円。「このような事態を招き深く反省している。捜査に全面協力し、情報漏洩の防止に努める」とのコメントを公表した。