日本原子力発電が東海第二原発の再稼働を明言した。3・11の津波被災原発なのに、百万人近い周辺住民の避難計画はほとんどできていない。大地震の危険が再び迫る中、これで理解が得られるか。
「自治体や地域住民のしっかりとした理解を得ながら、再稼働をめざしたい」
原電側の唐突な「再稼働表明」に、茨城県の大井川和彦知事は「県の安全性評価結果を待つべきではないか」と不快感を表した。
東海第二原発は昨年九月、原子力規制委員会から、新規制基準に「適合」とされ、十一月には最長二十年の運転延長の認可を受けた。四十年の法定寿命を迎える二十日前のことだった。
一般に電力事業者は、規制委の「適合」判断を安全の“お墨付き”として、立地自治体の同意を得て再稼働を進めている。
原発から三十キロ圏内の市町村は、避難計画の策定を国から義務付けられている。「危険な地域」と言われているようなものである。そのほとんどは、危険はあるのに、ノーと言う資格がない。
原発再稼働に対する不信の根っこには、説明と対話の圧倒的な欠如がある。
東海第二は、特に説明が必要な原発だ。東日本大震災で津波に襲われ、外部電源を一時失った「被災原発」なのである。
原電は昨年三月、立地自治体だけでなく、三十キロ圏内にある県内十四市町村のうち、県都水戸市など六市村に範囲を広げ、再稼働に際して事前同意を取り付けるという安全協定を締結した。
ところが先月、常陸大宮市など残る八市町などと結んだ協定では「同意権」を認めていない。
それなのに、原電の村松衛社長は「規制委の許認可に基づく安全対策にめどがつき、地元東海村や隣接自治体とも安全協定を結ぶなど、一定の条件が整った」と話している。
東海第二の三十キロ圏内には、全国最多の約九十六万人が暮らしているが、避難計画の策定はほとんど進んでいない。
そもそも百万人近い人々に、どこへ逃げろというのだろうか。住民側には「理解」の土壌すらできていない。「三十年以内に、東日本を再び大地震が襲う恐れが強い」という政府の地震調査委員会の警告を、どう受け止めるのか。
東海第二だけでなく、再稼働に理はないということだ。
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