東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 経済 > 紙面から > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【経済】

上振れ要因、委員長「知らず」 勤労統計賃金算出 18年の変更時

写真

 毎月勤労統計で二〇一八年に賃金の算出方法を変えて伸び率が過大になった問題で、政府の統計委員会の西村清彦委員長は二十八日、最大の上振れ要因となった変更内容を同年一月の実施段階で「知らなかった」と述べた。安倍晋三首相らは変更の根拠を「統計委での適切な議論」に求めているが、統計の責任者が内容を知らないまま変更を認めたことになる。 (渥美龍太)

 同日の衆院予算委員会で立憲民主党の長妻昭氏の質問に答えた。この上振れの要因は「ベンチマーク更新」と呼ばれ、産業構造や労働者数などの変化を統計に反映させる処理。一八年に処理のやり方を変えた結果、賃金伸び率が経済の改善とは関係なく上振れした。

 ベンチマーク更新のやり方の変更を巡っては、統計委が審議しないまま厚労省の方針を追認したことが、統計委の会議資料で既に明らかになっている。根本匠厚労相は同日の予算委で「統計委員会からこの(変更後の)やり方が適当と言われている」と、従来の主張を繰り返した。

 厚労省の分析によると、算出方法の変更により一八年一月の給与で0・8%の上振れがあった。このうちベンチマーク更新が0・37%と最も大きく、統計委で審議された「調査対象事業所の入れ替え」の0・13%を上回る。

<ベンチマーク更新> 毎月勤労統計で賃金を算出する際に、世の中の実態に近づけるための処理の一つで、「調査対象事業所の入れ替え」と並ぶ柱。具体的には事業所の抽出調査をした結果に、定期的に行われている別の全数調査のデータを反映させる。2018年は大きな企業で働く人が増えるデータを反映させたことで平均賃金が上がり、伸び率の上振れ要因となった。これまでは上振れ分を過去の賃金にも反映させる補正をして伸び率に影響しないようにしていたが、18年からは補正をしなかった。このため、同年6月には21年ぶりの賃金伸び率を記録した。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】