ブルペンでの総投球数は前年比で1019球減。この減った分こそが、岡田の充実度を示していた。「去年は英語で言うマストでしたね。とにかくやらなきゃいけない。手術して1年休ませてもらって、2軍でキャンプをやらせてもらっている意味はなんだと…」
昨春は左手の血行障害の手術明けだった。取材もしたし、記事にもした。総投球数2050。十分な数は、復調への証しだと思っていた。いや、岡田本人もそう思い込もうとしていた。
「今年は全然、違いますね。もちろん1年通して1軍でやらなきゃいけません。そのためにはこれができる、その次はあれができるな…。そんな考えでやれているんです」
今にして思えば、不安と焦りが投げさせた2050球だった。この春は余裕と自信がみなぎっている1031球。26日の巨人戦(那覇)では146キロをたたき出すなど、順調そのものだ。投手陣全体を見渡しても「今年はいいな」と思わせてくれる数人のうちの1人。27日もブルペンで27球を投げた。受けた中野ブルペン捕手と握手。「1カ月ありがとうございました。そしてこれからの1年、よろしくお願いします」。この言葉で打ち上げた。
期間中、24日あった練習日のうち、岡田がノースローだったのは1度(8日)のみ。ほぼ皆勤だったのは、もちろんシーズンに入ってからのフル回転を意識しているからだ。「投げなかったその日も、何となくでしたね。1日くらいそういう日があってもいいか、みたいな。うん。いいキャンプだったと思います」
昨季の最終戦(10月13日、阪神戦)で、1イニング2三振を奪った球の残像が、今も僕の目に焼き付いている。「やっと手術した手がなじんできたんです」。その手応えは、この春も維持。接戦の継投を支えるのは、祖父江との左右両輪だ。「困ったときの岡田」の存在感は今季、さらに増しそうだ。