提督の日々(凍結)   作:sognathus
<< 前の話 次の話 >>

9 / 27
提督を訪ねて誰か来たようです。


第9話 「再開」

「大佐、大佐にお客様なのです」

 

執務室に入って来た電が元気な声で来客を報告してきた。

提督はそれを聞いて顔をしかめる。

 

「俺に? 直接にか?」

 

「はい、なのです」

 

電の肯定に提督は暫し沈思した。

 

(さて、今日誰か訪ねてくるなんて上からは通達が無い。という事は現地住民か? 何かトラブルでもあったのか)

 

日本帝国軍は国外の地に基地を構えさせてもらう手前、当然最低限の現地の護りと治安の維持も任務の一つとしていた。

本来は海軍だけで防衛と治安維持を担っていたのだが、時代が変わり、海軍が対深海棲艦の為の国防組織としての色合いが濃くなってくると、国防省の意向を汲んだ統帥部が組織改革を行い、国外の内地の治安維持については専任組織として陸軍も派遣するようになった。

つまり基地の構成員の大半を艦娘が占める海軍は外の防衛、内地の防衛と治安維持については現地警察機関と協力して陸軍が担っているのだ。

 

故に何か現地からの問い合わせや来客は現地住民と関わる機会が多い陸軍宛である事が多く、海軍には身内以外からのそういった事は滅多になかった。

あったとしてもそれは現地の国防機関の関係者との今後の国の方針や計画についての確認などが殆どで、それにしても内容が内容なので事前に本国から通達があった。

だから突然のアポもない来客と言うのは海軍、提督にとってはとても珍しいのである。

 

「分った、通していいぞ。因みに誰だ?」

 

思い当たる節がない提督は取り敢えずあってみる事にした。

提督に客の事について訊かれた電はいつもと変わらない様子でその問いに答える。

 

「はいなのです。大佐と似た服をその人も着ていたので多分大佐と同じ海軍の軍人さんなのだと思います」

 

「なに?」

 

提督はそれを聞いて意外そうな顔をした。

それは尚更おかしい。

軍関係者、それも同郷の者となれば、これは必ず本部から通達があるはずだ。

だが、今のところそれは自分は受けていない。

単純に通達が遅れているというのも考えられるが、それは今までなかった。

 

「……電」

 

「はい?」

 

「その客をここに連れてくる前に日向と伊勢を呼んでおいてくれ。一応軽警備態勢で来るようにとも伝えるように。装備は勿論相手には外からは判らないようにな」

 

「えっ」

 

電はそれを聞いてちょっと驚き、不安そうな顔をする。

 

「大丈夫だ心配するな。ただちょっと気になっただけだ。杞憂ならそれに越した事はないが、用心だってするに越した事はない」

 

「あの、あの……い、電もご一緒します」

 

自分が不審者を基地に招き入れてしまったと思ったのだろう、電は目に涙を溜めて伊勢達とここに残る事で責任を取ろう思ったようだ。

だが提督はそんな電に対して注意する事無く微笑みながら彼女の頭に手を置いた。

 

「あ……」

 

「心配するなと言ったろう?」

 

「でも、でも……」

 

おろおろとしながらも責任感の強さからそれでもその場を退こうとしない電。

提督はそんな電の気持ちを察して聞いた。

 

「分かった。じゃあお前も残るか」

 

「は、はいなのです!」

 

電は責任を取れる事と提督からの信頼を感じて精一杯頼もそうな顔で元気よく返事をした。

 

 

コンコン

 

『お連れしました』

 

扉の向こうから電の声がした。

提督はそれを確認して入室を許可する。

 

「ああ、どうぞ」

 

彼の机の両隣には伊勢と日向がそれぞれ休めの姿勢で待機していた。

客が入る前に日向がふと扉を見つめたまま小さな声で伊勢にぼそっと言った。

伊勢は彼女の言葉をを聞いて不満そうな顔をする。

 

「……気を抜くなよ伊勢」

 

「わ、分ってるわよ!」ヒソ

 

ガチャッ

 

「お、お連れしました」

 

扉を開けて電が客を連れてきた。

彼女の言った通り入って来た客人は海軍の服を着ていた。

佇まいの落ち着いており軍人らしい雰囲気もあった。

この時点で伊勢と日向はその客人から何かを感じ取ったのか、僅かに緊張を解いた。

電もそんな二人の微妙な変化に気付き、どうやら自分が取り次いだ客人が不審な人物ではなさそうな事に内心安堵した。

 

「……」

 

だが、ただ一人提督だけは違っていた。

部屋入って来た人物を見るなり石の様に固まり、声こそ出さなかったがそれでも彼の目は驚きから若干見開き気味で、ただただ目の前の人物だけを見ていた。

 

「こんにちは、准将殿」

 

その人物、女性は提督を唖然とする提督を見てにこりと笑った。

 

「信条さん……」

 

提督は喉から絞り出したような声でやっとそう言った。

そう、彼女は以前の休暇先であった一悶着(原因はほぼ提督にあったが)の中心人物。

元陸軍の将軍の提督の友人だった。

その友人は提督の言葉に不満そうな顔をして訂正を要求してきた。

 

「むっ、要ね、か・な・め。まっ、今は職務中だから階級呼びが良いかな。あ、私は少佐だから」

 

「……」

 

提督はまだ事態を把握できずにそれ以上何も言えずにただ座っている。

少佐はそんな事お構いなしに軽く咳払いをすると真っ直ぐと上官に対する礼儀正しい態度ではっきりとした口調で言った。

 

「こほん、では改めて。こんにちは准将殿。昨日付で○○泊地の提督となりました信条要少佐であります。微力ではありますが、護国と准将殿のお力になれれば幸いに思います。本日はご挨拶の為に特別にお暇を頂き挨拶に参りました」

 

褐色の肌は故郷で会った時から流石にわってなかったが、その時より幾分短く切ったらしい相変わらずちょっと跳ねたくせ毛が特徴的な元陸軍の信任海軍少佐は、提督を見て悪戯っぽく笑いながら言った。

 

「あたし、本気だから」




スマホ用の艦これアプリが出る様です。
互換性があるのでブラウザのデータも引き継げるのだとか。
うーん、でも自分は心情的に全くの新規サービスから始めたい気持ちが強いのでiOS版に若干魅力を感じます。
でも自分は android ユーザーなんですけどね。
どーしようかな……。



※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。