フナ類(ギンブナ) Carassius sp.
コイ科コイ亜科フナ属

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フナ

【種の説明】 日本のフナの仲間には、ギンブナ、キンブナ、オオキンブナ、ナガブナ、ニゴロブナ、ゲンゴロウブナと呼ばれるグループがあるが、 近年の遺伝子解析で、前五集団には直接の対応関係はなく、結果、日本のフナは「フナ」と「ゲンゴロウブナ」の二種しかないことが明らかにされた。 「フナ」は同所的に生息し自然交雑も知られるが、ここでは、これまでギンブナと呼ばれ特徴づけられてきたグループを、フナ類(ギンブナ)として扱う。
【生息場所】 河川の中流から下流部、用水路、池、湖沼などを中心に広く生息している。 平野部をゆったり流れる泥底で、水草が茂り、水も濁ったような中小の川を好むように思う。コイと同様に汚染に強く、汚水が流れ込む水路でも生息している。
【外観・生活】 全長は大きい個体で30cm程度になる。姿はコイに似ているが、本種には口ひげがないことなどで簡単に区別できる。 体色は銀色味が強く、背側と腹側の外縁は平行的で、尻びれ起点付近より後方で急角度にすぼまる個体が多い。 ずんぐりした体に丸い頭部をしているが、体型が異なるものや体色が微妙に異なるものなど、外観はバリエーションに富む。 冬の間は深みでじーっとしているが、水が温むようになると、産卵のために浅場に寄ってくる。 そして4月~6月にかけての大雨の後、小川や水路、時には水田にまで入ってきて、水草やヨシの根元に卵を産み付ける。 産まれた稚魚たちは外敵が少なく餌の豊富な浅場で育ち、また深みのある川や池に戻っていく。 このように本種は成長の段階に応じてうまく住処を変えており、 池や小川から水路、田んぼまで自由に移動できるような「水辺のつながり」が必要であることがわかる。 雑食性で、下向きの口で底泥ごと吸い込み、小動物や藻類をえらでこしとって食べる。
【捕る】 「釣りはフナにはじまりフナに終わる」とか「小鮒釣りしかの川」など、本種は昔から釣りの対象とされてきた。 フナ釣りは人気が高く奥も深い。季節、時間帯、気温、天候、地形などの条件によって釣れるポイントが変化するため、そこが面白い。 エサはサシやアカムシなどを使うが、グルテンや練り餌でも良い。 水草の周りなどを探ればタモ網でも捕れるが、春先のノッコミ期に菜の花がムッとかおる岸辺で水面に糸を垂れる釣りが個人的には好きだ。
【飼う】 飼育は極めて容易。何でも食べるし水質悪化にも強く、長生きする。ただし腹を空かせていると、口に入る他の混泳魚を食べたりするので注意が必要。 エサをガツガツ食べる様子にその一端が現れているが、優しそうな顔の裏はかなり貪欲な面ももっているのだ。
【その他情報】 ギンブナは雄が極端に少なく、コイやドジョウなどのコイ科の精子の刺激でも卵は正常に発生し、雌親の形質だけを引き継いでクローン増殖する。 なお、キンギョは人間が野生のフナの仲間から好みの色や形の個体を選択して人が作り出したもので、中国のフナの血を引いているとされる。
【コメント】 本種は人が生活する身近な環境に生息するため、多くの人にとって最も馴染みのある魚のひとつではないだろうか。 私も子供の頃、魚捕りで最も遊んでもらったのが本種だった。 近所の何でも屋さんに行って小遣いでうどん玉を買い、竿をもって友達と川に向かう。 うどんは細かく切ってサナギ粉をまぶし、スレ針につけて川面を流れる玉ウキの動きに神経をとがらせた。 また、夏にはタモ網を片手にずぶ濡れになって用水路を走り回り、魚影を追いかけた。 中学生になってクラブ活動に時間を取られる頃まで、川に入ることができる季節はほぼ毎日、こんなことを繰り返した。 なんてことはない地味な魚ではあるが、私は本種を通じて、魚好き、川好き、魚捕り好きになった。

早春に捕まえた全長7cm程度の「小鮒」。 流れる水はまだ冷たく、枯れた水草の間に隠れていた。

春に捕った全長約23cm程度の個体。 陽気に誘われて岸近くの浅場に来ていたようだ。ギンブナの名の通り、銀色に輝く魚体が美しい。

同じく春に捕った全長約27cmの個体。 この個体は卵をもっているようでお腹がぷっくりしている。こんなのが簡単にタモ網に入るから、春のノッコミ期は面白い。

桜の花びらが川面を流れる、 琵琶湖につながる水路で釣った個体。全長は22cm程度。アカムシに食いついてきた。体高がぐんと高く、厚みもある立派な体つきをしていた。

雨の翌日の淀川支流で捕った個体。 大きなコイやナマズとともに群れていた。産卵のために支流に入ってきたのだろう。全長約18cmの個体で銀色がとてもきれいだった。

春の個体。全長は8cm程度。 土手に緑が戻りはじめ、田んぼの周りの比較的浅くやや濁った用水路でこんなフナが見られると、ああ春が来たのだなあと思う。

春のワンドで捕れた個体。 フナ、ドジョウ、コイ、メダカなども一緒に捕れた。まるで水田地帯の環境のようだ。

春の琵琶湖流入河川で釣った個体。 この個体は体高が比較的高くてずんぐりしている。体の後半が小さいというか急にすぼんだ感じ。

初夏の淀川支流で捕った小鮒。 岸草の中に隠れていた。

初夏の琵琶湖岸で捕った小鮒。 きれいな銀白色に何となく角張った体形をしている。何となく良く見る普通のフナっぽくない感じがする。

盛夏に捕った小鮒。 本種らしく腹側の外縁は平行的で、尻びれ基部より尾にかけて急にすぼまる。

盛夏に捕った個体。 メタリックにキラリと光るボディがギンブナだ。

夏の終わりのフナ。 全体的に丸っこい感じ。

初秋の農業水路で捕った小鮒。 豊かに実った稲穂と本種はよく似合う。

初秋に捕った個体。 背びれの付け根が長く、尻びれのそれは短いことはフナに共通した特徴。本個体は尾びれの切れ込みが浅い。体は一様に銀色でまさにギンブナといった感じか。

稲刈り前の水路で捕った全長9cmの個体。 流れがない水路のメダカの学校の下に群れで動く小鮒たちがいた。銀色の体が美しい。

全長8cmの個体。 濁った水路の深みをごっそりすくうと逃げ込んだ小鮒たちが捕れる。

豊かに実った稲穂をバックに。 濃い灰色をしているが鱗が明るく縁取られる。

秋に用水路で捕った個体。 この個体は全体的に丸い印象を受ける。

秋に釣った個体。 太陽の光を反射して美しくシルバーに輝く。まさにギンブナ。尾びれの先がピンと尖っている。琵琶湖のフナ(いわゆるヒワラ)は他と少し違う感じを受ける。

冬に捕ったやや褐色の個体。 この個体は体の割に尾びれや背びれが大きい。

冬に淀川の支流で捕まえた個体。 銀色のきれいなシルエットをしているが、ひれや体表にゴマゴマが見られるのは、川の水がきれいでない証拠かな。

冬に捕った個体。体は丸っこくて褐色が強い。

早春の個体。顔つきが少し違う。 フナはホントにバリエーションに富む。

この個体はよく見ると一様に銀色ではなく、 体の上部を中心に薄く褐色模様があることがわかる。フナではこのような個体はよく見られ、色も様々である。

秋の用水路で捕った個体。いい顔をしている。 体高がやや高いように見えるが、ギンブナらしい姿だ。

秋の淀川の汽水で捕った個体。 海水が入り込み、マハゼやボラ類が多い場所で捕れると何か変な感じだ。その他にニゴイやモツゴ、たくさんのカネヒラも捕ることができた。 汽水には意外と純淡水魚も多い。

光の加減で薄い青色に見える個体が捕れた。 ちなみに曇天だったので青空を写している訳ではい。

初夏の用水路で捕れた全長約5cmの個体。 タモロコ幼魚の群れに混ざって一緒に捕れた。 この写真では口ヒゲがあるように見えが、単に怪我をしているだけだ。

全長5cmに満たない個体。 田んぼの脇の細い用水路にドジョウやらモツゴやらメダカやらと一緒にたくさん捕れた。春はもうすぐ。

上と同時に捕った全長4cm程度の個体。 かわいい。

初夏の水田横の用水路で捕った幼魚。 全長3cm程度。こんなのがウジャウジャいた。すぐに弱ってしまうので捕れて欲しくないのにタモ網に入ってしまう。 本種にとって良好な環境がそこにはあるということなんだけど・・・。

夏の水田脇の小溝で捕れた幼魚。 全長は2cm弱でとても小さい。土用干しを前に田んぼから水路に逃げ出したのかも。

全長15cm程度の個体を真上から。 背は濃いオリーブ色で、頭部が大きく尾にかけてスーッと細くなる体形だ。

上で紹介した全長23cmの個体を真上から。 コイが鱗の縁が色濃く、線が暗色の網目模様であるのに対して、本種はその反対で、鱗の縁が明るく、線が明色の網目模様だ。

初夏に捕った全長13cmほどの個体。 本種はやや汚れたところを好むせいか、所々に出血していたり、怪我をしたりしている個体が捕れることも多い。 本個体は背びれの根元後端付近にイカリムシと思われる寄生虫が付いていて出血している。

全身に寄生虫による黒点が付いた個体 (黒点病と呼ばれる)。程度の差はあるがこのようなゴマ付きもよく捕れる。多数のゴマをもっていても生命に悪影響はないそうだ。 汚染が進んだ所に多いようにも感じるが、比較的きれいな川でも捕れることがある。

フナは変異が多くて悩ましい。 例えばこんな個体を見ると何だかわからない。下あごが角張っている感じニゴロブナっぽく、体色は金色でオオキンブナ?、 背びれ分岐軟条数は18本でギンブナの範囲にも含まれる。・・・この子はいったい誰?

春の小鮒たち。春にもフナはよく似合う。

琵琶湖岸近くで捕れた大きな個体。 全長は30cmを優に超える。こんな大きな個体はこの辺では琵琶湖ならでは。まるでコイのように見える。

梅雨時期に水田脇の水路で捕まえた個体。 産卵のため琵琶湖から遡上してきたようだ。こんなデカイ個体までも遡上してくるんだから琵琶湖ってすげーっ!

春、追星の出たギンブナを見つけた。 ほほ、えらぶた、胸びれ前縁に白いブツブツが見られる。 これは繁殖期を迎えた雄の特徴で、雄が極端に少ない女系一族ギンブナの世界では珍しい存在だ。

土用干しに田んぼに取り残されたフナ。 まだ生きていた。春に田んぼで生まれ育ったフナは豊富なプランクトンを餌に成長する。 土用干しの際、ほとんどの個体は本能なのか用水路に逃げ込むが、うまく逃げ込めなかった個体は干上がってしまうか鳥に食べられてしまう。

冬の用水路の底に沈んでいた長靴を ひっくり返すと、こんなにも多くの魚が入っていてびっくり。タモロコ、ヤリタナゴなどとともに多くのフナ、フナ、フナ。

last modified:2018/4/17
created:2012/1/7

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