Information

HOME > Information » お知らせ > 第31回サイエンスカフェ「聞いてみよう!─食べて安全?植物がつくる化学物質─」開催報告

お知らせ

第31回サイエンスカフェ「聞いてみよう!─食べて安全?植物がつくる化学物質─」開催報告

掲載日: 2018年4月2日

話題提供者の浅見さん

話題提供者の浅見さん

2017年12月12日(火)食の安全研究センター第31回サイエンスカフェ「聞いてみよう!─食べて安全?植物がつくる化学物質─ 」が開催されました。東京大学大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻教授 浅見忠男さんより、植物が自らを守るためにつくりだす様々な化学物質、私たちが気づかずに日々食材として口にしているそうした物質は果たして安全なのか、科学的見地からデータをもとに紹介。安全とは、リスクとはについて、考え方を共有し、改めて安全・安心な食べ方等について語り合いました。

○第31回サイエンスカフェ配布資料(pdf)
(クリックすると開きます)
※以下、記載がない場合の発言は浅見氏のもの
※質疑応答は一部抜粋

安心? それとも安全?

      「食べて安心?植物がつくる化学物質」というテーマなんですが、本当に安心なんだろうかと
      いうことを、サイエンスカフェですので、ちょっと科学的に、まずは「安心って何?」という
      ところから入ってみたい。
  • 植物は、光合成で絶えず取り込んで、いっぱい化学物質をつくるんですね。デンプンから何から。人間とは違って本当にいろんな化合物をつくります。その中には時々毒性のあるものもあります。今日はそういうものを食べて安心なのか、特に皆さんが普段食べているものを対象にして、話題提供をしていきたい。
  • 植物の一生に関わる植物ホルモンは物質で、オーキシン、ジベレリンなど、聞いたことあるかもしれません。その中には実は日本人が見つけた植物ホルモンがいっぱいあるんですね。赤い字で書いてあるのが日本人が初めて植物ホルモンだと発見したもので、うちの研究室の出身者とか先輩が見つけたものです。私も新しいホルモンを見つけようと思って、植物ホルモンの研究を一生懸命やっております。
  • これらの植物ホルモンは、皆さんが食べている野菜にみんな入ってるんです。中には発がん性なんて言われたものもあるんですけど。そういうのも、順を追ってお話しします。さて化合物嫌いな方のために、植物ホルモン擬人化サイトを紹介します。うちの研究室とは縁もゆかりもないんですけど。なぜかアブシシン酸、オーキシンさんとか、みんな女の子になっていて、オーキシンは中心的な役割をしているというので、オーキシンさんがクラス委員長なんですね。サイトの中には漫画もありますので、興味があったら植物ホルモン擬人化サイトに行っていただくと植物ホルモンに親しみが持てるかもしれません。
  • 今回もこれだけお集まりなので心配されているのかなと思いますが、食事に含まれる植物がつくる化学物質です。まず、「化学物質」という言い方がちょっと怖そうですが、食べても安心だという人いますか。逆に含まれる植物がつくる化学物質を食べるのは不安だという人は。不安な人は、1 人ですか。他の人は、もうみんな安心して食べているんですね。
  • 科学では安全という言葉を使わないといけない。安心と混同しないように。そして安全というのは科学的に評価できるものなんですね。安心という場合は、本当は安全じゃないかもしれないという可能性もあるわけです。実は安心ということのほうが人間生活する上で非常に重要です。安心は安全という知識の上に多分乗っていると思うんですね。牧草地での牧草の生産は、今の時期、すでに播種が終わっています。福島第一原子力発電所の事故の前の2010年秋に播種が終わったあと、明けた2011年に原子力発電所事故が発生しました。牧草がある程度伸びたところに放射性物質が落ちてきたわけなんです。

安全性と危険性は裏返し。高いか低いかを考える

      化学物質についても、安全の上に安心があるわけですが、逆に言うと、安全じゃないのに安
      心と思っていることもいっぱいあるんです。だからこそ、ここで科学的な考え方をしようとい
      うことです。ここで「リスク」について考えましょう。近頃よく使う言葉です。
  • 一般的にリスクというのは、これが危ないっていう意味じゃないんですね。温度のようなもので、熱いと冷たい、ちょうど人間にとっていい温度がありますけども、冷た過ぎても、熱過ぎてもまずい。リスクは低ければ低いほどいいですけど、リスクという言葉の意味は危険性ですから、低いほうがいい。反対は危険性が高い、となる。
  • 逆に、安全性という言葉はどうか。安全のような気がしますけど、やはり安全性も高いか低いかですね。安全性が低いということはリスクが高い。安全性が高いっていうことはリスクが低い。だから「リスクがある」というのは危ないという意味ではなくて、その危険度、その可能性について考える、そういう安全・危険の程度の具合を考える物差しみたいなものです。リスクがある、安全性があるではなく、高いか低いかであると。今日はリスクという言葉がよく出てきますが、だからといって、リスク=怖いというふうには思わないでください。
関崎

なるほど。安全性と危険性は裏返しのものだと。

浅見

熱い、冷たいと同じような関係にあるわけです。さて、「食べて安全か」について今日は簡単にご紹介します。多くの要素を持ち出すと複雑になるんで、主に急性毒性、食べて、「うう、苦しい」などと映画などで、ばったり死んだりしますけれども、食べて毒か、そうでないかについて、そして、後半に発がん性にも少し触れたいと思います。

  • 毒性学というのは、動物または植物に由来する天然毒、医薬品、農薬などの人工的化合物や
    放射線などの有害性について研究することです。放射線は今日はおきますが、中でも、天然毒、
    医薬品、農薬などについて、安心か、不安かではない、安全性について科学的に考えてみましょう。
  • 安全性を科学的に考えるには、リスクの大きさを算定する必要があります。先ほど、リスク
    は高い、低いで考える、と言いました。化学物質、化合物が持ってる毒性、急性毒性については、曝露量、摂取量、つまり取った量を掛け算した値の大小で表します。正式に言うと掛け算でもないんですが、端的な数字で表すと曝露量、摂取量を考えるということです。
  • 例えばフグが持つテトロドトキシン。これは猛毒です。青酸カリの1000 倍ぐらい強い毒です。そこに、フグなんて食べたくないという人がいて、食べなかったとすると、テトロドトキシンの曝露の機会がない。フグの持つテトロドトキシンは毒性という意味では高い、リスクではなく毒性は強いですね。でも、曝露の機会はない。そうするとテトロドトキシンの中毒のリスクについては、食べなきゃ死なない、毒も体に入らない、リスクは低いと言えます。単純化して話していますが、こういう考え方ができます。これが先ほど言った曝露量との関係ですね。毒性というのは、テトロドトキシンならテトロドトキシンを取る量によって、ものすごく少ない量だったら全然問題ないということかもしれない。
関崎

薄めて、薄めて、薄めて薄めれば大丈夫かもしれないと。

浅見

これがリスクを測るということです。では、もうこれで食べて安全でしょうか。実は、植物の化学物質も、安全とも危険とも言えるわけです。なぜなら、魚がつくるフグの毒も安全とも危険とも言えるわけですから。要するに体の中に入れる量の問題なんですね。

  • 量が問題であるならば、安全を確保する情報について、正確な知識を持っていただかないといけない。フグの毒だとすごく強いから、怖い、怖いと意識する。でも、毒性が弱いものだとだんだんグレーゾーンになってくる。世の中そういう物質が実は植物中にも山ほどあります。だから、正確な情報を持つことが重要なんです。

  
                

毒性はどうやって決めるの?

      急性毒性ということですが、では誰が毒や毒性を決めるのか。化学物質の毒性は、毒性試験
      で決めます。人体実験を行うことはできません。本当は動物試験も反対者はいっぱいいますけ
      れども、実質はマウスとかラットを使ってやることが多いです。実験動物を用いて、ある数字
      まで増やすと、あ、ネズミ死んじゃった、というような試験になります。
関崎

その急性毒性っていうのは、死んじゃう量ということなの。

浅見

なかなか実際は死んじゃうまではあげないです。図で説明します。縦軸と横軸、死亡率と薬の量です。薬の量が、だんだん増えていくと、途中までは大丈夫ですけど、途中あるところから死ぬものが現れた。普通は角度とか形は違うんですけども、量に比例して危険度は高くなる。さっきの「リスクが高くなる」と、同じですね。牧草は通常5月中旬ぐらいになったら刈り取ります。2011年も同様で、この年は汚染したものを刈り取ってもらって、回転して、乾燥して、このロールベールラップをつくったわけです。通常はラッピングした牧草は1カ月ぐらい置いておいたら中で発酵するんです。乳酸発酵です。一度発酵してしまえば、2年間保存がききます。そうして安定した栄養分を継続して家畜に与えることが可能なので、いつもこうした生産システムを取っているわけなんです。

  • ここは覚えてください。投与した動物の半数が死亡する薬量LD50(Lethal Dose, 50%=半数致死量)です。mg/kg。mg(ミリグラム)はg(グラム)の1000 分の1 の単位です。1mg、目に見えます。皆さん、毒物、劇物とか聞いたことがあるかもしれないですけど、これには定義があります。毒物の定義は50mg/kg 以下の物質と。体重60kgの人が食べると3g。1kg 当たりですから、例えばマウスとかは体重が150gぐらいですからね。
関崎

これは半分が死ぬ量ですから、数字が少ないほど少量で死んじゃうということですよね。

浅見

そうです。ちょっと食べただけで死んじゃいます。劇物は300 mg/kg。なんか怖そうですね。このようにして、量が決まっています。今はこれは法律で決まっているんですね。

関崎

これより多い値のものは、普通のものということ。劇でも毒でもない。

浅見

はい。ただし、医薬品とか農薬とか、人工の添加物では、ですね。

関崎

つまり、このLD50で測れないものもあるんですか。

浅見

他の規制がかかっているものがあります。LD50 がこれより小さくても。

関崎

このLD50は基本なんですね。

浅見

:そうです。これより小さくても、いろいろ規制はかかっていて、特に人工の化合物はすごく規制が厳しい。一方、天然物だと同じような数字でも全然OKみたいな感じ。それで、気にせずどんどん食べている。毒も食べているかもしれない。医薬、農薬、食品添加物、この辺以下の小さい数字でも、皆さんすごく心配されますけど、不思議と植物に含まれていると、全く気にされないですよね。私、コーラも飲んでいますけど、そこにもこの辺の化合物がいっぱい入っています。

  • 資料に書いてあるのは、まず代表的物質の急性毒性。これも先ほどお話しした半分が死んで
    しまう量です。小さければ小さいほど危ない。例えばフグ毒、青酸カリ。
関崎

随分差がありますね。

浅見

これは、もう1000倍違う。だから、フグの毒がいかに強いか分かると思います。青酸カリは10mgですから、60倍して体重60kgの人にすると600mgです。1gない量で半分の人は死んでしまう。この数字は試験によって、ちょっとばらつきがありますが、桁はあまり変わらないと思ってください。大体この辺がよく使われる殺虫剤です。これは普通物なんですけども、MEP 有機リン系殺虫剤、330mg、まあ、毒なのかな。

関崎

有機リン系殺虫剤っていうのは、いかにも毒っぽい感じがしますね。

浅見

毒入り餃子の事件がありましたけど、あの農薬は有機リン系殺虫剤でした。しかも、もう今や中国でも使わない、日本ではもう規制されている農薬だったんです。毒性がさらに強い。10倍までは行かないですが、数字的には数倍しか変わらない。このことは逆に心配になるかもしれないですが、あとで大丈夫なんですよという説明をします。しかし、あの事件のように意図的に入れちゃうのは想定外なので、かなり危ないです。

  • アレスリンは、噴霧式のシューッとまくスプレー殺虫剤に入っています。これには、2つの成分が混じっています。これも880mg。スプレーの缶の中にはガスと一緒に有機溶剤が入っているんですけど、そこに0.5 %ぐらい入っています。だから、500cc の0.5 %、2.5g ぐらいですか。そんなものがいっぱい入っていて、ちょっと心配になりますね。
関崎

でも、全部使っちゃうぐらいじゃないとここまで行かないですよね。

浅見

シューッとやるのは数10mgぐらいですから大丈夫ですけどね。次にあるのは、アスピリン。これは、皆さん、パクッと飲んじゃってますよね。頭が痛いときに飲む頭痛薬です。アスピリンは1,000mg/kg、アレスリン等といい勝負ですね。有機リン系殺虫剤のたかだか3 倍じゃないですか。皆さん、これ多分何の疑問も持たずに飲まれていますが。

関崎

頭痛のときは飲まないとね。

浅見

でも、逆に命を縮めてるかもしれません。

関崎

だから用法、用量を守ってと言うんですね。

浅見

そういうことです。仮にバファリンを1瓶飲むとかなりまずいことになると思います。でも、農薬、医薬等には規制があるんですね。青酸カリもそうです。それで人が亡くなったりすると、すごい新聞沙汰になったりしますよね。フグ毒も調理師免許を持っていないといけないというふうに、ちゃんと規制されています。

  • 規制がないもの、われわれがよく食べているものについてはどうか。ビタミンAなんてアスピリンなどと比べるとちょっと値は大きめですけど、でも、殺虫剤成分のフタルスリンと同じ程度です。それからアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム。これは家庭用中性洗剤。例えば家庭用洗剤をコップ1 杯、ごくごくごくって飲むと、もうお亡くなりに……。
関崎

具合悪くなるどころじゃなく、お亡くなりぐらいまで行っちゃいますね。

浅見

体重60kgの人に換算すると120gが半数致死量です。コップ半分ぐらいですね。

  • 食塩はどうか。今の2つとあまり変わりませんね。60kgの人なら180gまあ、そこまで摂取することもなかなかないと思いますが。砂糖、これはかなりきつい。30g かける60 だと1.8kg。
関崎

1.8kg の砂糖というのはちょっと無理ですね。

浅見

アルコール、7,000mg。ビールは約5%ですからコップ2杯飲むと400ccで、20g入ってます。全然皆さん気にしないですよね。ところが、さっき言った殺虫剤では2.5g、ビールのほうは皆さん喜んで飲んでいる。殺虫剤のほうはちょっとのことで大騒ぎするのにね。私はこれが毒性がさほどないと知っているのでシューっとまいています。妻はすごく嫌がりますが、安全ですといつも言っています。むしろ酒を控えたほうがいいかもしれない。

  • 私ね、別に酒嫌いじゃないですけど、結構いつも憎んでいるかのような言い方をします。酒はいいことは1つもない。酒は発がん性もある。毒性も高い、酔っ払い運転は危険だし、中毒性もある、何もいいことはないです。これが今発明されところだったら、国は、こんな飲み物絶対許可してませんよ。ただ単に伝統的に飲んでいる。そういう側面が強いですね。伝統的に消費者が良しとすると、毒でもいいってことになっているんです。

【規制がなければ安全なのか】

      ここまででちょっと毒のイメージが湧いてきたかもしれません。では、規制のないものは安全でしょうか。例えばさっき言った、砂糖1kg とか。水10〜20L、こんなに飲めないですよね。でも、アメリカ人はよくバケツ1杯のアイスクリーム食べちゃうという人もいるけど、かなり危ないんじゃないかと思います。さっき塩なら180gと言いましたけど、どうですかね。

        

  • これを、もう少し分かりやすいように換算してみました。殺虫剤でよく使われるのは、リン系の殺虫剤。それは、分解しやすいからなんですけども。分解するとリン酸になっちゃうんです。
関崎

リン酸はまったく大丈夫なんですね。

浅見

かえって肥料になるぐらいで。25m 四方のレタス畑で全部のレタスにかかったとして、これをそのまま全部食べたとしたらその量というのが半分死ぬ量。けれども市場に出てくる時は、サーッと分解して出てきます。洗ったりすると、ほとんど気にすることはない。

  • 一方しょうゆコップ6杯。しょうゆに換算したお塩の量ですね。ウイスキー1.5本、これはあそうですね。学生が急性アルコール中毒とか。これらも半分致死量です。
  • また、毒は嫌だと言いながら、誰でも毎日空気中の一酸化炭素を吸ってます。あと、水銀も空気中にはいっぱいあって、ふわふわ飛んでいます。でも一酸化炭素は致死量は1,500ppmぐらい出ても全然余裕があるんで、もちろんOKなんですけども。もし空気中で濃度が高かったら人間は生きていないと思います。
  • 毒のイメージとして、昔から言われているような、しょうゆ一升瓶飲むと死ぬよとか、学生の急性アルコール中毒、一気飲みしたら死んじゃう等の話も、納得できる数字かなと思います。ここまで一通りご紹介したようなことが、現在の毒性の基準です。今までみんなが安全と思ってたものとか、安全でないと思ってたものもひっくるめて、特に急性経口毒性については、基準としてはこのようにして決められています。
  • ここで植物のほうを見てみましょう。割と有名なほうから、これはウメ。若いうちは青酸が入ってて苦い。青いウメです。危ないんじゃないかというのは有名ですね。これは梅干しにしちゃえば安心ですよ。じゃあ、実際何がいけないのか。実はこういうC≡Nが付いた物質、これC≡N が青酸カリとかシアン化物で危ないですね。これは、酵素でC≡N が出てくるんですね。
関崎

青酸カリにも同じものがあるんですね。

浅見

そう。青酸カリ、シアン化カリウム(KCN)っていうのは同じ成分。ですがLD50 では、405mg/kg、大人300 個、子どもで100 個ぐらい青いウメのまま食べちゃうとちょっとまずいんじゃないかと。300 個をかりかり。でも、世の中そういうことをやる人はいるんですよ。

関崎

聞いたことがあります。戦後すぐの頃で食べる物がなかった時に子どもが木になっている青ウメの実を取ってきて、かりかりと半日くらい食べて具合悪くなったというような話。

浅見

:だから、皆さんこの辺はそんなに気を付ける必要もないかなと。

関崎

そこまでふつう食べないですから。じゃあ、1 個とか2 個なら食べてもいいわけですね。

浅見

やめたほうがいいかも。まあ、うちの子も食べちゃったけど、そんなに何もなかったです。大騒ぎしなくても、一口食べたぐらいだったら全然平気。おいしくないと思いますし。

ジャガイモに含まれる有毒成分とは

      過去50年間のわが国の高等植物による食中毒事例の傾向です。患者数918、幸い死亡者はいないんですけど。ジャガイモ、これは有名ですね。時々新聞に載ります。私も毒性の面から言ったらジャガイモは禁止食品にすべきだと常々言っているんですけども。実は安心なんです。ジャガイモの中毒原因物質っていうのは、構造がちょっと長いのが特徴の、有名なソラニンですね。一般的にはグリコアルカロイドと言われているものです。トマトに含まれているトマチン、これもグリコアルカロイド。大体どのぐらいかというと、ここでの数字は中毒量で、LD50とはちょっと違うんですけども、成人で2.8mg/kgで、マウスの経口だと500mg/kgで、まあ、どうということはない。ただ、ウメと違ってジャガイモのほうが食べやすい。
  • ジャガイモの毒は皮にかなり局在、偏在してしまう特徴があります。そして芽。特に芽になると余計また増えます。これは大体1〜3mg/kg、人間が60kgだと180mgで症状が出る。60掛ける360mgで死亡する可能性あり。実際の量は、100g未満のジャガイモ、100g以上のジャガイモ、そして平均で示されていますが、メークインには50mg/kg 含まれています。
関崎

さっきまでのものからすると、随分数字が小さいですよね。危ないですね。

浅見

危ないんです。換算すると、体重60kgの人が180mg摂取すると危ない。さっきの症状が出る可能性のところで言ってますが。メークインだとちょっと気持ち悪いなと。メークインは男爵よりもちょっと多いんですね。あ、資料のジャガイモ400gというのは計算間違っていますね。皮ごと食べた場合は、3kg です。ジャガイモ30個。もし皮だけむいて、私は料理名人だから無駄なく食べようと言って皮だけ食べさせると、30個の皮だけの量は大したことないですから食べられちゃう。ソラニンの量はずっと危ないことになります。皮付きのまま調理したりすることもありますが、ただ3kgということからすれば、普通はいっぱい食べても1kgぐらいですから。ただ、ジャガイモの皮が好きな人は影響あるかもしれない。

参加者

その毒性は、料理しても変わらないんですか。

浅見

基本的には変わらないですね。ただ、酢酸、お酢と一緒にぐつぐつ煮たりすると、この辺の構造が切れるかもしれません。

関崎

酸っぱいスープでぐつぐつ煮れば分解すると。普通の中性のもの、普通に考えられる調理だったら、まだ毒は残ったままだと。すると、芽のところなどは……。

浅見

これは芽が出てるっていうことを想定していない数字なので、芽を出すともっと危険になります。皮ごとホイルにくるんで焼いて、バターを乗せて食べるのも皮は食べないもんね。

関崎

皮は残したほうがいいんですね。

浅見

1 個くらいは大丈夫ですよ。リスクという言葉、あれは高いか低いか。掛け算ですから。

関崎

皮付いたまま切って油で揚げて食べる、あれも皮を、こう削いで食べればいい。

浅見さんに質問する関崎さんの写真

ファシリテーターは関崎さん

浅見

日常食べる量なら大丈夫。でも、他の化学物質と比べると、そういう天然物はいかに甘やかされて育ってるか、ぬくぬくしてるかっていうのが、後で出てきます。これは去年のもの。ジャガイモの食中毒、9割は学校菜園です。ジャガイモを植えて、だんだん育ってくると土から露出してイモが光を浴びてしまいます。日光に当たってしまった緑色のジャガイモのほうが毒が強いですね。だから、ちゃんとしっかり土をかぶせましょうというのが、小学校や家庭菜園の人に向けたこの案内ですね。

関崎

緑色だったら、本当に剥いちゃわないと危ない。

浅見

危ないと思います。というのは、これは毎年こんだけ騒がれてるほど多いから。

ギンナン、トリカブト、スイセン

      ギンナンにも毒が含まれています。ギンコトキシンなんて書いてありますけど、毒だ毒だっ
      て言われていますけど、さっきのウメと同じぐらいで、まあ、そんなに毒ではないと。割と季
      節ものだし、茶わん蒸しに1個入ってるくらいならいいけど、でも、30個とか食べると、どう
      でしょう。
関崎

これだけつまみにしてぽりぽり食べちゃったりすると。

浅見

人によって感受性とか違いますけど、何十個とか食べると中毒症状を出す人はいると思いますね。でも、普通に食べている分には大丈夫です。

  • あと、こんなもん食べる人はいませんよね、トリカブト。この毒は有名です。栽培してるだけでまずいです。いくつか見て、植物はやっぱり結構毒つくるんだなというのがわかりますね。トリカブトみたいにめったに見ないものから、イチョウ、ウメ、そして、そこまで食べないよなっていうものからジャガイモみたいなものまである。ちょっと危ないなと。
  • 次のものは、2016 年人が亡くなっちゃったんですよね。これも栽培を中止したほうがいいんじゃないかって、訴えたほうがいいんじゃない?
関崎

毎年春先に起こりますよね。

浅見

スイセンの葉、ニラの葉。2 つはよく似てる。うちにも両方生えてるんですけど。

関崎

よく見れば違いますよね。

浅見

においも全然違うし、ニラのほうが細いです。でも、結構間違えてしまうんですね。2017年のニュースもあります。豊野高等専修学校でニラとスイセンを間違えて食べて、気持ち悪くなっちゃったと、調理実習で。気をつけようということですが、実はニラも結構毒が入ってるんですけども。

関崎

ニラもあるんですね。毒のない植物はあるんですかって逆に聞きたくなるぐらい。

浅見

というか、ほとんどは毒なんですけど、その中でも毒性の低いものを選んで野菜にして食べてると言ったほうがいいと思います。特に庭に咲いている花とかは、ほとんどが毒を含んでいて、だから、彩でちょっと食べるのはいいんですが。

関崎

じゃあ、そういう庭の花とか葉とかをうかつにムシャムシャ食べちゃいけないですね。菊の花を食べたりとかあるじゃないですか。

浅見

>菊の花も何十個も食べないほうがいいと思います。花びらとか葉とか。彩や風味で、ちょっと食べるぐらいはいいと思いますけど。

  • この縦長の化合物なんですけども。これは去年男性が亡くなりました。スイセンに含まれているのはガランタミンという化合物なんです。マウスでLD50 が25mg/kg。ずいぶん低いです。もう毒物指定の域です。殺虫剤と同じで猛毒で、先ほどもう使用が禁止になったジクロルボスと言いましたけど、それと同じ作用です。ジクロルボスはこれは劇物指定なんですけども。だから、世の中からスイセン全部引っこ抜いたほうがいいんじゃないかと思うんですけど。そうすると、ほかのいろんな植物も植えられなくなりますもんね。
  • 知識とか情報が必要ですよと言ったのは、こんなふうにスイセンみたいなものを食べないでください、こういう毒が入ってますといったことなんです。ただし、さっき計算してみたんですけど、この男性はスイセンをどう見ても1kg 以上は食べてますね。鍋だからひたひたになるので食べれちゃうんですね。含まれている含量からすると、そんなに多くはないんです。例えばスイセン1 本や2 本食べても大変だなんていうことはないんですけども。
関崎

じゃあ、間違ってちょっと食べたとしても、ちょっとならば慌てなくてよいと。

浅見

ウメもギンナンもスイセンもそうです。トリカブトはちょっと違うかもしれないけど。これは対症療法の薬もありますから、まあ、大丈夫。ヒガンバナは食べないですけど、ヒガンバナにも同じようなものがあってよく言われるように、やはり毒が含まれています。

  • 厚生労働省のホームページに行くと、いろんな毒のある食べてはいけない植物等をたくさん掲載した一覧表もあります。毒があるのは知っていましたが、私も今回勉強して初めてこういうページがあるのを知りました。もし、食べていいのか分かんなかったら、食べなければいいんですけど、分かんないんだけどどうしても食べたいっていう場合は、こういうサイトを見て、ちゃんと調べたほうがいいと思います。

さらに身近なタマネギ、ヒジキ、ダイズ、カツオ節……

      大部分の方にとって、ウメとかイチョウとかは特別な話でしょう。都会では見掛けるものもありますけど、トリカブトとか間違えたりしないし、注意していれば大丈夫だと皆さんお考えかと思います。でも、さっきジャガイモの例を挙げました。ジャガイモが出るということは、まだ何か隠し玉を持っているんじゃないか。他のよく口にする植物にも毒が含まれるんじゃないかとお思いでしょう。そのとおり。おおよそ皆さんが口にされるレタス、キャベツなど、正直言うとみんな毒だらけなんです。まあ、それは量がかなり少ないからいいんですけど。
  • では、もうちょっと身近な毒についてお話しします。有名な、猫とタマネギの話です。毒は実験動物を使って毒性を測っていますと言いました。皆さん、猫にタマネギを食べさせるなって言いますよね。猫が死んじゃうよとか、血出しちゃう、血尿出しちゃうよと。大体これ、60 〜 100g、大さじ4 杯ぐらいの量です。生は食べないから炒める。炒めちゃうと猫も食べちゃう可能性があります。すると、猫は死んじゃいます。
  • 人間も、タマネギを食べて血液さらさらと言いますけれど、さらさらが行き過ぎると赤血球壊れちゃうんですね。大きなボールで、タマネギを、うまい、うまいなんと言って1杯も2杯も食べちゃうと、まずおしっこが赤くなります。さらさらが過ぎて溶けちゃうんです。催涙性もありますよね。動物が好きで、猫が好き、猫が危ないというのに、なんで皆さんタマネギ食べるんでしょう。
関崎

切っている時に、ぽろぽろ涙が出ます。

浅見

:明らかに毒じゃないですか、タマネギ。猫に食わしちゃいけない。やっぱりジャガイモもタマネギも規制すべきじゃないかと。

関崎

するとカレーが作れなくなりますね。

  • タマネギについて、これは書いている方の本から持ってきたのですが、「天然食品は安全なのか?」と。タマネギの毒性というものを動物試験でLD50などを出しています。食品添加物や農薬と同じ基準に当てはめると、カレー1皿に許容される量は0.016g。皆さん、もし農薬がこれだけの量入っていたら、大騒ぎですよね。でも、それどころか、実際はこの1,000倍ぐらいのものをタマネギで食べているんですよね。0.016g は、みじん切りにしたひとかけより少ないじゃないですか。催涙性もある。サラダで、0.008g、炒めるとちょっと少なくなるってことですかね。
  • ここにジャガイモがあります。ジャガイモの毒性が、もし残留農薬だったなら、基準値以上
    で全て回収です。でも、ソラニンが含まれているから回収したジャガイモって聞いたことな
    いですね。また、イギリスではヒジキは危険物です。ヒ素が結構入っていて。これについては、
    日本の食品安全委員会でも明解に答えを出していないですね。みんな食べてるんだからしよ
    うがないじゃないって。今まで食べてるから大丈夫と。でもイギリスでは危険物で
  • 最近テレビでやってました、和食が広がってるフランスでもカツオ節は輸出できません。発がん物質のベンツピレンが入っているので、フランスは輸入を許してくれません。だからカツオ節をフランスで作ろうという動きがあるぐらいですね。また、大豆、イソフラボンを環境ホルモンだとして疑問視する国は多いです。
  • コーヒー、タバコ、お酒も毒?

        どうも植物にもいっぱい毒があるなと、お分かりいただけたかと思います。では、皆さんの身近にあるカフェイン。これは、コーヒーの成分ですね。エナジードリンクを飲み過ぎて亡くなった人がいたとニュースで聞いたことがありましたが、カフェインのLD50 は200mg/kg です。殺虫剤より小さいですよね。だから亡くなっちゃう人がいるんでしょうか。あと、カプサイシン、唐辛子大好きな人いますね。これはもう毒物に近い劇物ですね。
    関崎

    猛毒じゃないですか。

    浅見

    はい。あと、これは食べる人いないと思いますけどタバコのニコチン。これはかなりな神経毒です。神経の受容体に、ボコッとくっついてしまう。赤ちゃんだと数本分の煙草の水溶液で死んじゃうんです。だから、よく空き缶に水入れて灰皿にしてタバコの吸い殻を入れたりしますけど、あれは赤ちゃんが飲むと死んじゃいます。危ないんです。そういう意味で、身の回りで一番あるということでは、ニコチン、カフェインが代表かもしれません。

    • アドレナリン、これは体の中でもつくっていますが、経口最少致死量30mg/kg。人間の体でつくっているものも毒なのかと思われるでしょう。この量は体外から与えた場合の数字ですけども。では、カフェイン、これはどのくらい摂取してもいいイメージなんでしょうか。
    関崎

    150杯ですか。

    浅見

    コーヒー150杯。こんなには飲みませんよね。ただし、これは半数致死量です。国は規制はしてないですけど大体コーヒーは4 〜5杯にしてくださいと言っています。それ以上は影響が出ますと。妊婦の人は2 〜 3 杯にしてくださいと、厚生労働省のホームページにはしっかりと書いてあります。知っていましたか。今日はサイエンスカフェでコーヒーをどうぞと言っていますけれど、私は嫌です。(笑)コーラを飲んだんですけど、コーラにも5 分の1ぐらいカフェインが入ってます。

    • カプサイシン。これはちょっと心配かなって思うんですけども、大丈夫です。半分致死量は12kg ですから。一度にそれだけは食べないし、その前に辛さの刺激で死んじゃうかもしれない。この12kg はさっき出たLD50 の数字を具体化したものですね。
    身近な食品の「毒性」の話に熱心に聞き入る参加者の写真

    身近な食品の「毒性」の話に熱い注目が集まります

    参加者

    「一度に」という言葉が出ました。年間どれだけという計算もされてるんでしょうか。

    浅見

    ADI(acceptable daily intake= 1日当たりの許容摂取量)というのが、今度は一生涯食べ続けた量ということなので、年間どれだけにもなりますが、みんなが普段飲んでいるものを、ADIでカフェインを決めることはわざわざしないんですね。ADIを決めちゃうと1日飲んでいいコーヒーって0.1 杯ぐらいになっちゃうんです。

    関崎

    ADI は、それだけの量を一生飲み続けても大丈夫という理論ですよね。

    浅見

    一生涯飲み続けて全く何の影響も出ない数字。だって、3 〜4杯飲んだら影響出るって言ってるのに、ADI は一生涯だからもっと小さくなるはずなんですけど。コーヒー業界が怒るじゃないですか。皆さんだって反対する。危険を冒してでもコーヒーを飲みたいって言うに決まっているんですから。会場の皆さんもこの話を聞いた後もコーヒー飲み続けますよね。ADIを
    取るにもお金がかかります。だからコーヒーみたいなものについては、わざわざ取らないんです。その代わり、新たに登録するような農薬とか医薬とか食品添加物に関しては、必ず取るようにしているわけです。

    関崎

    昔から習慣的に食べたり飲んだりしてるものは、そのような扱いなんですね。

    浅見

    化学物質という点では何の変わりもないんだけど、扱いでは大きな違いがあります。しかし、科学的に見ると同じ毒なんですよ。

    関崎

    変な感じがしますね

    浅見

    そうなんです。昔から食べているんだからとか言って。とはいうものの、日本人がジャガイモ食べ出したのはつい最近ですし、コーヒーもつい最近です。

    関崎

    コロンブスがいなければ食べられなかったのに。

    浅見

    カフェインに関してはお茶にも含まれます。お茶のカフェインはコーヒーの3分の1ぐらいです。だから、昔から食べているとも言えますが、通常そういうものはADI を決めないです。

    参加者

    それぞれ単品として毒性のお話を伺いましたが、例えば複合的に相互作用して毒性が上がることはないんでしょうか。例えば、お酒を飲みながらギンナンをつまんで、フライドポテトを食べるとか、普通の生活では複合的に摂ることになると思いますけど。

    浅見

    そういうのはADIを取るのは難しくて、基本的には単品で測られます。経験的にこれとこれを合わせたら卒倒したことがあるとか、そういう事例がない限りは食べ合わせしちゃうと思うんです。毎日普通に食べているものについて、ネズミを一生飼い続けて、いろんな濃度で測定するというのは、誰も得しない。例えばソラニンとかコーヒーとかで測っても、誰も喜びようがない。基本的にはやりません。ただし、誰か深刻な影響が出たという事例があって、国が危ないと思ったときはやるかもしれません。

    関崎

    でも、今日の浅見さんの話を聞いたら、連想しながら食べたり飲んだりしちゃいますね。これも入ってる、あれも入ってるって。

    参加者

    毎日複合毒の生活してるような気がしますけど。

    浅見

    本当は実際よりはもっと少なく、減らして食べたほうがいいのかもしれないです。

    参加者

    減らしてですか。

    浅見

    増やしていいことはないと思います。複合的な作用を気にするんでしたら。

    • さっきからお酒の悪口を言っているんですけど、多分これを見てもお酒をやめる人はいないと思うんです。アルコール飲料は急性毒性のほうがデータが多いんで急性毒性で説明しましたが、発がん性の物質もいろいろあります。

    【続きは後日掲載いたします。お楽しみに。】

PageTop

Original text