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【社説】

同性愛の暴露 尊厳傷つけぬ配慮を

 同級生に「同性愛者だ」と暴露され、心身に不調をきたし、校舎から転落死した-。遺族が大学側を相手にした訴訟は敗訴した。だが、もはや性的問題などでの差別や不当な暴露は許されぬ時代だ。

 LGBT(性的マイノリティー)への差別を禁ずる条例は、全国各地で広がりをみせている。二〇〇二年には堺市で全国で初めてつくられた。

 東京では一三年に文京区や多摩市で。同性カップルなどをパートナーとして公的に認める「パートナーシップ制度」は世田谷区や渋谷区でも生まれた。

 昨年には国立市で「女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」が施行された。性的指向(恋愛対象の性)などによる差別を禁じている。同時に他人が本人の意に反し暴露(アウティング)することも禁じる内容である。

 背景がある。国立市内の一橋大で一五年、法科大学院生が同級生に「おまえがゲイであることを隠しておくのムリだ」と、無料通信アプリ「LINE」のグループに実名入りで暴露された。学生は直後から心身不調に。二カ月後には授業中にパニック発作を起こし、学内の保健センターで休養後に六階の校舎から転落死した。

 遺族と同級生とは和解が成立したが、二十七日に東京地裁で大学に損害賠償を求めた訴訟の判決があった。大学がセクハラ対策を怠ったほか、ハラスメント相談室の担当者が学生と面談して状況を把握しているのに、適切な対応をしなかったとの遺族の主張だった。

 判決理由はこうだ。「安全配慮義務違反により、アウティングが発生したとはいえない」「(死の当日は)体調不良の可能性や認識は予見できても、自殺など本人も制御不能な行動に出る危険までは予見できない」と-。

 遺族敗訴でも、社会への大きな問題提起となったと考える。同性愛は本人のプライバシーの問題であり、勝手に他人に暴露される理由などありえない。暴露されれば、誰かに嫌悪されたり、差別されたりする恐怖を持つ恐れもあろう。いわれなき攻撃の対象となるかもしれない。

 だから、大学であれ、職場であれ、個人の尊厳を前提にとらえねばならない。守秘義務のある専門の相談窓口の設置なども必要であろう。アウティングは、セクシュアルハラスメントでもある。根絶を目指す必要があろう。何より深刻な人権問題であるという意識を共有したい。

 

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