検証と見解/官邸の本紙記者質問制限
官房長官会見での本紙記者の質問を巡る官邸側の「事実誤認」指摘への本紙見解
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【暮らし】<縁のカタチ 外国人と生きる>日本語支援「みらい」(上) すべての子に学びを
「先生、あった!」。一月中旬、愛知県豊橋市の豊岡中学校で、フィリピン国籍の二年生ロロ・ロニー君(15)が日本語でうれしそうに声をあげた。 新聞紙を広げ、一面の文字の中から平仮名の「み」「ら」「い」を探すゲーム。市内の外国籍の中学生たちが集う教室「みらい」の授業で、フィリピンやブラジル国籍の生徒十人とともに新聞に見入った。 ロニー君は昨年三月に両親ら家族四人で来日。だが、当初は「日本語が分からないし、友達が誰もいない」と学校に行かなかった。 日中は家にロニー君一人だけ。タガログ語のインターネットの通信教育で数学や英語などを学んでいた。「分からなくても、誰にも聞けず、たいくつだった」。昨秋、親戚から、みらいにはフィリピン国籍の生徒や通訳がいると聞き、昨年十二月に入学した。 みらいは同市教育委員会が昨年四月、国際教育の拠点となっている同校に新設。フィリピンやブラジル、中国など、市内の外国籍の中学生が入学後八週間集い、日本語や日本の文化を短期集中で学ぶ。 専任の日本人教諭二人に加え、タガログ語とポルトガル語が母国語の通訳二人と日本人の相談員一人が常駐。各国の言葉の翻訳がついた手作りの教材を使い、授業が分からない生徒には通訳が寄り添い、教諭の言葉を訳す。来日直後の生徒には相談員が一対一でひらがなを教えることもある。 豊橋市は自動車産業などが盛んで外国人労働者が多く、人口約三十八万人のうち外国人は約一万七千人で約5%。市内で外国籍、または保護者が外国籍の小中学生は千九百四十五人(一月七日現在)で、二〇〇〇年の四倍に増えた。 「日本人でも、外国人でも、すべての子に教育を保障するのが、大人の責任」。みらいの相談員で、約二十年前から同市で外国籍の子を指導する築樋(つきひ)博子さん(59)は話す。 憲法では、子どもに小中学校の教育を受けさせる就学義務を保護者に課している。ただ、義務があるのは「国民」で、外国籍の子どもは対象となっておらず、小中学校に全く行っていないケースも少なくない。 文部科学省の推計では、学校に通っていない不就学の子は全国に約一万八千人に上るとみられる。築樋さんも過去に、家計を助けるために中学に通わず働く子や、十代半ばで望まない妊娠をするなどした外国籍の子どもたちを見てきた。 豊橋市では従来、外国籍の生徒が多い学校には日本語を教える国際学級を個別に設け、通訳も派遣。子どもが増え続ける中、日本語のレベルにも差が目立つようになり、集中的に初歩の日本語を教える場をと、新たにみらいをつくった。 「みらいで、日本語を勉強しました。友達ができました。みらい、ありがとうございました」。十四日にあったみらいの修了式でロニー君は目を輝かせ、学んだ成果を日本語で披露した。 築樋さんは言う。「外国人の労働力がなくては成り立たない今、家族を社会が支えるのは当然。学校は外国人と日本人がお互いを知り合い、助け合える大人に育つための場所でもある」 ◇ 一六年の文科省調査によると、愛知県は日本語指導が必要な小中学生が約七千人で全国最多。外国籍の子どもたちの教育に力を入れる豊橋市の「みらい」を通し、共生のあり方を考える。 (細川暁子)
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