さて、話を杉田氏に戻す。
杉田氏がいまだこの件に言及していないことに対して、「杉田氏自身、そして家族が脅迫被害にあっており、子どもを守るためにもたとえ反論があってもそれを表明することができずにいる」という推測がもっぱらである。
本人の会見を求める声には「もし杉田氏に何かあったら責任取れるのか」と、杉田氏の状況に寄り添った意見も聞こえてくる。
ただ、脅迫を受けている間、発言ができない、しないとすれば、国会議員としての活動そのものができにくくなるのも事実である。
私はもちろん言論に対する一切の暴力的圧力、行為を否定する。杉田氏のどのような脅迫が来ていて、どれぐらいの深刻さなのかを知らないので、事件自体に関しては安易に発言することは控えなければならないとも思っている。
政治家の場合、時に不特定多数の不知も含めた人々からの脅しや脅しまがいの言動から全く無縁でいられるかといったら、残念ながらそうではない。
私自身もこの10数年脅迫を受けたり、怪文書、つきまとい、器物破損等の行為、事務所荒らし等、ありとあらゆる嫌がらせを受け、警察への相談、被疑者不詳のままの被害届提出は数えきれないほど出している。
インターネット普及以前は政治家に対する嫌がらせと言えば、一般的には「相手陣営」が疑われたが、今ではそうとも言い切れない。
むしろ、ネットを使って遠隔での操作が可能になる等、捜査範囲も広がり、また目的も変わってきていて、捜査も難しくなっている。
実際、杉田氏の事務所は「(杉田氏への)殺害予告の捜査に進展がなくコメントできない」(毎日新聞)としているところをみると、捜査は難航しているのだろう。
体験から言うと、たいてい、ひとつの事件の収束まで2年ほどかかる。その間、一切の言論活動をしないで済むかといったら、そうとはいかないのが苦しいところである。
だが、そうした人々は「発言をしないからといって攻撃をやめる」わけではない。
真意が通じていないと感じているのであれば、むしろ、自身の本意をしっかりと示すことこそが、危険を回避、抑止するひとつの防御策のひとつでもある。
杉田氏にとってそれが有効かは定かではないが、いずれにせよ、事件が完全に収束するまで自分の思いを表明することができないとなれば、それは杉田氏も周囲も望まないことだろう。
繰り返すが、政治家を続ける以上、もしくは何らかの言論活動をする上では、悲しいかな、また同様のことは起こることは皆無とは言い切れない。
いずれにせよ、今後の言論活動をどう維持していくのかは考えなければならないとご本人も思っているに違いない。
少なくとも、国会内で活動する時に身の安全は確保されているであろうから、記者会見はできるだろうし、発言自体がさらなる脅迫を呼ぶ恐れがあるというならば、それは杉田氏自身が、自らの発言をよくよく見直して見るべきであろう。