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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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赤黒い豚

「私達も負けませんわ! 合唱魔法『竜巻』ですわ!」


 ユキちゃんは竜巻を出現させる魔法に依ってクズの影武者が放つ真空状態にさせる魔法の妨害をしております。


「大丈夫だよみんな! 錬、樹、そして元康くん。この国の為にも、国民の為にも、こんな状態をすぐにでも解除しなきゃいけない! 本気で……やって!」

「わっかりましたぞ!」

「成長しきった勇者の強さをお前等に教えてやる。そんな不正な力で、燃費の悪い事をしなくても良いと言う事をな!」

「人々の命を犠牲にして手に入れる力など、どう見ても正しいとは思えません。自らに都合のいい者達だけを救うなど……宗教として間違っています」


 お義父さんの許可がおりましたな。

 最近体が鈍っていたので調度良いですぞ。

 俺は力強く槍を握りしめて、本気でスキルをぶっ放しますぞ!


「神を騙る神敵の偽者達め! 喰らえ! ブリューナク!」

「まだまだ終わっておらんぞ! 『永遠足る理力の吹雪!』」


 新教皇とクズの影武者が各々攻撃を放ってきましたぞ。

 何がブリューナクですかな?

 俺の真似をするな! ですぞ。

 本物の力を見せてやりましょう。


「ブリューナクⅩ!」

「流星剣Ⅹ!」

「ガトリングブラスターⅩ!」


 俺の槍が光り輝き、一直線の光の槍へと変貌し新教皇の放ったブリューナクを余裕で押し切りますぞ。

 同時に錬の放った流星剣の光が加わって行きますな。

 樹の連続射出された弾丸も加わって、光の奔流となって新教皇とクズの影武者へと飛んで行きましたな。


「ふん! 無駄だ! ワシ達へ攻撃が届くと思っているのか」

「愚かな……神の加護がある事を理解していないのだな」


 クズの影武者と新教皇を守るかのように地面から紫色の光が溢れて結界を作り出していますな。

 アレですぞ。お義父さんの流星壁に似た感じの大きな結界が守りとして出現したのですな。

 変な模様がありますな。八角形の防壁ですかな?


「アレってアニメで見た様な……心の壁? いやいや」


 お義父さんが呑気に答えていますぞ。

 ですが……そんな紙のような結界で俺達の本気が遮れると思ったのですかな?

 十秒で壁は蒸発しました。


「な――馬鹿な――」

「ワシ達には神の加護が――」

「その程度の力で勇者に敵うと思ったら大間違いですぞ」

「攻撃の出力自体はかなり高いんじゃないか? 尚文の作った盾が今までで一番衝撃を受けていたぞ」

「ですね。僕達も当たったらかなり痛かったでしょうね」

「あんなのを痛いで済んじゃうのもどうかと思うんだけどなー……」


 などとお義父さんが突っ込みを入れるとほぼ同時でしたぞ。

 新教皇とクズの影武者が俺達のスキルを受けて大きく吹き飛んで行きますぞ。

 ですが踏み留まりましたな。

 思ったよりも頑丈ですぞ。


「ぐ! まだまだぁああああああああ!」


 新教皇がコピー武器から力を捻りだしてブリューナクで押し返そうとしている様ですぞ。


「負けんぞおおおおおおおおおおお!」


 クズの影武者は……なんですかな?

 格闘ゲームが好きだった豚の愛キャラの必殺技である飛び道具を放つモーションで魔法を放っていますぞ。


「よくやりますな! では、もう少し力を入れますぞ!」


 更に力を込めて出力を上げますぞ。

 ここで壁をぶち抜けないのは爽快さが出ませんからな。


「わかった。樹、もっと力を込めるぞ」

「はい!」

「く……馬鹿な! 神の力を宿したワシ達が負ける……だと!?」

「あ、ありえん! か、神よ!」


 クズの影武者と新教皇は俺達の放ったスキルで大きく吹き飛びながら消し炭へと変貌して、消え去りました。

 愚か者には当然の末路ですぞ。


「「ぐあああああああああああ――……」」


 これで邪魔者を処分できましたな。

 ですが、ここで止まっている間に何をされるかわかりません。


「更に追撃ですぞ! エイミングランサーⅩ!」

「おい! 元康!」


 錬の突っ込みを無視して取りこぼした三勇教徒共を串刺しにしますぞ。

 生き残ったら碌な事をしませんからな。


「ぐああああああああ――」

「あーもう……」


 一瞬で戦闘に決着が付きました。

 正直、あまり強くない相手でしたな。


「結構本気でスキルを放ってやっとですか……もう少し早く倒せると思ったんですけど」

「地味に強かったんじゃないか? 最大強化した状態での攻撃だったんだぞ」

「一撃で仕留めておいて何を言っているんだか……」

「いやいや、さすがにこれだけの人間から力を奪っている様な相手ですよ? 僕達が強すぎただけで、相当な脅威となりますって」

「まあ……そうだけど」


 そんな会話をしていると、パチパチパチと拍手が聞こえてきました。

 俺達は玉座の間に座っていた赤黒い豚に目を向けますぞ。


 まだ生きていたのですかな?

 おかしいですな。ドサクサに紛れてエイミングランサーで狙い撃ちにしたはずですぞ。


 むむ? 何やら変な気配が。

 俺は赤黒い豚に、クズの影武者と新教皇が宿していた力が集約するのを確認しました。

 これはどういう事ですかな?



 お義父さん達が険しい表情で赤黒い豚を睨んでおります。

 そこに女王が眉を寄せながら応じますぞ。


「既に勇者様方によって教皇を含めたオルトクレイを偽った者は処分されました。強引に据えられたのでしょうが、本来その席は私の物……穏便に済ませたいので譲って頂けないでしょうか?」

「ブブブ……ブヒ」


 何やら非常に腹立たしい返答をされた様な気がしますぞ。

 赤黒い豚は俺達に向けて嘲笑いながら答えているように鳴きました。


「ブブブブ、ブヒブヒ」


 エクレアが剣を強く握りしめて睨みつけております。

 女王の命令があれば即座に切りかかるつもりでしょうな。

 もちろん、俺たちもお義父さんの命令があれば即座に応じますぞ。


「首謀者を倒したはずなのに、この現象が一向に解ける気配が無い……と言う事は」


 お義父さんが赤黒い豚を見つめます。

 錬も樹も、ライバルたちもフィロリアル様も警戒を強めました。

 俺も何やら背筋にビシビシと何かを感じられますぞ。


「ブブ、ブブブブ」

「……なるほど、貴方が全ての黒幕であるとでも言う気ですか」

「ブブブブブブブヒ」


 本当に何を話しているのか全然わかりませんな。

 面倒ですから速攻で消し飛ばしてやりたくなりますな。


「お義父さん。奴は何を言っているのですかな?」

「ああ……そうだね。女王が席を譲れって言ったら拒んだ挙句、雑魚に勝った程度で何を誇っているのかしら? ってさ」


 なんと、傲慢を超えた身の程知らずなのですな。

 これが女王の親せき筋の豚なのですか……頭の芯まで三勇教に支配されてしまっているのですかな?

 ですが教皇さえも雑魚とは……短い時間に玉座に据えられて、偉いとでも思ったのですかな?

 これだから豚は身の程知らずなのですぞ。


「その後、この国を取り戻せるなんて馬鹿な事を考えてるなんて笑いがこみあげてくるわ。アハハハって笑ってるんだよ」

「そして尚文さんの問いかけに答えるように、ええ、儀式の中心は私、この国の全てが私に奉仕するために存在するのよ……と」


 なんとも傲慢な奴ですな。

 確かに若干強くはあるようですが、それも程度が知れますぞ。

 本気で挑めばコイツ等の強さなど霊亀にも劣りますからな。


「ブブ、ブブブ」

「な、何!?」


 お義父さん達が驚愕の表情に彩られましたぞ。

 それは女王、婚約者、エクレアも同様ですぞ。

 俺はその様子を淡々と見つめております。

 赤黒い豚が何処からともなく杖を出現させて何やら宣言したのです。


「元康くん!」

「なんですかな?」

「今、あの子が持っている武器をちゃんと見て!」


 言われて俺は赤黒い豚が持っている杖を見ますぞ。

 見た感じ錫杖に見えますな。

 ……何処となく似た雰囲気の物を見た事がある様な覚えがありますぞ。

 お義父さんでしたかな?

 違いますな。お義父さんが杖を持っていた事がありましたが、あの杖はオオカミのような形状をしておりました。

 ただ、俺の槍にも似たようにある魔法の玉が埋め込まれていますぞ。

 そして、杖自体の形状自体は黒っぽく、何やら邪悪な気配を宿しています。


「さっきあの子は言ったんだよ。そう、七星の杖は私を選び、力を授け続けていると」

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