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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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一周目のラスボス

「ふふふふ……邪悪なる血? 違うな。これは神聖なる力を降ろした神の力也、我等のこの神々しい姿を理解しないのか!」


 俺が赤黒い豚が気になっていると、新教皇が言いました。

 あれが神々しい?

 お前の目はどうなっているのですかな?


「神々しい? どう見ても邪悪にしか見えないが……」

「ラスボス……はないな。中ボス位の外見だよね」

「ですね。どんなに良く見積もっても、元康さん的に言って、一週目のラスボスが限界でしょう」


 どういう例えですかな?

 こんな連中、見た目だけの雑魚に決まってますぞ。


「それはお前等が闇の存在であるからに決まっているからなのだ! だからこの聖なる力を宿した我等を正しく認識できないでいる! これが何よりの証だ!」

「なの! 悪魔の類は力をねじ曲げて認識させる事があるなの! だから奴等の目にはきっと神聖に見えてるなの!」


 なるほど、ですぞ。

 おそらく奴等には天使の羽にでも見えているのではないですかな?

 ハッ! 天使とはフィロリアル様達の事を指すのですぞ。

 間違ってもコイツ等のような姿ではありません。


「城の兵士達は神を召喚する力を注ぐ為の供物として身を捧げたに過ぎない……そう、真の神を召喚するには多大な力が必要であり、生贄を必要としているのだ」

「ねぇ……タクトよりも話が通じてない気がするんだけど……」

「脳までやられてるんだろ」

「ささっと楽にしてあげましょう」


 そんな会話を余所に、ぶわっと何やら力の塊のようなモノが、新教皇とクズに乗り移った様に見えますな。

 オーラを立ち上らせて新教皇とクズが一歩前に踏み出しました。


「勇者召喚の儀式はまだ、我が教徒達がしている最中なのだ。世界を救うためには痛みを伴う犠牲が必要……まさに、大の虫を生かす為に小の虫を殺さねばならない」

「生き残れるのは正しい神を信仰した教徒のみ、間違った信仰を持つ者には犠牲となってもらう。世界という大樹を生かす為には余計な枝葉は切らねばならん」


 新教皇とクズの影武者は己のやっている事を正しい行いだと信じている様ですぞ。

 つまり奴等の理屈では正しい四聖勇者とやらを召喚するためには実は生贄が必要だったと言う理屈でやっていると言う事なのですかな?


「大の虫を生かす為に……か。その大の虫が害虫ならば全く無意味な犠牲にしかならないな」

「ええ、余計な枝葉を切るよりも前に腐った部分を切除しないと大樹自体が朽ちて滅びますよ」


 錬と樹が呆れ気味に新教皇とクズの影武者の理屈を切り捨てますな。


「ふ……抜かしておるが、よい。ワシらの領土は教徒達が散らばって既に国を覆いつつある。そう……儀式の陣は広がっているのだ!」

「一分一秒単位で、国民が一丸となってお前等を倒す力を供給し続けているのだ!」

「何だって!?」


 お義父さんが城の外の方へ意識を向けました。

 何か魔力の様な流れを感じる事が出来ます。 


「今の言葉が真実だとするなら、危険な悪魔召喚の儀式は継続中で範囲が広がると国民から力を搾取……してるってこと?」

「……どうやら時間は無いようです。一刻も早く儀式をやめさせましょう!」


 女王の言葉に俺達は頷きましたぞ。


「サクラちゃん。ガエリオンちゃん。ウィンディアちゃんはこの下らない儀式が行われている場所を特定して!」

「する必要は無いの」

「うん。何処かサクラもわかるよー」

「ええ、わかり切っていますわ」


 おや?

 お義父さんが頼む前にライバルとフィロリアル様達は何処が儀式の発生源かわかっているようですな。


「あそこなの、あいつ等を媒体に自動で術式が作動してるの」


 ライバルは新教皇共を指差して言いましたぞ。

 どうやらフィロリアル様達も同様の認識の様ですぞ。


「人体を使って儀式をして力を集めている様なの」

「つまり、彼ら自体が術式として力を集めていると……」

「なの! きっと自分たちの領域内の龍脈の力さえ吸収して人間としての限界を強引に突き抜けていると思うなの」

「経験値は龍脈の力を内包する事……だっけ? 限界に達した肉体に、更に継続的に経験値を供給し続ける状態……と言う事かな?」

「なの!」

「良く分かりませんな」


 何を言いたいのかお義父さんとライバルの話では全然ピンときませんぞ。


「元康様、つまり彼らはLv限界を強引に突破し続けている状態なのですわ。そして、その状態で悪魔の類を使役し、内包しているのです」


 ユキちゃんの説明でピンときました。

 相変わらず頭が良いですな。


「要するにLvが100を遥かに超えていると言う事なのですな?」


 とんでもない強引な方法に出ていますな。

 そんな真似をしたらすぐに死にそうですぞ。

 良く見ると、青筋が浮かび上がってムキムキになっている様な気がしますな。


「やっと理解したか……とにかく、どうやらタクトの女共みたいな状態を強引に作っているようだな」

「そして一分一秒の範囲で力を供給する領域が拡張して行っている。俺達がここに来る前に見たのはその領土が広がっていく様だったんだよ」

「挙句、力が溜まったら何か、勇者と称する何かを召喚するらしいですよ」


 出てくるのはきっとラスボスですな。

 まあこやつ等程度が召喚したラスボスなど一撃で倒してやりますが。


「ふ……本来ならば正しい勇者達にお前等を処分して頂くのだが、世界を救う勇者様に手を煩わせるのもいかんか」

「そうだ。新たな世界を切り開くためにも、真なる勇者を召喚する為にも、目の前の偽者を供物として捧げる事こそ、が必要な儀式なのだ!」


 新教皇とクズの影武者がそれぞれ武器を取り出して構えましたぞ。

 俺は奴らを睨みつけると、ザザっと敵のアイコンが出現して魔物の反応が出ましたな。

 魔物名は良く分かりませんな。鑑定不可と言う意味ですかな?

 ただ、タクトと同等程度にはLvと力がある様に感じ取れますな。


 ところで気になったのですが、後方で玉座に座りこんでいる赤黒い豚は何をしているのですかな?

 偉そうに玉座に座っているだけですぞ。

 怠け豚みたいな奴ですな。

 ただ、怠け豚とは何もかも違いますがな。


「我等が教徒達の集約した魔法を受けるが良い! 『神雷!』『無空!』」


 ほぼ無詠唱でクズの影武者が錫杖を振りかざして魔法を放ちましたぞ。

 瞬時に辺りに三勇教徒が姿を現して魔法援護に協力している様ですな。

 お義父さんが前に立って、同時に複数の盾を出現させて俺達を守ります。


「エアストシールドⅩ! セカンドシールドⅩ! エアワンウェイシールドⅤ! セカンドツーウェイシールドⅤ!」


 それとほぼ同時でしたかな?

 俺達に向かって『裁き』よりも太い雷が降り注ぎ、辺りの酸素が無くなるのを感じました。

 樹が口をパクパクとさせながら力強く引き金を引くと、辺りに空気が充満しましたぞ。


「エアブリット……ネタスキルかと思いましたが、こんな所で役に立つとは思いませんでした」

「そんなスキルあったんだ?」

「本来は援護スキルです。元康さんの炎の魔法に合わせて放てば威力が向上すると思いますよ」

「ああ、空気を供給して炎をより燃え上がらせる的な?」

「応用の幅はあると思います。属性矢……銃になっているので弾ですね」

「ほう……そうでなくては面白くない」


 新教皇が準備を終えたとばかりに紫色に光るブリューナクを放とうとしていますぞ。

 出力は確かに今までの比では無いようですな。


「英知の賢王に負けない魔法の腕前……偽者であろうとも、その強さは感心しますね」


 女王が婚約者と共に魔法の詠唱をしながら応じますぞ。


「コイツ等は、一体!? なんて速度だ!」


 エクレアは女王とへ襲いかかる三勇教徒に応戦しておりますぞ。

 確かに動きが早いですな。

 コイツ等もクズの影武者達と同様の加護が掛っていると見て良いでしょう


「お姉ちゃん! ガエリオン達もやるの! 最低でも合唱魔法で儀式魔法に応じないと、なおふみが防戦一方になるの!」

「私も負けませんわ! ほら、コウ、サクラ! 一緒に合唱魔法を唱えますわよ!」


 ライバルとフィロリアル様達もそれぞれ魔法の詠唱に入りましたぞ。

 もちろん、唱えながら襲い来る三勇教徒や、影から出現する悪魔共を薙ぎ払っております。


「合唱魔法! 『吹雪!』」


 女王と婚約者がクズの影武者とその取り巻きに向けて合唱魔法を唱えました。


『我ここにガエリオンの力を導き、具現を望む。地脈よ。我に力を』


 助手の詠唱にモグラも一緒に参加していますぞ。


『力の根源足る。私が命じる。紡ぎだされる炎に力を合わせよ!』

「こっちも出来たなの! 合唱魔法『マグマD-ブレス!』」


 ライバルが戦闘形態に入ると同時に火山弾を発射しましたぞ。

 かなりの高密度のマグマでないのですかな?

 しかもライバルの変身にバリエーションが掛っているのか、岩と火を宿した姿になっております。

 何処となく硬くて強そうですな。


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