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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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暗雲

 それから女王の口からメルロマルクの内情を相談し、フォーブレイの者達の前で作戦をお義父さんが復唱しました。

 フォーブレイの者達も特に異論は無いようですな。

 勇者達の加護があればどうにでもなると思っているのでしょう。

 この場にはタクトとの戦いを見ていた者もいますからな。


「それでは出発しよう。勇者殿達の準備は出来ているか?」

「うん。大丈夫だよ、エクレールさん」

「うむ……腕が鳴る」


 エクレアも随分とやる気を見せていますな。

 まあ祖国を守る為の戦いですから、自然と気が昂ぶるのでしょう。

 俺もフィーロたんやお義父さんを守る為なら同じ感情が湧き出ますぞ。


「そう言えばエクレールさんは限界突破のクラスアップをしておく? もう出来るからやっておいて損は無いよ?」

「いや……まずはメルロマルクの件を解決してからだ。それに私は勇者殿達の補佐を命じられてはいない。同行には女王の許可が必要だ」

「私からは特に言う事はありませんが、そうですね。世界平和の為にセーアエット嬢が必要であるのでしたら、メルロマルクの代表としてお願いしましょう」


 と、女王は了承しましたな。


「後は細かい調整なんだけど、ポータルでフォーブレイや連合軍の兵士を送り届けるんだっけ?」

「それは最終的にでいいだろ。まずは安全の確保だ。城に巣食う三勇教徒を捕えるのが先だ」

「そうだね。どっちにしても厄介な事件だ。三勇教の被害をこれ以上増やさない為に、早く行こう」


 こうして俺達はポータルでメルロマルクに向かう事にしたのですぞ。

 メンバーには女王と婚約者が追加されています。

 まずは城の奪還が優先ですからな。


「おや? 俺達を召喚した場所へのポータルが機能してませんな」


 俺達を召喚した時の場所は不思議と建物内なのに飛ぶ事が出来るのですぞ。

 なのに何故か転移不可能と表示されています。

 転移先の状況を僅かに見る事が出来るのですが、それすらもチラついて見えません。


「おかしいですな」

「じゃあ城の庭とか近くの村とかは飛べないのか?」

「それなら問題ありませんな」


 何だかんだでメルロマルク内はポータル位置を多く記録していますからな。

 元々は三カ所しか登録できないのですが、スキルのLvを上げるのと強化方法にポータル位置や転移人数の拡張があるので、枠はかなり拡大出来るのですぞ。

 最悪、エネルギーブーストを使用すれば更に人を送り届ける事も可能なのです。


 乗り物の転移も出来れば良いのですがな。

 唯一の短所ですぞ。


 俺は飛べる場所を何個か調べますぞ。

 どうやらメルロマルクの城下町まで飛べない様ですな。

 何があるのですかな?


 ま、こんな事もあろうかと、ではありませんがメルロマルクの草原のポータルも取っていますぞ。

 ループの中でお義父さんを探せないか、と考えた時に取っていた奴が残っていた様ですな。


「ポータルスピアですぞ!」


 俺は唱えてからみんなと一緒にメルロマルクへと転移しましたぞ。


「お? ってここは草原か」


 転移になれたお義父さん達は特に不思議にも思わず場所を確認していますな。


「これが勇者の力……凄い……」


 婚約者は感嘆の声を出しておりますぞ。

 転移に関しては毎回驚きの声を出しますな。


「とりあえず元康くんの隠蔽スキルと魔法を併用してメルロマルクの……」


 そう言いながらお義父さんは城の方に振り向いて言葉を失いました。

 錬や樹も同様ですな。

 俺も何やら嫌な予感を感じておりますぞ。

 何せ、メルロマルク城を含めた城下町の上空に暗雲が立ちこめていたのですからな。

 それだけで城門の様子もおかしく見えるのが実に不思議ですぞ。


「ねえ、俺の気の所為かな? どうもメルロマルクの城下町が禍々しいと言うか……」

「荒廃してるように見えるな。何かあったのか?」

「古いRPGとかで見た様な光景ですね。全体的に薄暗い気がします」


 お義父さん達は何度も首を傾げております。

 少なくとも雨が降っていても、こんなに禍々しい雰囲気になった事は無いですぞ。


「何かおかしいの?」

「おかしい?」


 助手とモグラは初めてなので違和感が無いのでしょう。


「なんかいやーな気配ー」

「ですわね」

「くらーい」

「禍々しいの、汚れた地なの」


 ユキちゃん達とライバルはわかるようですな。

 しかし汚れた地、ですか。

 一体何が起こっているのですかな?


「メルロマルクってこんなんだっけ……? 俺の記憶と随分と違う気がするんだけど……」

「違う! 幾らなんでもおかしいではないか!」


 エクレアが即答しますぞ。

 ああ、やっぱりエクレア達から見ても全然違うのですな。


「はい、我が国は至って普通、とは言いませんが……このような邪悪な気配を漂わせてはいない……はずなのです」

「私達の国が……」


 女王と婚約者は現実を受け入れ難いと言った面持ちで城下町を見ております。

 二人からすれば故郷ですからな。

 こんな姿を見れば、嫌な気分になるでしょう。


「なんて言うか、何かのゲームのラストステージみたいな空気が出てるね」

「言葉を選んでそれですか? まあ、確かに中に入った瞬間、魔物にエンカウントしそうな空気があるのは否定しませんが……」

「幾らなんでもおかし過ぎるだろ。何が起こっているんだ?」

「アレじゃない? 思い通りに行かない連中に洗脳の武器を使用して乗っ取ったとか」


 ありえない話では無いですな。

 問題は要である樹がいない事ですぞ。

 お義父さん御用達の気を見る力を俺も使用してみます。

 ……使うまでも無く思い切りおかしな力が漂っている真っ最中ですぞ!


「と、とりあえず潜伏して行ってみるか」

「そうですね。国の人達には悪いですが正面から行きましょう」

「不殺で行く訳じゃないけど、見つかったら犠牲者を少なくするために状態異常で相手を沈黙させよう」

「では俺がパラライズランスで行くのですな?」


 準備は万端ですぞ。

 そう思ったのですが、お義父さんは首を横に振りますぞ。


「敵の数が多いなら元康くんの場合、範囲スキルで殺しちゃおうとするでしょ。こういう場合、連射性から樹に任せた方が良いんじゃないかな?」

「そうですね。パラライズアロー……今の武器の形状からするとパラライズブレットで近寄る敵を素早く麻痺させて行きましょう」

「樹のSPが足りなくなる事態にならない様にがんばらないとね」

「面倒ですから外から魔法で焼き払うのはどうですかな?」

「良いですね、とでも言うと思ったんですか? 却下ですよ」

「また面倒事を増やしたいのか、元康!」


 お義父さん達は真面目ですな。

 城下町を焼き払うのはさすがに俺も問題だと思いますが、城なら良いのではないかと思いますぞ。

 また建てれば良いのですからな。


「ガエリオンが風上から状態異常のブレスを吐くなの!」

「それもどうなのかなー……味方も巻き込みかねないし」

「サクラ達も負けないくらいがんばるー」

「なんか……すごく大変そう」

「うん。だけど、これで国が良くなるならがんばりたい、です」


 ライバルを初めとしたフィロリアル様達が各々思いを告げますぞ。

 後は女王と婚約者ですな。


「勇者様方のご協力、感謝いたします」

「感謝いたします」

「じゃあメルちゃんはーサクラの背に乗っててねー」

「うん、サクラちゃん」


 サクラちゃんはフィロリアル姿になって婚約者を背に乗せましたな。


「では行こう」


 エクレアの言葉に頷いて俺達は隠蔽魔法を唱えて城下町を潜ったのですぞ。


「うう……」

「あー……」


 俺達の横をゴトンゴトンと馬車が通り過ぎて行きました。

 更に、城下町の所々で放心状態で呻いている様な連中が壁にもたれ掛かっている様ですぞ。

 なんですかな?

 ヤクでもやっているのですかな?


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