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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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宇宙

「今でさえ、無双に近いのにどれだけ強くならなきゃいけないんだろうね」


 モグラ以外のクラスアップを終えて、お義父さんが言いました。


「それだけ波が厳しくなると伝えているんだろ」

「僕も詳しく知らないのですけど、後期のネットゲームは即死ゲームと呼ばれると聞きますね」

「確かにゲームによってはそう言うのがあるね。それが前提で戦うのは死んでも嫌だなー……」

「人の命が消耗品になる様な状況にだけはなりたくないですよ」

「勇者でそれじゃあ、もう無理なんじゃないか? そう考えるとVRゲームでもそうだが、客を楽しませるのを履き違えている様な気がする」

「出来れば波がそんな状態になって欲しくないね……元康くんが波に負けたのがそんな理由だったら嫌だし」

「イヤすぎますよ。絶望しかないじゃないですか」

「初盤だから強くてニューゲームになっている、という展開だけは勘弁してもらいたい」


 そうですな。それには俺も同意ですぞ。

 どういう訳だが、俺はどんな敵に負けたのか思い出せません。

 とはいえ、負けたのは事実。

 今よりは弱かったのですが、お義父さん達が一緒にいる状況で、俺が負ける程の敵ですから、相当厄介な相手なのは想像に難しく無いですぞ。


「とりあえずイミアちゃん、あんまりここに長居するのは良くないから決められないなら次に……」

「協力して魔法を覚えたいからガエリオンちゃんにします」


 決意した感じにモグラはお義父さんに答えましたな。

 先ほどの迷いは何処へ行ったのですかな?

 見た感じだとお義父さんが勉強していかないと……と呟いた辺りで迷っていた態度が変わりました。


「そ、そう? じゃあガエリオンちゃん、お願いね」

「わかったなのー!」

「イミアさん、本当にそれで良いんですの? 後悔しても遅いですわよ?」


 ユキちゃんが食い下がってますぞ。

 ここは俺もユキちゃんに合わせて、モグラを誘導させますぞ。


「そうですぞ。お義父さんと共に前線で戦えますぞ?」

「えっと……」

「決めたのに迷わせる様な事を言わない。そもそもどっちでも出来るでしょ」


 俺とユキちゃんはお義父さんに叱られてしまいました。

 そんな感じでライバルが龍刻の砂時計に乗っかって儀式を始めましたぞ。

 やがてモグラのクラスアップが終わりましたな。


「よし! じゃあイミアちゃん、これからもよろしくね」

「はい。あの……魔法も一緒に覚えていけますよね?」

「そうだね。ウィンディアちゃんとガエリオンちゃんに一緒に教えてもらおうね」


 モグラは恥ずかしそうに俯きながらも頷いておりましたぞ。

 なんとなくですがモグラが最初の世界よりも強くなりそうな予感がしましたな。


「そうだ。後は龍刻の砂時計の砂だね」

「ポータルだな」

「今まで不便でしたからね。これでやっと好きに移動できますよ」

「ここ一カ月で別行動をする方が違和感がある様な気がしてきたけどね」

「同意だな。俺だってあくまで覚えておいて損は無い程度だ」

「僕もですよ。それに元康さんが取って無い転移位置を僕達が別れて取りに行く事も出来るようになるのに悪い話は無いですよ」

「これで別れて探せば移動時間が短縮出来るもんね」

「ああ」


 そんなこんなでクラスアップを終えて、豚が鳴き喚く神殿から俺達は足早に立ち去ったのですぞ。



 途中、出発に備えて王室御用達という武器屋に寄って、お義父さん達はフォーブレイにしかない変わった武器をコピーしていた様ですぞ。

 店員には既に金が行っているのか朗らかですな。

 樹は弓を銃に変えておりますぞ。

 弓の勇者ではなく、銃の勇者になりましたな。


「エアストシールドとかの盾を出すスキルは便利と言えば便利なんだけど、もっと範囲を守れるスキル無いかなー」

「ありますぞ」

「あるの? それって何で出る?」

「隕鉄の盾で出たと聞きますな。俺や錬、樹が時々使う流星シリーズのスキルですぞ」

「それ、何処で手に入れたの? 俺も出来ればほしいんだけど」

「メルロマルクの武器屋の親父さんからコピーさせてもらいましたね」

「……そうだな。もう随分と昔に感じるな」

「……メルロマルクのあの武器屋。あるかな?」


 お義父さんの言葉に錬と樹が視線を逸らしましたぞ。


「きっとあるんじゃないか? 不安だが……」

「かといって決戦前に、いきなりコピーしに行くのは難しそうだね。隕鉄って事は……ここにない?」


 お義父さんが店員に尋ねると店員は考える様に首を傾げておりますな。


「少々お待ち下さい」


 やがて、ごそごそと店の奥へと行きましたぞ。


「隕鉄って何なのかな?」

「隕石から取れる鉄って事じゃないか? 滅多に手に入らない貴重な鉱石……なんだろう」

「世界規模での扱いはそうみたいですぞ」


 店員が探しに行ったので、樹の方を眺めます。

 樹は銃器の説明を店員から聞いております。


「便利なスキルを内包しているからな。出来れば尚文も覚えてほしい」

「かといって無い物のコピーは出来ないし、他に手段は無いの?」

「最初の世界だとゼルトブルの武器屋でコピーしましたな」

「そっちにもあるのか……」

「かといってゼルトブルにまで行くのはちょっと……」


 俺はゼルトブルのポータルは持っていませんからな。

 どちらにしてもモグラの親戚を探すそうなので、ゼルトブルに行く事にはなるでしょうな。

 とはいえ、行くにしても、メルロマルクの騒動を解決してからになるでしょう。


「お空の上にあるなの?」

「カテゴリーで言えばね」

「じゃあガエリオンが取ってくるなの! 時間かかるけどなおふみにプレゼントするなの」

「大気圏を超えてまで飛んで行くドラゴン……完全にゲームの召喚獣だね……大気圏からブレスで狙い撃ち出来そう」

「そんな遠くから放つ意味あるなの? もっと近寄って吐いた方が威力が出るなの」

「うー……ん」


 ライバルの疑問にお義父さんが唸りますぞ。


「まあ……そうなんだろうけど、演出の関係かなー?」

「サラッと凄い話をしてますよね」

「だな。異世界ファンタジーで宇宙に出るとか勘弁してほしいな」

「でもそういうゲーム、偶にあるよね。俺の知っている有名タイトルの……Ⅳだったかな。その終盤に月の船で宇宙に行くよ」

「……宇宙に龍刻の砂時計があったらどうします?」

「……」


 錬とお義父さんが苦笑いをしましたな。

 例え宇宙空間でも俺は負けませんぞ!

 なーに、来る敵すべてを魔法とスキルで薙ぎ払ってやります。


「ウィンディアちゃんは魔法主体で行く見たいだから杖かロッドを持つと良いかもね。サクラちゃん達は……自前の装備でいいのかな?」

「うんー!」

「ツメも良いですわね。豪華なツメを付けて地を走ると血がうずきそうですわ!」

「コウもー」

「じゃあ、後でフィロリアル用のツメも見て行こうか」

「ドロップで出たツメを与えてるだろ。それよりも良い物がここにあるのか?」


 錬の言葉にお義父さんが苦笑しますぞ。


「確かに、際物とかオーダーメイド品でも、強力な魔物を倒した時に手に入れた武器より弱い物が多いからね」

「そうだな。だが、オーダーメイドはオーダーメイドで便利な付与効果がある。ブラッドクリーンコーティングが筆頭だな。時間があったら武器の改良を依頼するのも手だ」


 ブラッドコーティングは血糊が付かないのですぞ。

 サクラちゃん達の攻撃はどうしても血が出るので、あれば便利ですな。


「じゃあ、今はまだ時間が無いし、後にしよう」


 ユキちゃん達の装備の改造案に俺も心が躍ります。

 ちなみにブリューナクはお姉さんのお姉さんが持ってきた銛から出たスキルですぞ。


「イミアちゃんは何を武器にする?」


 モグラは小剣とツメに興味があるようですな。

 既にその手がツメのような物では無いですかな?


「じゃ、じゃあ……」


 モグラは小剣を指差していますぞ。


「剣術を覚えておきたい、です」

「わかった。後で錬とー……小剣ならエクレールさんかな。に、稽古を付けてもらおう」


 お義父さんはモグラに小剣を握らせて微笑んでいますぞ。

 やりたい事をやらせるその姿勢は素晴らしいですな。

 この元康、お義父さんが配下の者を自由にさせるその考えに関して脱帽ですぞ。


「尚文の放任主義を見ていると相手に型を押し付けるゲームプレイをしていた俺が小さく見えるな」

「ゲームとは違うけど、本人に選んでもらわないと……後悔するのは本人だし、余計な口出しはね」

「効率悪くないか?」

「ゲーム経験から言うなら最初は好き勝手やった方が習得も早いし自分のキャラクターに愛着とかも生まれて長続きするよ。最初から完璧な強さを持ちたい人はダメだろうけど、そういう人は攻略サイトとか見るだろうし」

「む……」

「それに、この世界じゃ覚えて損な事は無いと思うよ。長続きするなら何をしても俺は咎めない。イミアちゃんはとても真面目な子だし、三日坊主で終わらないと思うから錬も教えてくれるならお願いできる?」

「わかった」

「よ、よろしくお願いします」

「ああ」


 錬も割と面倒見は良い方ですからな。

 型と狩り場を押し付けてソロプレイをしていたのがウソの様ですぞ。

 これもお義父さんのお陰ですかな?

 なんて話をしていると店員が店の奥から一つの盾を持って来ました。


「申し訳ございません。隕鉄の盾はどうやら無い様なのですが、似たような商品に月石の盾がありますので、どうかおためしください」


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