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20090424(Fri)

富士見ミステリー文庫追悼の辞・作品編Add Startrivialmykazetokoroten999


レーベル編はこちら


あざの耕平Dクラッカーズ


全10巻。創刊ラインナップの1冊にして自分が富士ミスで最初に読んだ作品。ドラッグきめてスタンドバトル。揃いも揃ってハッタリかますスカした連中ばっかりなのに、それが何故か陳腐にならない。引き伸ばしもなくキリのいいところで終わったのも好印象。スロースターターと言われてるけど、自分としては1巻から面白かった。最近、自分の中で副題が「カプセルプリンセス~ふしぎなくすり~」に決定。富士見ファンタジア文庫から新装版が発売されている。


新城カズマ『浪漫探偵・朱月宵三郎』


全2巻。新城カズマのあの饒舌な文体が探偵物にピッタリだった。1巻目終盤のイメージの洪水には圧倒される。この人はいつも最後にはどこか見たこともない世界に僕らを連れていってくれる。


秋田禎信『閉鎖のシステム

閉鎖のシステム (富士見ミステリー文庫)

閉鎖のシステム (富士見ミステリー文庫)


自分の中で、『ひとつ火の粉』と延々と「無人島に持っていきたい本」の第1位を争い続けている一冊。作者曰くジャンルは「舞台演劇」。ラストの報告書や黒星紅白のイラストにおける奇抜な衣装はその演出の一環だとか。自分の中で「もうストーリーなんてどうでもいいや」となってしまった記念碑的作品。ある意味西尾維新好きな人にとっての『化物語』みたいなものかもしれない。


上遠野浩平『しずるさん』

しずるさんと偏屈な死者たち (富士見ミステリー文庫)

しずるさんと偏屈な死者たち (富士見ミステリー文庫)


全3巻。病室にこもりきりな前髪ぱっつん黒髪美少女のしずるさんと快活なよーちゃんによる百合ミステリー小説。もしくはミステリー風百合小説。「うううううう……」とか「じゃねーわよ」とかいう人は出てきません。未完で雑誌掲載分が少し宙に浮いてる状態なのが勿体無い。人気作家なんだからどっか引き取ってくれればいいのに……。


桜庭一樹GOSICK

GOSICK―ゴシック (富士見ミステリー文庫)

GOSICK―ゴシック (富士見ミステリー文庫)


既刊9巻。直木賞を受賞した桜庭一樹の、ラノベ作家としてのヒット作。20世紀初頭のヨーロッパを舞台にした、金髪フリフリ天才少女ヴィクトリカ(CV千和)と日本からの留学生久城一弥の冒険ミステリー。もしくはミステリー冒険小説武田日向のイラストつきで角川文庫入りがアナウンスされたが、以降音沙汰が全くないのが不安。作風的にはつばさ文庫辺りで出てもおかしくなさそう。一時期京アニ制作のアニメ化が噂された。実際、このシリーズの刊行を滞らせずアニメ化まで漕ぎつかせることが出来なかったのがレーベルとしても致命的だった気がする。知名度が格段に上がった現在の方が企画が通り易そうなので、原作が再開すれば何らかの動きがあったりして。


ヤマグチノボル『描きかけのラブレター

描きかけのラブレター (富士見ミステリー文庫)

描きかけのラブレター (富士見ミステリー文庫)


ゼロ魔』のヤマグチノボルによる青春小説。面倒くさい女の子は好きです。雑誌掲載の短編は蛇足だったと思う。……氷室冴子の『海がきこえる』を思い出すのはベタ過ぎますか。


小林めぐみ食卓にビールを


全6巻。三度星雲賞ノミネートされるも無冠に終わったSF短編集。「ファンタジアではやりにくいからこっちで出しただけで、ミステリーでもなんでもない」作品の代表格。このシリーズが間接的に早川で『回帰祭』を書くきっかけとなった。物理オタク人妻女子高生作家の飄々とした性格が魅力。旦那羨ましい。


桜庭一樹砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)


桜庭一樹の少女物の中でも際立って評価が高い作品。地方都市シリーズ。この小説ラノベレーベルであのイラストつきで出版されることに意義があったと、たとえバラバラ死体にされても主張し続けたい。


川上亮『僕らA.I』

僕らA.I. (富士見ミステリー文庫)

僕らA.I. (富士見ミステリー文庫)


家族物SF風味。面白さで言えば同作者の『並列バイオ』『ひと夏の経験値』『ラブ☆アタック!』には及ばないけど、この真っ直ぐさには無視できないものがある。.


中村九郎『ロクメンダイス、』

ロクメンダイス、 (富士見ミステリー文庫)

ロクメンダイス、 (富士見ミステリー文庫)


九郎先生の二作目。恋をしなければ死んでしまう少年と、恋をしてはいけない少女。氏の現在までの作品で一番ふわふわしてて掴みどころがない。直球の「L・O・V・E」。


川上亮森橋ビンゴ・緋野莉月『青春時計


三人の著者が、それぞれ担当したキャラクターの視点から物語を紡ぐ。他人との速度の違いを実感することが青春だなあとか、そんな。いい意味でこいつらの物語をもっとこう……広い視野で読んでみたかった。


葉山透ニライカナイをさがして』

ニライカナイをさがして (富士見ミステリー文庫)

ニライカナイをさがして (富士見ミステリー文庫)


アイドルとの沖縄への逃避行。ロードムービー小説。ベッタベタだがそれがいい


ヤマグチノボル『遠く6マイルの彼女』

遠く6マイルの彼女 (富士見ミステリー文庫)

遠く6マイルの彼女 (富士見ミステリー文庫)


死んでしまった兄の彼女だった人との数年ぶりの再会。しかも彼女は教育実習生、こちらは受験生として……。あとがきで『描きかけのラブレター』と合わせ日立三部作と銘打たれていたけど、結局三作目が書かれることはないんだろうか。富士ミスがダメなら、MF文庫ダ・ヴィンチとかでひとつ桑島由一も出してるし。


新井輝築地俊彦水城正太郎師走トオル田代裕彦吉田茄矢あざの耕平『ネコのおと リレーノベルLOVEバージョン



筋がぐちゃぐちゃに迷走していく過程が楽しい楽屋ネタ多めで、これを読んだ段階では自分が著作を読んだことがあるのは半数だけだったんだけど、存分に楽しめました。


こうして見ると自分にとっての富士ミスって、新人よりは中堅や売れっ子が他ではやりにくいことをやる場所だったんだなーと思う。あとやっぱり青春小説多め。幻と消えたろくご師匠の新作だけが心残りでした……。

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