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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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張り合う

「うわー……最後の後に追加される程嫌いなんだ……」

「鞭の勇者の所へ嫁に行く位ならドラゴンの所に嫁ぐ方が遥かにマシです」

「そこまで嫌いなんですか!?」

「まあ、わからなくもないが……凄いな。どんだけ嫌われていたんだ……」

「タクトの妹さんはメルティさんがタクトを嫌っているのを察していたのかもしれませんね」


 なんともまあ、底無しに嫌いなのですな。

 タクトも攻略できない相手の区別は付いたのだと俺の経験が語りますぞ。

 俺では攻略できない相手も確かに存在するでしょうな。


 お姉さんの様に!

 フィーロたんは俺の人生を賭けて攻略してみせますぞ。

 例えルートが存在しなかったとしても、運命すらもぶち抜いてフィーロたんに尽くすのですぞ。


「俺もタクトの嫌いな所を沢山見つけて張り合いますぞ」

「なんでそんなわけのわからない事を!?」

「まず無謀な所ですな。身の程知らずな所ですな。愚かな所ですな!」

「どれも同じですよ!」


 樹がうるさいですな!


「豚好きな所ですな。下半身で生きている所ですな! 豚なら何でも良い所ですな! きっと婚約者も攻略出来ると思いこんでいた所ですな!」

「自分の顔と行動を見てから言え!」


 錬も俺を注意しました。

 喧しいですな。

 俺は婚約者に負ける訳にはいかないのですぞ!


「ドラゴンを育てている所ですな! きっと奴隷も育ててますぞ! 領地経営もしているでしょうな!」

「それって最初の世界の俺も該当するけど良いの?」


 ……これは失敗ですな。

 言葉には気を付けろ、という戒めでしょう。


「訂正しますぞ」

「強引に出さなくて良いから。とにかく話を進めさせて!」

「わかりました。ですが、もう何点かだけ言わせてください」

「まだ続ける気なのか……」


 では続けますぞ。

 俺がタクトを嫌いな理由など腐る程ありますからな。


「最初の世界でお義父さんを悲しませた所ですぞ。フィロリアル様を多く殺した所ですぞ。これまでのループで何度も俺達に銃を向けた所ですぞ。応竜を使って世界を滅茶苦茶にした所ですぞ」


 まあ、こんな所ですかな。


「そもそも何の話をしようとしていたんだったか……」

「メルロマルクの暴走をどうやって処理するかです」

「軍諸共、勇者の力で消し飛ばすというのはどうですかな?」


 その程度、お義父さんが命じればこの元康、一人でだって出来ますぞ。

 前々回の様に敵軍全てを焼き払ってやります。

 と、俺がやる気を見せますが、お義父さん達は呆れた様な表情をしてますな。


「キタムラ殿、出来れば最小限の被害で抑えたいのが女王の目的なのだ。我慢してほしい」

「ですがそんな状態を収拾するには必要なのではないですかな?」

「うーん……」


 お義父さん達が唸っておりますぞ。

 そんなに難しい問題ですかな?

 最初の世界での出来事を思い出すに、お義父さんの無実を証明したあの出来事で結構な数の兵士共が捕まりました。

 どうせ処罰されるなら、誰がやろうと同じだと思うのですが。


「国民の感情とかあるからな」

「結局武力で解決させたら同じ事になりかねない訳だし……」

「はい。ですが解決の糸口が無いわけではないのです。それこそ、力で解決という意味では違いは無いでしょうね」


 女王がポツリと答えます。

 やっぱり俺の結論で間違い無いのでは?


「それはどんな?」

「今回、問題を起こしたのは我が夫を偽装した影武者と三勇教となります。国民の感情は実際、あまり関わっていないと私共は認識しているのです」

「つまり、元康さんじゃありませんが、国の首脳陣が暴走しているだけで、その頭を潰せば良いと?」

「すぐに次の頭が生えてくるんじゃないのか?」


 ……? ですな?

 女王が何を言おうとしているのか全然わかりませんぞ。

 しかしお義父さんが気付いて答えると女王が頷きました。


「なるほど、次の頭が生えるよりも早く手綱を取り返す訳だね」

「尚文さん。どういう意味ですか?」

「元康くんの昔の友人とかにいそうだよね。腐った会社の頭を飛ばして、そこに即位する金持ちとか」

「いましたな。それと何か関係があるのですかな?」


 確かに一見すると上手く会社が動き始めたように見えた豚がおりましたな。

 あの時は納得しましたが、その後の事は良く知りません。

 まあ豚の会社など、どうでもいいですがな。


「これもある意味強引な手ではあるんだけどね。今なら腐った幹部を追い出して女王が帰還すればどうにかなるかもしれないって話なんだよ」

「思い切り元康好みの展開だな。それで良いのか?」

「かといって元康くんの話に出てくる俺みたいに国民に改宗を勧めながら、下から国を変えるなんてさせてくれないでしょ」


 おお、確かに前回のお義父さんも仰っていましたな。

 メルロマルクにいられなくなると。


「この場合は逆だね。元康くんがあの王様を倒したから問題が起こったのなら、同じ方法で頭を戻す……女王に戻させれば良いんだよ」

「思い切り敵国なのに、大丈夫なんですか?」

「相手は三・勇・教なんだよ? 盾以外の四聖勇者を信仰する宗教、民間人は錬や樹、元康くんが神の如き強さを見せつけながら三勇教の悪事……俺を除外した四聖勇者が伝えれば言いんだよ」

「例えば?」

「そうだなー……うん。波が起こる原因の一つは三勇教が原因だ! 今の三勇教は神として看過できない、とか宣言しながら力を見せつけると国民の方は、対岸の火事になった挙句、三勇教は改革をしなくてはならなくなるだろうね」


 お義父さんの言葉に錬と樹は頷きます。

 ようやく理解した様ですな。

 俺はそんなに理解していませんが。


「四聖勇者の権力はかなりあるそうですからね。とはいえ、それでは排斥される勢力が抵抗しないのですか?」

「もちろん、抵抗するだろうね。だから神の名の元に、処分……みたいな強引な展開になるかな」

「物騒な作戦ですね」

「そうでもしないと暴走するメルロマルクが戦争を始めるだけだよ。やられた事をやり返して、責任者は処罰する。しばらくは女王やメルティちゃん自身の命を守るのが俺達の任務になるの……かな?」

「他にも色々と手段がありそうですね」

「まあね。だけどイミアちゃんの例を考えると亜人迫害の加速、戦争勃発が迫っている。変化球なんてやっていたら人間の国民も大量の死者が出かねないんだ」


 お義父さんの決断は割と早かったと思います。

 確かに、今回の亜人迫害の流れは酷いですからな。

 解決できるなら早い方が良いでしょう。


「第二のイミアちゃんは確実にいるはずだ。亜人を拷問する連中も十人や二十人じゃない。正義の押しつけになるけど、そんな状態を正しいなんて絶対にさせたくない」

「なるほど……前回はエクレールさんが尚文さんの活躍によって拷問の末に獄中死したそうですからね。少しでも被害者を減らすには強引な手で行くと」

「うん、後のケアは後で考えれば良い。それこそ余裕がある時にメルロマルクの問題を逐一解決して行けば良いと思うよ。国民の信頼を得た後で錬、樹、元康くんの口から三勇教は悪だ! とか言えば国民の方は一発で解決だろうね」


 神の言葉は絶対なのですぞ。

 都合の悪い事を言う神は神では無い、と行動を取らせる前に実績を積む。

 最初の世界や前回の周回では盾の勇者であるお義父さんが国民の生活向上をしていたのですぞ。


 これが錬や樹、俺が率先して行えばどうなりますかな?

 もちろん、最初の世界の様に自分勝手に行動せずに、真に人助けをすれば国民は盲信して行きますぞ。

 その土台を整えるために当面の大きな問題である三勇教の幹部を黙らせるのが目的になるのですな。


「尚文さんの考え、わかりました。まずは出せるだけの膿を出してから、傷口の治療を施すと」

「虫歯に例えると腫れが引くのを待ってから治療をすると言う事か」

「表現はどうかと思うけど、そうだね。実際にやると三勇教の抵抗があるだろうけど、まずは国交の正常化だよ。この世界の人達に戦争をしている暇は無いんだから」

「お義父さんの偽者とかが各地で暴れたそうですぞ。勇者のフリですな」


 この問題はどう解決するのですかな?

 奴等は手段を選びませんぞ。


「重罪なのに良くやる……とは思うけど、そう言った連中が出て来ても問題は無いよ。だって……錬と樹、元康くんは本物で、最初の世界や前回の周回とは違って好き勝手していないんだ。そんな時に勇者のフリして悪さをしたらどうなる?」

「尚文のフリをして悪さは出来ても俺達のフリは出来ない、か。良い手だな」

「偽者扱いをさせない様に後で善行をする……理にかなってますね」

「だから……作戦は決まったようなものさ。まずは活動しやすいように頭をもう一度潰して女王を帰還させる。後はメルロマルクの問題を解決するのが良い手だろうね」

「以前聞いた元康さんの話から察するに食料問題、インフラ整備ですね」


 生活する上で重要な要素ですぞ。

 これはメルロマルクだけではなく、周辺諸国、何ならフォーブレイでも行なうべきですな。


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