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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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子供は寝る時間

 豚王との一件の影響か、低いテンションのお義父さん達とユキちゃん達が留守番している客間に戻りました。

 そこには……。


「あれ? エクレールさん?」


 部屋の前でエクレアが待機しておりました。

 おや、もしもの事があったら~などと言っていましたが、無事の様ですぞ。


「うむ、勇者殿達はフォーブレイ王とのやり取りを終えた様だな」

「忘れていた訳じゃないけど全然来なくて不安に思ってた所だったよ。エクレールさんの方はどう?」

「メルロマルクの女王と話は出来たのか?」

「うむ……実は女王と出会う事は出来たのだが……勇者殿達の所へ戻るにしてもフォーブレイ王の命令とやらで会う事が出来なかったのだ」

「あー……先約って奴ね。とりあえず部屋に入りなよ」

「出来れば、私と共に来て話をしてもらいたいのだが……」

「どっちにしても遅くなっちゃったからサクラちゃん達に寝るように言ってからね」

「わかった」


 お義父さんが客間の扉を開けますぞ。


「あ、ナオフミおかえりー」


 サクラちゃんや助手、モグラが俺達を出迎えました。

 みんなは俺達を見ると各々喋り始めましたな。


「どうだったのー?」

「うん、これである程度は安全になったかな。サクラちゃんの怪我の報いは受けさせたよ」

「報いと言うか、罪を暴露して取り押さえただけですけどね」

「所持者不在の七星武器はどんな扱いになるんだ?」

「そういえば今回は新たな所持者が出てきませんでしたな」


 剥奪後は俺達の近くをしばらく漂ったかと思うと、フォーブレイの庭……神殿に飛んで行ったそうですぞ。

 新たな主が来るのを待つかのように台座を出現させて刺さったとか。


「鞭の新たな所持者は助手になる事が多いのですぞ」

「へー……ウィンディアちゃんが」

「何?」

「時と場合によってはウィンディアちゃんが鞭の勇者になるんだってさ」


 そう言うと助手は困ったように眉を寄せました。

 前の持ち主がタクトですからな。あまり良いイメージが湧かないのでしょう。


「あの鞭の勇者に?」

「あー……まあ、前任者はアレだからイメージ悪いかもしれないけどさ、鞭の勇者ってなりたくてもなれるかわからない偉い職業なんだよ?」


 お義父さんが宥めるように言いますぞ。

 まあその通りですな。

 タクトがおかしいだけですぞ。


「なの! お姉ちゃんが勇者になれるかもしれないの!」


 ライバルが助手に飛びつきました。

 おや? 助手はライバルを見て何やら興奮したように笑顔になりましたな。


「すごい……ガエリオンから強い力を感じる! これって竜帝の力?」

「ウィンディアちゃんにはわかるんだ?」

「うん!」

「そうなの! ガエリオンは真の竜帝になれたの!」

「すごいすごい!」


 ぴょんぴょんと我が事のように助手は喜んでいますな。

 反対にサクラちゃん達はライバルが強くなったのを感じて少々悔しげですぞ。


「絶対に負けないもん」

「そんな事を言っていられるのは今のうちなの! 絶対になおふみの心はガエリオンが射止めるなの!」


 バチバチとサクラちゃん達と視線で喧嘩をしていますな。

 俺も参加しましょう。

 今なら目から光線が出せるかもしれませんぞ。

 今度、そんな魔法が無いか勉強してみますかな。

 ファイアアイとかそんな魔法が無いか探しますぞ。


「尚文さん、話を戻しましょう。タクトの持っていた七星武器のその後に関して」

「エクレールさんの方の話を先に片付けるべきだと思うな。重要度は高そうだよ」

「戦力的な意味で七星武器を考えるのも手ではあるが……」


 どちらを優先すべきかとお義父さん達は若干考えておりますな。

 そんな会話とは関係なく、助手がポツリと呟きました。


「鞭……もしも選ばれたらお父さんよりも強くなれるかな?」

「どうだろうね。ウィンディアちゃんのお父さんもかなり強いからね」


 実際は強化方法が中途半端の錬に負けるほどの雑魚ですぞ。

 一般冒険者にすら苦戦するのではないですかな?

 とはいえ、子供の夢は大事にしなくてはいけません。

 サンタはいないかもしれませんが、異世界やフィロリアル様が存在するのですから、この世の夢は残っていますぞ。


「もしも鞭に選ばれて強くなったら……お父さんに勝って……鞭でペシペシしたい。ふ、ふふふふ……」


 助手が何やらおかしなオーラを立ち上らせて邪悪に笑っています。

 それはSMですかな?


「お父さんは私の物に……!」

「ウ、ウィンディアちゃん?」

「な、なの!」


 実はファザコンも限界を超えているのではないですかな?

 ライバルの親がそんなにも好きなのですかな?

 そのライバルが若干ドモッてますぞ。


「なーに? ガエリオン、盾の勇者」

「あ、あんまり思い悩まないようにね? ウィンディアちゃんがお父さんの事が大好きなのはわかったけど」

「そうなの! ガエリオンは会った事無いけど、きっと鞭の七星武器に選ばれた程度じゃ勝てないの!」

「……そっか。やっぱそうなのかな?」


 ライバルがお義父さんに抱きついて、もっと強くなりたい、もっと強くさせてくれ!

 とライバルの親が出て来てお父さんの耳元で囁いているのが俺には聞こえましたぞ。

 このままでは娘にペットにされかねませんからな。

 親の威厳を守るためには手段やプライドなど捨てるしかないのでしょう。

 どうしてこんなにも前回と差が出たのですかな?

 きっと死んだからこそ卒業したとかそんな関係なのでしょうな。


「鞭がウィンディアさんの手元に来なかった理由がなんとなくわかりますね」

「そうだな。おそらくこれを見抜かれたのだろう」

「なのかなー? 実はクラスアップとか能力が足りないだけだったりしてね」

「お姉ちゃんの邪悪な企みに反応してるなの!」


 ライバルが必死に否定しようとしていますぞ。

 半分は本人だからでしょうか。


「強くなれば、鞭の勇者になれる……かも、か……がんばろう」


 助手の邪悪な企みがこうして生まれた様な気がしますな。


「俺達の仲間から勇者が出てきたらいいね。イミアちゃんは土も掘れるしツメの七星武器にがんばれば選ばれるかもよ?」

「えっと……その……」


 モグラが自己主張をあんまりしませんな。

 とはいえ、俺は知っていますぞ。

 お義父さんが育てた村の者の服やお義父さんが指示した服を的確に作りだしたのがこのモグラである事を。


「まあ……イミアちゃんからしたら親戚を見つける事が目的だもんね。勇者になんてなりたくないよね? ごめんね」

「あ……う……そう言う訳では……無いです」

「ん?」


 お義父さんが優しい感じに首を傾げていますな。

 モグラはどうやら極度の恥ずかしがり屋みたいですぞ。

 そう言えば村に居た時もこんな感じだった気がしますな。


「俺に気を使ってくれてるんだね。大丈夫。イミアちゃんはイミアちゃん自身が幸せになれる選択をして行けばいいんだ」

「は、はい。ただ……力になりたいです。最低限、みんなを守れるくらい、強く……なりたい」

「うん、その為に協力するよ。奴隷狩りから仲間を守れるくらいにイミアちゃんを強くさせて見せるからね」


 お義父さんがそう微笑むとモグラは恥ずかしそうにうつむいてしまいましたな。

 何やら微笑ましいですぞ。


「さて、話は脱線しちゃったけどメルロマルクの件だね。明日フォーブレイ王にも話すけど、エクレールさんの話はそれ?」

「うむ。その件で勇者殿達に任務が言い渡されると思うが、今の内に女王と話をしてもらいたいのだ」

「何かあったのか?」


 錬がエクレアに聞きますぞ。

 するとエクレアが頷きました。


「私の口から言っても良いのだが、女王からの願いもあってな」

「わかったよ。という事だからサクラちゃん達、ウィンディアちゃんにガエリオンちゃん、イミアちゃんは先に寝ててね。俺達の事は待たなくて良いから」

「はーい!」

「元康様、私もですか?」

「名残惜しいですが、まだ俺には仕事があるようですぞ。ですが、すぐに片付けて来るので先に寝ていて欲しいですぞ。寝不足は美容の天敵ですからな」

「わかりましたわ、元康様! このユキ、元康様の為に、引いては自身の美の為にもぐっすりと眠りますわ!」


 俺の返答にユキちゃんがベッドにもぐりこんで寝入り始めましたぞ。

 コウは既に船を漕いでて注意するまでも無いですな。

 サクラちゃんも眠そうにあくびをしていますぞ。


「お父さんをペット……」

「な、なの! お姉ちゃん早く寝るなの! ガエリオンが一緒に居てあげるなの!」

「あの……それではお先に休ませてもらいます。おやすみなさい」


 モグラがペコリと頭を下げてからベッドに入りました。

 お義父さんは微笑ましいと言うかのように笑みを浮かべてから部屋の明かりを消したのですぞ。


「じゃあ行こうか、エクレールさん」

「ああ、こんな夜遅くになってしまって申し訳ない」

「しょうがないよ。何だかんだで政治的な敵だった相手の殲滅に時間が掛った訳だしね」

「やはりやったのか」


 まだタクトが捕えられて、取り巻きが連行された事は公にされていないのですぞ。

 エクレアには事前に未来の話をしていますからな。

 タクトの本性は耳にしているのですぞ。

 大体の予想は付いているようですな。

 お義父さん達はそういった部分をユキちゃん達に悟られない様にしていたのですぞ。


「こちらも承知の上だ。では向かおう」

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