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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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取り潰し

「ほれ、申してみよ。シルドフーリデンの七星勇者はどうなったのじゃ? ん?」

「ブ、ブヒ」


 そう豚王が尋ねると、言葉を濁す様にタクトの取り巻きにいた豚が呻いておりますぞ。

 ははは、悪い事はする物ではありませんな。

 人様に自分の行いを語れないとは、悪事に身を染めるとこうなるのです。

 ちなみに俺はどんな事もお義父さんに包み隠さず言えますぞ。

 言った後、怒られる事はありますがな。


「そもそもシルドフリーデンの代表をしていながら、犯罪者タクトと通じておるお主は何なのじゃ? シルドフリーデンの国民はこの事実を知って、どう思うかのう?」


 豚王はまるで煽るかの様に言いました。

 実際、シルドフリーデンの連中は自国の勇者が既に殺されているなど考えもしないでしょう。

 ましてや国の代表がそれに加担していた、となれば果たしてどうなるんでしょうな。

 現在のメルロマルクと同じく、相当な混乱を生むのは明白ですぞ。


「代表ともあろう者が我が国の国家転覆を企てた犯罪者に加担していたとは……自国の七星勇者殺しを含め、これはシルドフリーデンの総意という事で良いのか?」

「ブ……」


 豚……おそらくシルドフリーデンの代表が憎しみに満ちた表情で豚王を睨んでいます。

 追い詰められた豚というのは、どうしてこうも汚らわしいのでしょうか。


「ぶふふふ……さて、即刻この事実をシルドフリーデンに問い合わせるとしよう。フォーブレイの王命として、な」


 今回は前々回のような偽りを発信する事が不可能になりましたな。

 なんせ、証人にフォーブレイの王、そして騎士や兵士がいるのですぞ。

 しかも証拠である七星武器が今、目の前にあるのですからな。


「ブ、ブヒヒヒヒ!」


 タクトの豚共が騒ぐと同時にお義父さん達は臨戦態勢に入りました。

 どうやら、愚かにも力で解決するつもりの様ですな。


「勝てる見込みでもあるんでしょうね」


 樹が呆れ気味に答えますぞ。

 大方、都合が悪くなったので力尽くでタクトを助けるとかほざいたのでしょうな。


「僕と錬さんは逃げられない様にしておきます。元康さん、尚文さん、任せましたよ」


 逃げられると非常に厄介ですぞ。

 その為に俺達はこうして準備していたのですからな。


「まるで偉いみたいな言い方をしているけど、彼は世界基準で言う所の重犯罪者だよ。ま、君達が聞きいれるはずはないか……」

「タクトが犯罪者? 否! タクトこそ世界の至宝! やがて世界を……全てから救い出す神の子なのじゃ! タクトは何をしても許される……違う。タクトこそが法なのじゃ! それを、汝等如き矮小な異世界人共が邪魔立てする事は万死に値する!」


 なんとも身勝手な台詞ですな。

 では俺からも言わせてもらいますぞ。


「タクトが世界を救う? 無理ですな」

「何!?」


 そうですぞ。

 タクトは七星武器の力を使いこなす事すら出来ない、ただの世界の膿ですぞ。

 コイツの所為でどれだけの人達が悲しむのかわかりません。

 しかもこのドラゴンの挙動から察するに……。

 俺は槍に力を込めますぞ。


「少なくとも二人の勇者を殺した奴が間違っても勇者であるはずは……無いよね? しかもそれを秘匿した揚句、他にもいろんな事実を隠している。世界の危機だっていうのに」

「そんな奴が罰せられないはずはありませんな」

「ブフフフフ、四聖勇者達の話はもっともじゃ。タクトに大義など無い。諦めるが良い」


 と、宣言しましたがタクトの豚共は実力行使に出るようですぞ。


「竜帝の欠片を継ぐ者として宣言するの」


 ライバルがパタパタと羽ばたいてタクトのドラゴンを指差しました。

 その声はライバルのそれとは異なり、親のようですな。


「本能の赴くままフィロリアルを卑怯な手で殺すなど、竜帝の資格は無い! 竜帝は魔物の王、王は王としての礼節を重んじよ!」

「フ! 矮小な欠片が笑わせる! ここで貴様等四聖とそこの豚共々皆殺しにしてくれるわ!」

「「「ブー!」」」


 各々が一斉に飛び出してきましたぞ。

 本当に勝てると思っているみたいですな。

 まあこやつ等のLvは250とか聞いた覚えがあるので、自信だけは無駄にあるのでしょう。


「元康!」

「えっと、最初から決めた相手以外、殺さない様にね。そう……頼まれてるし」


 お義父さんがチラッと豚王に視線を向けますぞ。

 そうでしたな。これからより良い関係を築く為には必要ですからな。


「わかってますぞ! エイミングランサーⅩ!」


 動き出した豚共全員に向けてエイミングランサーでハチの巣にしてやります。


「「「ブー!?」」」

「ぐ……まだまだぁあああああああ!」


 タクトのドラゴンがグリフィンと一緒に負けじと飛びかかってきました。

 体が大きいから、タフな様ですな。

 加減して素早く状態異常にしないといけないのが厄介極まりないですぞ。


「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「エアストシールド……Ⅹ!」


 お義父さんが守るとばかりに一枚盾を出現させましたぞ。

 タクトのドラゴンはそれを破壊しようと魔法と共にツメで振りかぶってきました。

 そのまま盾を破壊して俺達を諸共噛み砕こうとしているようですな。

 ですが、ガツッと盾にツメがぶつかり、その盾に顔面をぶつけましたぞ。


「何! 我のLvは――」

「四聖を舐めないでもらおう!」

「ええ、その程度で僕達を倒そうなんて、不可能です」

「ではトドメを刺しますぞ! サクラちゃんを怪我させた恨み! グングニルⅩ!」


 古来からドラゴンには眉間が弱点だとか、ファンタジーマニアの豚が話していた事を思い出しましたな。

 ですが、普通の生き物は眉間を貫かれたら死にますぞ。


「ぐあ――」


 俺の投擲したグングニルがタクトのドラゴンの頭を貫きました。

 轟音を立てながらタクトのドラゴンは鮮血を飛び散らせ、地面に落ちましたな。


「くそ! この程度! フィロリアルを擁護する勇者達に私が一命を賭してでも――」

「お前も同罪ですぞ! 流星槍Ⅹ!」

「な!? うわ、タクト、たす――」


 グリフィンもついでにぶち抜いてやりました。

 おや? まだ槍が敵を倒せと反応していますぞ。

 何も無い所を槍が刺せと俺に訴えかけています。

 アイコンはビーストスピアですぞ。

 つまり……そこに狐がいるのですな!


「隠れても無駄ですぞ! バーストランスⅩ!」

「――ッ!?」


 何か口をパクパクと動かしていましたが、バーストランスを発動させて爆発させてやりました。

 後は前々回と同じく、巨大な狐の死骸が出現しただけですぞ。


「はははははは! お前等がどれだけLvを上げても程度が知れてますなぁあああ!」


 豚共を馬鹿にするように俺は言い放ちました。

 前々回も、前回も、今回も、お義父さん達を悲しませた罰ですぞ。


「ブ……ブブ!」


 何やらメイドコスをした豚が這いずりながらタクトの元へ行こうとしていますな。

 どうやらタクトの状態異常さえ治せば勝てると思いこんでいるご様子。

 無駄ですぞ。


 まあこんな豚よりも優先するべき事があります。

 豚共の共食いは豚王に任せますぞ。


 なので、ちゃんと確認しなきゃいけない事をやらなければいません。

 俺は死後痙攣をしているように見えるドラゴンの死骸を何度も突きますぞ。


「死にましたかな?」

「あの……元康さん……?」

「何やってんだ?」


 逃がさないとばかりに残ったタクトの豚共に状態異常攻撃をしていた錬達が、恐る恐る俺に尋ねました。

 何をしているも何も経験から連なる大事な確認ですぞ。


「コイツは前回の周回で応竜になりましたからな。ここで応竜になられたら前回の様な悲劇を繰り返してしまいます。だから念の為ですぞ! ブリューナクⅩ!」


 ドラゴンの死体に更なる追い打ちを掛け、完全に絶命しているのを確認しました。

 これで前回の様な結末は避けられましたな。

 ここだけは前回のお義父さんに深く注意されていたのですぞ。


「ああ、確か竜帝の中に応竜が居て、前回大暴れしたんだっけ?」

「実質倒したのに何度も蘇ったのですぞ。ですからちゃんとトドメを刺したか確認をしたのですぞ」


 シルトヴェルトで倒した時は全く動きがありませんでしたが、いつ問題を起こすかわかりませんからな。

 まあこれでも変身されるかもしれないので、不安は拭えませんが。


「そんな心配を払拭する、ガエリオンのお食事タイムなのー!」


 パタタと何にもしていなかったライバルがドラゴンの死体に舞い降りて来ました。

 そしてドラゴンの死体の中にバリバリと音を立ててもぐりこんで行きましたな。


「う……」

「かなりグロいな」


 錬と樹がそんな光景を見ておりますぞ。

 お義父さんの方は臨戦態勢を解いてから念の為とばかりに辺りを確認しております。


「フォーブレイ王、タクトの配下に伝達と言って騒ぎが起こらない様に注意は……してますよね」

「ブフフフ……当たり前じゃ。これから楽しい時間が来るのじゃからな」


 涎を垂らして気持ち悪いですな。


「しかしとても良い余興であった。ワシは満足じゃ」

「そ、それは何より……」


 お義父さんが返答に困る様な表情をしております。

 おい、豚王、いくらフォーブレイの王とはいえ、お義父さんを困らせたらお前もタクトのドラゴンの様にしてやりますぞ。


「なーに、四聖勇者達は何にも心配しなくて良い。この勇者を騙った犯罪者一味はワシが直々に罰するとしよう」

「え、ええとっと……はい、よろしくお願いします。間違っても世界戦争を起こさない様にお願いします」

「ブフフフ……当たり前じゃ。任せるのじゃ」


 こうしてタクトとその取り巻きはその日の内にLvリセットされて1になったのですぞ。

 ああ、留守番をしていたタクト一行の仲間はタクトが戻るまでに祝っていてくれとの伝言を受け、提供された睡眠薬で一網打尽だったそうです。

 俺達を罠に掛ける事にばかりに意識を割いていて、自分達の足元には全く気付かなかったのですな。

 後は色々と根回しをするそうですが、今、俺達が知り得たのはここまでですぞ。


「ではワシが直々に宣言しよう。犯罪者タクト=アルサホルン=フォブレイ……アルサホルンの家は取り潰し、即刻権力、財産、その他、関係各所、タクトに関わりのある者を全て罰し、没収せよ!」


 豚王は嬉々として宣言しましたな。

 そんなに楽しかったのでしょうか。


「フォーブレイ王!」


 そこに唖然としていた臣下の者が我に返って進言しました。


「タクトは勇者の武器を複数所持出来る、この終末の世に二人といない奇跡の子。どうか世界の為に猶予を与える事は出来ないでしょうか!」


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