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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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戦友

 クソガキにサクラちゃんまでバカにされ、さすがの婚約者も我慢の限界を迎えたそうですぞ。


「ふん! 良いわ。私を少しでも傷つける事が出来たら負けを認めてこれまでの事を謝罪してあげるわ。アンタ達程度、私一人で相手出来るもの。掛ってきなさい」

「……わかったわ」


 婚約者は頷いてサクラちゃんから手を放したそうです。

 サクラちゃんは婚約者を背に乗せて立ち上がりました。


「隙だらけよ! 馬鹿じゃないの?」


 その隙をクソガキは小剣を持って突いて来たそうですな。


「ほっ! ハッ! とー!」


 サクラちゃんはクソガキの攻撃を全て避けて見せたそうですぞ。

 何が隙だらけ、ですな。


「チ! なんで当たらないのよ! そんなに早く見えないのに!」

「もっと早く動けるよー? だけどみきっただけー」

「くぬ! ふん! まだまだ! 勝手に避けんじゃないわよ! 次避けたら酷いわよ!」


 とは言いつつ、むざむざ当たってやる必要は無いですからな。

 サクラちゃんは攻撃を避けて、足を引っかけてやったそうですぞ。


「あいた! 私に傷を付けたわね! 許さないわ!」


 思い切り睨みつけるクソガキと、睨み返すサクラちゃん。


「少しでも傷つけたら……じゃないのかしら?」

「ノーカウントよこんなの! 私が転んだだけなんだから!」


 淡々と答える婚約者にクソガキは激怒して言ったそうですぞ。


「くぬ! さっさと血を出して倒れなさいよ! 避けるんじゃないわよ!」


 小剣と、意表を突いたつもりでバレバレの魔法をサクラちゃんは婚約者を乗せて避けたそうです。


「そこ、みぎ、ひだり、フェイント」


 婚約者も相手の動きを見切っているのか、的確に助言してサクラちゃんは助かったそうですな。

 野生の勘で避ける事も可能ですが、変な流派を齧っているのか、読めない時があったのだとか。


「じゃあ行くよー!」

「な!」


 サクラちゃんが反撃とばかりに軽く脚に力を入れて攻撃しようとした矢先――


「はあぁああああ!」

「たああああああ!」


 突然、横に吹き飛ばされたそうですぞ。


「キャン――! う……」

「キャアアア!?」


 サクラちゃんは突然の横やりに婚約者共々受け身も取れずに倒れてしまいました。


「う……」


 婚約者が急いで立ち上がると、サクラちゃんは頭から……傷口からドクドクと流血をしていたそうです。

 く……聞いているだけで胸が締め付けられますぞ……。


「サクラちゃん!」

「い、一体何が……」


 急いで手当をする婚約者と戦意を喪失させずによろよろと立ち上がろうとしているサクラちゃんの目の前にクソガキの仲間……腕が巨大なドラゴンの腕になった女と羽を生やした女がクソガキを庇う様に立っていたそうですぞ。


「ナナ嬢……大丈夫であったか?」

「まったく……こんな所で何をしているのよ?」

「レールディア! アシェル!」


 クソガキは勝利を確信した笑みを浮かべて二人に答えたそうですぞ。


「こんな所でフィロリアルの……変異種と相手してるなんて」

「そうそう……こんな奴と何をしていたの?」


 サクラちゃんは殺気を放って相手を睨みましたぞ。

 見るだけで分かったそうですな。

 相手は人化しているけれど、ドラゴンとグリフィンだと言う事を。


「知らないわ! 突然、あのフィロリアルが私に襲い掛かって来たのよ!」

「嘘よ!」


 婚約者がサクラちゃんの傷口を止血しながら怒鳴ったそうですぞ。


「武器を先に取り出して襲って来たのはそっちだわ! こちらの同意も無く勝手に私闘をしてきたのよ!」


 と言う婚約者の返答に、間に入った二匹はクソガキを見ますな。

 しかし特に調べもせず、こう言ったそうです。


「タクトの妹であるナナがウソを言うはずないであろうが。やはりフィロリアルに誑かされた某国の姫君は虚言癖があるようじゃな」

「そうそう、フィロリアルなんて飛べない鳥を好む奴は嘘吐きなのよ」


 勝利を確信したとばかりにクソガキは二匹の後ろで挑発していたそうですぞ。

 なんとも腹立たしいですぞ!

 俺がその場にいたら即座にぶち殺しています!


「どちらにしても、ナナ嬢に手を出そうとした罪、万死に値する! ここで仕留めてくれる!」

「死ね! フィロリアル!」


 二匹が各々、強力な魔法の詠唱をし、魔法を放ちました。

 とても大きな氷塊と、竜巻を凝縮した魔法だったとか。


「メルちゃん危ない!」

「キャ! サクラちゃん!?」


 サクラちゃんは婚約者を守る様に突き飛ばしたそうですぞ。

 ここでサクラちゃんは飛んでくる氷塊と竜巻がゆっくりに見えたそうですな。


「なの!」


 サクラちゃんが身の危険を感じたその時。

 ライバルが火の玉を空から放って、サクラちゃんを守る様に爆裂させたそうですぞ。

 そして速度の落ちた氷塊と竜巻をそれぞれ弾き飛ばしたとか。


「一体何をしてるなの!」


 スタッとライバルは助手を乗せてサクラちゃんを庇う様に立ったそうですな。


「ん? 竜帝……? まさかフィロリアルを庇うとは……ドラゴンの風上にも置けない愚かな竜帝だ。汝は万死に値する!」

「怪我してる相手に三人掛かりで卑怯なの!」

「最強にして高貴な竜帝の我に卑怯だと! フィロリアルなんぞを庇う下等で下劣なドラゴンの分際で!」

「ドラゴンだとかフィロリアルだとか、そんなの関係無いなの! 卑怯なものは卑怯なの!」

「ふん、フィロリアルの様な蛆虫共に卑怯も糞も無いわ! 目に入ったから惨たらしく殺すのだ!」


 サクラちゃんとライバルが視線を交差させますぞ。

 お互いお義父さんを巡る相手ですが、思う所があったのでしょう。

 もしかしたら戦友的な関係なのかもしれません。


「アレが……お父さんとは異なる竜帝……凄く、身勝手……お父さんとは全然、違う」


 助手も相手を見て、戦意を高揚させて戦う気を出したとの話ですぞ。

 曰く、ドラゴンの誇りと矜持を穢す行為だとか。


 ハッ! そんな事知りませんな。

 とは思いますが、サクラちゃんを守ってもらったのです。今回ばかりは感謝してやりましょう。

 そして……ライバルとして相応しいと評価せざるを得ませんな。


「むざむざと現れるとは、丁度良い。その欠片を奪ってくれる!」

「お前の様な竜の誇りの無いドラゴンに負けないなの!」


 子供同士の争いから本格的な争いへとシフトしてきていますぞ。

 これでライバルは俺達が集めた竜帝の欠片をある程度持っていますからな。

 しかし……クラスアップをしていない、資質向上だけのライバルが勝つのは難しいと思いますぞ。


「今度は私がサクラちゃんを守る!」


 婚約者はサクラちゃんを守る為に前に立ち、突然現れた相手ですが、味方であるライバルを援護したのだとか。

 ですが、Lvが劣る婚約者とライバル達はすぐに追い詰められていったそうです。

 とはいえ、倍以上のLv差がある中、相当善戦した様ですな。


「喰らえ!」


 先制攻撃とばかりにクソガキが魔法を放ち、それに便乗してグリフィンと竜帝が攻撃したその時。


「――エアストシールド!」


 既に魔法はサクラちゃん達に向かって放たれていました。

 もう止まる気配は無く、着弾までに助手が妨害できるか、という所に影が間に入って来て、スキルによって召喚された盾によって、クソガキの魔法は力を失ったそうです。

 そして婚約者とサクラちゃんを襲うグリフィンと竜帝の攻撃を一瞬にして弾き返してから、言いました。


「……一体何が起こっているかはよくわからないけど、一方的に攻撃しているようにしか見えなかったから、止めさせてもらった」


 そこにはお義父さんがモグラを抱えて佇んでいたそうです。

 さすがお義父さんですぞ。

 みんなの危機に現れたのですな!

 しかし、婚約者の話す表現が多いですぞ。

 まあお義父さんはかっこいいですからな。

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