挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
638/919

かくれんぼ

「とは言っても、滞在した町の子供達相手に遊んでいる時がありましたからね。大方遊び相手を見つけてちょっと離れているだけかもしれませんよ」


 ですな。俺もそう思いますぞ。

 ユキちゃん達フィロリアル様は楽しい事が大好きですからな。

 子供ならば大抵仲良くなりますぞ。

 特にサクラちゃんとコウは友達をすぐに作ります。

 まあ、コウはモグラの件があったので、子供をご飯と思っていた所もあるでしょうが。


「なーに、心配ありませんぞ。こんな時こそ魔物紋があるのですからな」


 俺は視界に浮かぶ魔物紋を呼び出しますぞ。

 ユキちゃん達はそんなに遠くに行った訳じゃない様ですな。


「この距離なら問題ないですな。心配なら俺が迎えに行きますぞ」

「そうだね。一応、探しに行った方が良いかも」

「ふむ……心配し過ぎかもしれないが……」

「まあ今の所、おかしな事は起こって無いし……俺と元康くんとで探しに行けばすぐに見つかるかな?」

「俺達はどうする?」

「馬車で待っててよ。何かあったら、それこそ注意して」

「ま、連中が襲ってきても今の錬や樹なら返り討ちですぞ」


 もはや錬や樹は十分に強いですからな。

 不意打ちされても返り討ちに出来るほどでしょうな。


「あ、あの……一緒に行きます」


 モグラが申し訳なさそうに手を上げますぞ。


「ガエリオンも行くのー」


 助手は渋々と言った形でライバルの提案に頷いているようですな。

 なんの風の吹き回しですかな?

 ライバルが付いてくる理由が思いつかないのですが……。

 む……もしやちょっと離れていた程度で皆に迷惑を掛けたと煽るつもりなのでは?

 そんな事はさせませんぞ!


「じゃあ、この人員でサクラちゃん達を迎えに行こうか?」


 俺達はそれぞれ馬車から降りてフィロリアル様達を探しに出発しましたぞ。

 視界に浮かぶ範囲ではそこまで遠出はしておりませんな。


「こっちだね」


 お義父さんはサクラちゃんを登録しておりますからな。

 方角が同じなら安心でしょう。

 そう思った矢先……。


「こちらですぞ」

「え?」


 魔物紋で指示したユキちゃん達の方角とお義父さんが指差す方向が異なりました。

 つまりユキちゃんとコウの居場所とサクラちゃんがいる場所が違うという事になりますな。


「いきなり問題にぶつかったね」

「ガエリオンが飛んで探すの?」

「そこまでする事じゃないと思うんだけど……それも手かもね。元康くん、ユキちゃん達は一緒?」


 お義父さんの質問に俺は魔物紋で詳しくユキちゃんとコウの座標を特定しますぞ。


「少しだけ離れていますな」

「じゃあ……」


 二手に分かれるように班決めをお義父さんはしようとしております。

 ですが、ガシッとお義父さんにライバルとモグラは擦り寄っていますぞ。

 その反応はどういう意味ですかな?


「はぁ……わかったよ。じゃあ元康くん、ユキちゃんとコウを見つけたらここでまた会おうか。俺がもし遅かったら、サクラちゃんの方でトラブルがあったかもしれないから探しくれると助かるよ」

「わかりました!」


 俺はお義父さんと別れてユキちゃん達を探し始めました。



 どうやらユキちゃん達はこの大きな城の中庭でかくれんぼでもしようとしていた様ですな。

 フォーブレイの中庭は迷路のように入り組んでいる様ですぞ。

 緑のアーチとか色々と選定された植物が目に止まりますぞ。

 花壇もあって、綺麗ですな。まさしく城の中庭……ですかな?

 茂みにコウが隠れているのを見つけましたぞ。


「コーウ、何をしているのですかな?」

「あ、キタムラ。えーっとねーかくれんぼー」


 茂みから顔を出してコウが元気よく答えてくれました。


「そうなのですかな? ですが、勝手に出かけてはいけませんぞ。ここは少し危険ですからな」

「えー? コウ、キタムラに少しお散歩に行くって言ったよー?」


 そう言えば馬車の中にコウが顔を出してお散歩したいと言っていましたな。

 フィーロたんを描いていて気が付きませんでした。

 これはうっかりですな。


「アマキとカワスミが寝てるからイワタニにしーって言われてたし」


 なんと、お義父さんが気を利かせた言い付けが裏目に出ていたのですな。

 俺はフィーロたんの絵を描く佳境だったので空返事をしてしまったのでしょう。

 これは反省しなくてはいけませんな。


「そうでしたな。これは悪い事をしましたな」

「もうお迎え来たー?」

「まだですぞ。ですが、コウ達が出かけたのをお義父さん達が心配していたいので、こうして迎えに来たのですぞ」

「そっかー……」

「何かあったのですかな?」

「えっとねー。メーとかくれんぼで遊んでたのー」


 誰ですかな?

 おそらく新しく出来た友達でしょうな。

 しかしコウは相手の苗字読みをする子だったはずですが……。


「メーとは誰ですかな? 名前を教えて欲しいですぞ」

「えっとねー……よくわかんない。サクラと一緒にいた」


 ふむふむ、もしかすると名前を聞いていないのかもしれませんな。

 サクラちゃん達と仲良くしてくれるのですから、後でお礼を言う事にしましょう。


「サクラが鬼で、コウ達隠れたんだけど、まだ来ないー」

「おお……遊んでいる所悪かったですぞ。ですが、一度来てほしいですな」

「わかったー。後でサクラとユキとメーに説明してね?」

「はいですぞ」


 俺はコウを連れてユキちゃんの方へと行きますぞ。

 ユキちゃんは巧妙に落ち葉を集め、穴を掘ったのか、土の中に体を沈ませて隠れていました。

 かくれんぼとの事ですが、中々に本格的ですな。

 しかし……白いユキちゃんの綺麗な羽と服が台無しですぞ。


「おや? 元康様、どうしました? コウも」

「少しかくれんぼは中断してほしいのですぞ。みんなが心配しますからな」

「あら? 残念ですわ。私の完璧にして華麗な潜伏技術でサクラを驚かせようと思っておりましたのに」

「もっと優雅に……噴水で戯れる水鳥の真似をするのですぞ!」


 俺が近くにある噴水を指差し、華麗なポーズで噴水内に侵入してバレリーナの真似をして踊りますぞ。


「さすが元康様ですわ! とても優雅で、私、感激で涙が止まりませんわ! なるほど、水鳥の真似ですわね」


 ユキちゃんがフィロリアル様の姿に変身し、水鳥の真似をしております。

 これでドロが少しは落ちると思いますぞ。


「わー! なんか楽しそう! コウも混ぜてー」

「良いですぞ!」


 俺達はしばらく、噴水で優雅さを競いました。

 服がびしょびしょになりましたな。

 水も滴る良いフィロリアル様と俺ですぞ。

 なんて遊んでいると、爆音が聞こえてきました。


 む!? 非常事態ですな。

 音がしたのはお義父さんが指を向けていた方角ですぞ。


「ユキちゃん達! 行きますぞ!」

「はいですわ!」

「出発ー!」


 息を合わせて噴水から飛び出して俺達は爆発音の方へと向かいました。



 音の方へ向かうとお義父さんがフィロリアル形態のサクラちゃんを介抱しているように見えますぞ。

 サクラちゃんはぐったりと地面に倒れ伏しております。

 その隣には……青い顔をしてポロポロと涙を流してサクラちゃんを心配そうに話しかける婚約者がおりました。


「元康くん! ちょうど良かった! サクラちゃんの手当てを手伝ってくれない? 俺の回復魔法や傷薬じゃ効力が足りないみたいで……」


 ライバルと助手、モグラが不快そうに何やら遠くを睨んでおりますぞ。

 ですが今はそれ所ではありません。

 誰がこんな事をしたのですかな……?

 必ずそいつを吊るし上げ、血祭りにあげてやりますぞ。

 とはいえ、今はサクラちゃんを治療するのが先ですな。


「あ、メーだ。サクラどうしたの?」

「うー……痛いー」


 サクラちゃんが呻くので俺は急いで駆け寄って回復魔法を唱えますぞ。

 リベレイションクラスの回復魔法を唱えればすぐに傷は治るでしょうな。

 しかし……地味に深い傷ですな。

 辺りには血が滴っておりますな。

 サクラちゃん程のフィロリアル様がこんな傷を負うとは……犯人は相当厄介な相手でしょうな。


「あ、あの……その……ご、ごめんなさい」

「なんで君が謝る必要があるのかな? 君は絶対に悪くない」


 お義父さんがぺこぺこと謝る婚約者に首を傾げていますぞ。

 そうですぞ。

 婚約者は俺のライバルですが、同時に俺が認める相手でもあります。

 何の理由もなく、こんな事になるはずがないのですぞ。


「メルちゃん、サクラはー……大丈夫ー」


 サクラちゃんが首を伸ばして婚約者を慰めます。


「じっとしててサクラちゃん。まだ治療が終わって無いんだから」

「はーい」

「何があったんですの?」


 ユキちゃんがお義父さん達に聞きますぞ。


「俺も途中から駆けつけたからよくわからないんけど、だけどあれは……元康くん、タクトって奴と遭遇したよ」


 なんと! ここで遭遇するとは運が悪いですな。

 しかもサクラちゃんに怪我を負わせるとは……元々奴等を倒すつもりでここに来ましたが、仮にお義父さんが止めたとしても許せない蛮行ですぞ。


「ところでお義父さん、こいつは婚約者ですぞ」

「前回の周回とかでの知り合いなの?」

「敵ではないので安心して良いですぞ」

「そう……まずはメルちゃんで良いのかな? 最初から教えてくれない?」

「あ、はい! その……私が悪かったんです。ごめんなさい……実は――」


 婚約者は経緯を説明し始めました。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。