「まね”された”側の”ティラミスヒーロー”にも商標問題」というニュースがありました。日本企業に商標を勝手出願されたシンガポールの本家「ティラミスヒーロー」にも、ニュージーランド(すみません、引用元には「ニュージーランド」と書いてありましたがツイッターを見るとカリフォルニア州オークランドの方のようです)のイラストレーターによるイラストを勝手に流用した疑惑があるという話です。なお、タイトルにある「商標問題」は正確には「著作権問題」です。
件のイラストレーター、Gemma Correllさんのツイートを見ると、本家「ティラミスヒーロー」の図形商標で使われている猫のイラストは、キャラこそ違うものの構図やタッチはそっくりです。ちなみに、Gemma Correllさんは日本語版の本も出している有名な方のようです。
もし、日本において著作権で争うことになると、個人的見解ではありますが翻案権の侵害とされる可能性が十分にあるのではないかと思います。元のイラストにある(ちょっとパースの狂ったような)表現上の個性がそのまま再現されているからです。
なお、著作権(翻案権)の侵害には、元作品へのアクセス(依拠性)も要件となりますが、本家「ティラミスヒーロー」も、Gemma Correllさんの作品を参考にしたことを認めていますのでこの点も満たされるでしょう。ただし、著作権侵害になるかどうかは権利者次第(権利者が許諾すれば侵害ではない)ので、最終的にはGemma Correllさんがどう思うかに帰着します。
なお、「ティラミスヒーロー」の文字商標を日本企業が勝手に登録してしまった件はこの話とは直接関係ないので、当該日本企業の(少なくとも道義的な)責任がなくなることはありません。
著作権に話を戻すと、仮に(あくまで仮に)翻案権の侵害が認められたとすると、それでも、シンガポール本家「ティラミスヒーロー」は、ロゴの猫イラスト使用について、日本の「ティラミスヒーロー」に対して著作権の権利行使が可能です(加えて、Gemma Correllさんも、日本の「ティラミスヒーロー」に対して権利行使可能です)。
著作者Aさんが著作物Xを作り、著作者Bさんがそれに独自の表現Yを加えた二次著作物X+Yを作ったとします。この時に、第三者であるCさんが勝手にX+Yを使うと、AさんもBさんも、Cさんに対して権利行使できます。BさんがAさんの許可なくX+Yを作った場合、そのことについてAさんはBさんに翻案権の侵害を主張できますが、それはBさんがCさんに権利行使できることを妨げません。
ちょっとややこしいのでもっとわかりやすいたとえを使うと、著作権侵害の疑いが強いパロディ同人誌を他人に勝手にコピーされて販売されてしまったら同人誌の作者は泣き寝入りかというとそんなことはない、ということです。