Animation OST


Tumeo Imahori (今堀恒雄)/trigun the first donuts ( 8/10)

テレビ東京アニメーションの「トライガン」のサントラを装った、元ティポグラフィカのギタリスト、今堀恒雄氏のソロ。全20曲71分。
歌もの2曲はよく知らない人がコンポーズ。しかし1曲のミスティックな女性ボーカルには聞き覚えがあって、クレジットを見れば AJA (アヤ)さんであった。

参加メンバーはもろにティポグラフィカ/グラウンド・ゼロ人脈。(僕の知らない人もいるが)歌もの2曲と4曲の打ち込み(これも見事)を除いたら、完全にフル・バンド編成の作品と言っても通用すると思う。

特にラテン・テイストのアコースティックな曲が秀逸。そういう曲でのアコベはやはり水谷浩章氏。チェロをフィーチャーしたトラッド風の曲も良いっす。

1回半くらい聴いた現時点では、僕にはやや堅実過ぎな音かなーという印象もあったりするけど聴き込んでいくと変わるかもしれない。つーことで聴き込んでからのレビューはHPに書こう。

以上がファースト・インプレ。今現在は、非常に誠実な作品という感覚が一番にある。

大きく分けると、前半~挿入曲、エンディング曲、オープニング曲~後半。という構成。もっと言ってしまうと、前半~サントラのお約束で収録しなければならない曲~後半。となる。
楽曲単位でみると、真ん中の「お約束」の3曲ははっきりと毛色が違っている。だが、アルバムを通して聴くとさほど浮いていない。
本作のオープニングと前半部分の最終曲が打ち込み主体の曲。そして後半部の1曲目と、最終曲が打ち込み主体の曲。つまり、斬れまくったバンド・サウンドの前後を、明快なテクノのインストにすることで違和感のない流れを用意し、そのど真ん中に「お約束」の曲を入れてしまっているわけ。

「お約束の曲」をボーナス・トラックにして、ラストに付け足しているサントラもある(本末転倒)。
しかし、今堀氏が本作で行った作りなら、主題歌目当てのアニメ・ファンも失望させられることはないし、ティポグラフィカに魅了された僕らにも大きな満足を与えてくれる。とても誠実な姿勢だし、敬意を表したいと思う。

では各曲のインプレ。数字はトラックナンバー。

01.
打ち込み主体。ドラムンベースのようではあるが、ビートをメインに聴かせるという段階にまで達しておらず、インダストリアル・テクノに超絶ギターが加わったような感じ。
02.~04.
リコメン風、もしくはティポグラフィカ風といった方が良いのか。リズム隊がもろにクリス・カトラー&ジョン・クリーグスしている曲もあって最高。
05.~06.
プログレッシブ・ブルーズ。今堀さんはブリティッシュ・トラッドをルーツの一つとしていると聴いているけれど、こういう曲を聴くと Led Zeppelin (ジミー・ペイジ)から順次さかのぼっていったんだろうなぁー、と思う。
07.~08.
表面上は、人力ドラムン・ベース~アンビエント・テクノみたいな感じに聞こえてくる。しかしバンド演奏 (^-^;)
07 の「PHILOSOPHY in a Tea Cup」が本作のベスト・トラックだと僕は思う。スクエアプッシャーやジンサクがアルバム一枚で成し遂げたことを、この曲は4分30秒で成している。弾きまくりのジャズ・ピアノ、バカテク軍団のアンサンブルが素晴らしい!
09.
このアルバムにしてはオーソドックスなムンベー。
10.
トライガンの挿入曲。AJA さんの魅惑の歌唱が聴けるミドル・テンポの曲。トリップ・ホップ風といっておこうか。今堀さんは不参加。
11.
トライガンのエンディング・テーマ。男性ボーカルもの。今堀さんは不参加。
12.
トライガンのオープニング・テーマ。今堀さんのハードロッキンなギターはちょっと珍しい?
13.
サンプリング主体の踊れる音楽。といってもダンス・ミュージックというより民族音楽的。
14.~19.
ティポ/ゼロ人脈のバンド・サウンド。前半よりリフ主体というか、メロディアスな気がする。
20.
ほぼシンセ・ミュージック。やや難解で、ジャーマン・テクノのカオスを感じる。

とまぁ後半は端折ってしまったが、誠実で、同時にしたたかな傑作だと思う。


天使創造すなわち光 (7/10)

70年代初期から活躍している、日本のカルト・フォーク・シンガー、J・A・シーザーが楽曲提供しているアニメーション「少女革命ウテナ」のサウンドトラック第4弾。
本作は劇団万有引力のメンバーがボーカル(主に合唱)を手がけているのに注目。

思えば前3枚のサントラは、収録時間が1時間くらいあって、曲数もたっぷりだった
けれど、本作は37分30秒で12曲とLP時代のフォーマットにのっとっている。その分まとまりが良いし、曲のつぶも揃っている。何より、主題歌やテロップ用の曲が、おざなりに収録されていたりしないのがいい。

表紙裏に「上記の楽曲は、以下の作品より提供していただきました。」と書いてあって、よくよく内容を見ると、3曲を除く全曲が万有引力の劇から提供された楽曲。
全然ウテナのアニメのサントラじゃないじゅないか(笑)

ということで、ウテナのサントラという客寄せ看板の下で趣味に走っているのがミエミエの、
とっても良いダーク・シンフォ作品である。

惜しむらくはギター以外のインストゥルメンタルがシンセサイザーなことか。


著作権情報
最終更新日 : 1998/09/17.