米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、県による埋め立て承認取り消しの是非が争われた最高裁判決に関し、不確かな情報を含む複数のチラシが県内各地で配布されていることが22日分かった。「辺野古移設をみんなで考える実行委員会」と記されたチラシには「普天間移設は20年以上前に合意し、最高裁でも『沖縄の事情に即したもの』との判決が出ている」と記載していた。
しかし、最高裁判決は2015年10月に県が埋め立て承認を取り消したことに関し争われた。埋め立て承認に「瑕疵(かし)」があったのかどうかに判断を下したが、辺野古移設に関する直接的な見解は示していない。国と県の訴訟に詳しい弁護士は「『沖縄の事情に即したもの』という裁判所の判断は見当たらない」と指摘した。
同実行委員会に所属する県外在住の男性によると、チラシは保守的な考えを持った複数人によるグループが3万~5万部発行したという。男性は執筆者の一人で一部表現について「言葉のあや。疑問に思った部分があれば申し訳ない」と誤りがあったことを認めた。
「宜野湾市民の安全な生活を守る会」と記された別のチラシは「県民投票は最高裁判決に違反?」と見出しに書いた。発行した男性は取材に対し「県民投票が違法というわけではない」と誤った記述があることを認めた上で「日本国憲法は国際法を順守しなければならないと言っている。地方に権限がないことをなぜやるのか」と述べた。
県は県民投票は県民からの直接請求で制定された条例によって実施が決まっているとした上で「最高裁判決とは無関係だ」とした。 (ファクトチェック取材班・池田哲平、安富智希)
「偽・憎悪」サイト減少 つぶやき、知事選の6割
名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票に関し、フェイク(偽)やヘイト(憎悪)表現の言説を書き連ねたブログやサイトは、21日時点ではネット上でほぼ見られず影を潜めている。
昨年9月30日に投開票された沖縄県知事選挙の期間中は、玉城デニー候補(現知事)や新基地建設に反対する人々に対し、真偽不明の情報に基づいた文章や動画を並べたサイトやブログが乱立した。ネットメディアが発信元を探ったり、選挙が終了したりした時点で相次いで削除された。
県民投票では告示前、新基地建設反対県民投票連絡会が開設したツイッター(短文投稿サイト)の情報発信アカウントに似せ、正反対の主張を発信するアカウントなどが確認された。だが、フェイクを書き連ねたブログやサイトは確認されていない。ツイッターの投稿数は告示日以降急増したが、告示日から8日間の投稿数を知事選時と比較すると、58・1%にとどまっている。
県知事選に比べフェイクを発信するサイトやツイッターの投稿数が少ないことに関し、ネットに詳しいジャーナリストの津田大介さんは「選挙とは異なり一つの争点で行われることでデマを流しづらい。政府が県民投票の結果に左右されないとの考えを示したこともあり、露骨に介入するメリットがないと判断しているのではないか」と分析した。その上で「既存のメディアのファクトチェックが功を奏している面もあると思うが、次の知事選や国政選挙ではまた出てくる」と推測した。
18~21日までの4日間に県民投票についてのツイッター投稿数は、約6700件(18日約2千件、19日約1500件、20日約1600件、21日約1600件)だった。17日にホームページで配信した琉球新報社など3社の合同世論調査の結果に対する意見などが多かった。
(ファクトチェック取材班・安富智希、宮城久緒)