検証と見解/官邸の本紙記者質問制限
官房長官会見での本紙記者の質問を巡る官邸側の「事実誤認」指摘への本紙見解
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【政治】<今さら聞けない統計不正 Q&A>(中)調査法変更 違法の疑いQ 「毎月勤労統計」の不正は、具体的にどういう内容ですか。 A 二つあります。一つは勝手に調査方法を変更したことです。勤労統計は、従業員五百人以上の大規模事業所は全て調べるルールです。しかし厚生労働省は二〇〇四年以降、東京都に限り約三分の一の抽出調査に変更しました。統計法は、調査方法の変更に総務相の承認を義務付けており、違法の疑いがあります。 Q なぜ抽出調査に切り替えたのですか。 A 不正を検証している厚労省の「特別監察委員会」の調査報告によると、不正を始めた元係長は「全数調査は企業の苦情が多く、都道府県の負担を考慮した」と証言したそうです。 Q 厚労省では、どの範囲の職員まで不正を知っていたのですか。 A 歴代の担当者には、不正を認識していた人もいました。一七年冬ごろには、担当室長が統計部門の責任者である「政策統括官」に不正を打ち明けましたが、統括官は修正を指示しただけで放置。結果的に、総務省の統計委員会が一八年十二月に統計値の不自然さを指摘するまで、問題は表面化しませんでした。 Q もう一つの不正は何ですか。 A 一八年一月に当時の担当室長が、抽出調査の結果を全数調査の結果に近づける補正処理をひそかに始めたことです。この時期は中規模事業所(従業員三十~四百九十九人)の調査方法が変わるタイミングでもあり、抽出調査という不正が発覚しないよう、つじつまを合わせたとみられています。 Q 組織的な隠蔽(いんぺい)ということですか。 A 監察委は今年一月の調査報告で隠蔽はなかったと結論づけました。その後、厚労省の職員のみで関係者を聴取したケースなどが判明し、与野党から監察委の中立性を疑われたため、聴取をやり直しています。 Q 不正確な統計値が経済指標に使われてきたことの影響は。 A 都内の企業の多くが調査対象から漏れていたことで、統計上の賃金は長年、低く抑えられていました。しかし、一八年一月に補正処理を始めたことで上振れし、前年同月比の伸び率が、実態より過大になりました。厚労省は不正発覚後に賃金伸び率を下方修正しました。野党は「アベノミクス偽装だ」と批判しています。
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