バイトテロの社会問題化

//バイトテロの社会問題化

    バイトテロの社会問題化

    回転ずしやコンビニ、ファミレスなどで、アルバイト店員が悪ふざけする動画が次々と公開されたことが社会問題となっている。ネット上では厳しく対応すべきだという声が多く、実際、被害を受けた「くら寿司」は、刑事、民事での法的措置の準備に入っている。

    こうした行為に及んだ本人に責任があるのは明白だが、現実には不祥事を起こしたアルバイト店員に対して、いちいち法的措置を取っていては、業務が回らなくなるのは明白である。一方、採用基準を厳しくすれば、今度は人手の確保が難しくなるだろう。

    安価な賃金で大量のアルバイト店員を雇えば、一定割合がこうした行為に及ぶ可能性は高く、これは一種の構造的な問題といってよい。世間一般の人々は「ケシカラン」「厳罰に処せ!」といって大騒ぎしておしまいだろうが、企業の側はそうはいかない。アルバイト店員の言動が大きなリスク要因となった今、機械化と優秀な外国人店員へのシフトを加速させるだろう。

    飲食店やコンビニなどでの「バイトテロ」が社会問題になっている(写真提供:ゲッティイメージズ) 飲食店やコンビニなどでの「バイトテロ」が社会問題になっている(写真提供:ゲッティイメージズ)

    不適切行為は日常的に行われている

    回転寿司チェーン「くら寿司」のアルバイト店員が、ゴミ箱に捨てた魚を調理するような動画をInstagramにアップしたことから炎上騒ぎが発生。くら寿司を運営するくらコーポレーションは謝罪したが、同社の株価は大きく下落した。その後、同社は、不適切な行為を行ったアルバイト店員を退職処分とし、刑事、民事での法的措置の準備に入ったと発表している。

    くらコーポレーションが出した謝罪のプレスリリース くらコーポレーションが出した謝罪のプレスリリース

    くら寿司の騒ぎに影響を受けたのか、その後、コンビニやファミレスなどで悪ふざけの動画を公開するケースが相次いでおり、ちょっとした社会問題になっている。

    以前もSNSで店員が悪ふざけしている様子を公開する問題が発生したが、当時は主にTwitter上で静止画をアップするケースが多かった。だが、今回の主な舞台はInstagramで、しかも動画がメインとなっている。ネットの消費者向けサービスはこのところ動画シフトが鮮明になっており、一連の不適切行為も、ネット企業のサービスに連動したものといってよいだろう。

    恐らくこうした行為は以前から日常的に行われており、TwitterやInstagramなど、新しいSNSのツールが普及するタイミングで、顕在化したと考えるのが自然だ。

    安価な賃金で大量に雇用すれば、一定割合で不祥事は発生する

    世間一般では、不適切行為を行った店員に対して「厳罰に処すべきだ」といった意見が大半を占めている。一連の行為は到底許容されるものではなく、こうした意見は正論そのものだが、事はそう簡単には運ばないだろう。

    くら寿司が、問題を起こした店員に対して法的措置を検討していると発表したのは、顧客の信頼回復と同時に、アルバイト店員に対する抑止効果を狙ったものと考えられる。だが、現実問題として、こうした行為を行ったアルバイト店員に対していちいち法的措置を取っていては業務が回らなくなってしまう。

    アルバイト店員は、在職期間が短いため、全員が企業や業務に対して高いロイヤリティを持っているわけではない。低賃金で大量のアルバイト店員を雇用すれば、何かしらのトラブルは避けられないだろうから、一連の不祥事は構造的な問題といってよい。

    Twitter、InstagramとSNSが進化するたびにこうした不祥事が発生してきたということは、近い将来、さらに強力なSNSが登場してくれば、スケールが大きくなった形で同様の不祥事が再発生する可能性は高い。

    問題が構造的である以上、今のままの体制では根本的に不祥事の再発を抑えることができないので、企業の側は抜本的な対策について考えざるを得ない。具体的には機械化の進展と外国人の雇用促進である。

    結局は機械化や外国人登用を加速させる?

    ファストフードやコンビニの店員は、一般的には単純労働とみなされているが、その業務内容は多岐にわたっており、単純労働とは言い切れない部分がある。このため他の業種に比べて、AI(人工知能)化、機械化が難しいと言われている。

    だが、機械化を業務の一部分に限定する、あるいは、多少のコスト増を容認するのであれば、機械化を進め、店員数を削減するのは不可能ではない。店員数が減れば、ある程度、質を上げられるので、こうした行為が発生するリスクを抑制できる。アルバイト店員の行動が企業経営に甚大な影響を及ぼすのであれば、相応のコストを投じてもよいと考える経営者が出てきてもおかしくはないだろう。

    コンビニの業務内容は多岐にわたる コンビニの業務内容は多岐にわたる

    短期的な視点では外国人店員の雇用が進む可能性も考えられる。

    日本で働いている外国人労働者の中には、母国でのさまざまな事情から、彼ら自身が持っている能力を十分に生かし切れない業務に従事する人も多い。外食産業やコンビニにおいては、本来であれば店長などマネジメント業務もできるレベルの人材が、ごく普通に一般店員として働いている。

    彼らの業務レベルは総じて高く、日本人の店員を雇うよりリスクが圧倒的に低いと考える企業は多いはずだ。機械化までの経過措置として、外国人の雇用が進む可能性は高く、優秀な外国人店員はまさに争奪戦となるだろう。

    日本は消費者の購買力が低く、外食チェーンは価格をちょっとでも上げると客数が減少する。コスト増加分を価格に転嫁できないので、各社ともギリギリのラインで運営しているのが現実である。

    極めて安価なサービスであっても、全従業員に対して完璧な行動を求めるのは、構造的にそもそも無理がある。一定割合でこうした行為が発生することについて、社会的にまったく許容できないのであれば、機械化や外国人の登用が進むことにならざるを得ないだろう。

    By |2019-02-22T22:48:47+09:0002/21/2019|ビジネスブログ|0 Comments