「・・・ん?」
モモンガは目を開ける。見慣れた自分の部屋に戻ってきてはいない。
「・・・どういうとこだ?」
モモンガは困惑する。コンソールを操作しようとするが、浮かび上がらない。
(何が・・・、いやまず落ちつけ。冷静さを欠けばどんな雑魚にも負ける可能性がある。しかし、どうするにも情報がたりない。どうするべきか・・・)
「どうされました?モモンガ様?」
初めて聞く女性の綺麗な声。モモンガは呆気にとられながら声の発生源を確認し、唖然とした。
(なっ!NPCが喋っているだと!どういうことだ!)
不可解な出来事に、優秀と言えるモモンガの思考はどこかでショートしていた。
すると返事がないことに不安を覚えたのかそのNPC、アルベドが近づいてくる。
「何かございましたか?」
モモンガの鼻腔を、芳しい香りがくすぐった。嗅覚が作用していることに、さらに困惑するが、
「いや・・・なんでもない」
なんとか返事をかえす。
(どうなっている?NPCに命が宿ったとでも言うのか?これはいったい・・・いや、まずは情報だ。NPCが生きていると仮定し行動するべきだな)
そう思考をまとめると、モモンガはすぐに指示をだす。
「セバス!プレアデスたちよ!玉座に」
『はっ!畏まりました』
全員の声が綺麗に重なり、セバスたちはすくっと立ち上がり、綺麗な所作で玉座階段下まで歩み寄り、再び平服する。
その様子を見て、モモンガは、やはりNPCが生きていると確信した。
「セバスは墳墓から出て周囲を確認しろ。範囲は2、いや1キロに限定。仮に知的生物がいた場合は交渉し友好的にここまでつれてこい。交渉の際は相手の条件を全て飲んでよい。戦闘行為を極力避け、情報を持ち帰ることを第一とせよ」
「了解いたしましたモモンガ様。直ちに行動を開始します」
「プレアデスから一人、ソリュシャンを連れていけ。相手のレベルを探れ、〈
ひとまず一手目はうった。次はNPCたちの意思と自身の能力の確認だ。
「アルベドは第四、第八以外の各階層守護者と連絡をとり、第六階層のアンフィテアトルムに集合させよ。時間は一時間後。アウラとマーレには私から伝えよう」
「畏まりました」
「プレアデスは第九階層で異常がないか確認せよ」
『畏まりました』
「よし。行け」
とりあえずはこれで良いだろう。状況次第では宝物殿のあいつも出す必要があるかもしれない。気は進まないが。
「NPCが生きているとなると
モモンガは今ある情報でいくつか仮説をたてる。
・仮説1 ハイクオリティーのユグドラシルⅡ
・仮説2 電脳空間に閉じ込められた
・仮説3 まったく別の世界に飛ばされた
仮説1はGMコールができないから排除、仮説2はありえそうだがNPCの様子を見る限り違うだろう。やはり仮想現実が現実になったと考えるのが自然か。
ラノベ展開かよ!!
モモンガは心の中で叫ぶ。
「今さら何を言っても仕方がないか・・・現状でできることをやろう・・・」
モモンガは現実逃避気味で第六階層へと転移した。
─第六階層 円形闘技場─
「成功だ・・・」
転移が成功したことにモモンガは安堵する。アイテムの使用に関しては問題ないようだ。これなら万が一、NPCたちが反旗を翻してもなんとかなる。
「とあ!」
威勢の良い掛け声とともに来賓席から飛び降りる影。
第六階層守護者アウラ・ベラ・フィオーラ
彼女は見事に着地を決めると小走りにモモンガに近づいてくる。そして太陽のような笑みを浮かべ、子供特有の多少高い声で挨拶をする。
「ようこそ、モモンガ様。アタシの守護階層へようこそ!」
「・・・ああ、少しばかり邪魔をする」
「なにを言うんですかー。モモンガ様はナザリック地下大墳墓の絶対支配者。邪魔だと思うヤツなんていません!」
「そういうものか・・・?」
モモンガは敵意がないことに少しばかり安堵し、気になったことを尋ねる。
「それよりアウラだけなのか?」
その問いにピンときたのかアウラは来賓席に向かって呼び掛ける。
「マーレ!モモンガ様がいらしてるんだから、早くきなさい!」
「う、うぅー・・・わ、わかってるよー」
すると、その声の主が来賓席から飛び降りる。
マーレ・ベロ・フィオーレ
アウラと同じく第六階層の守護者で、双子の片割れだ。
「お、お待たせしました、モモンガ様」
「ああ、マーレも元気そうでなによりだ」
双子の姿を見て、モモンガは、ぶくぶく茶釜さんが見たらどんな反応をするだろうかと想像する。
「ところでモモンガ様。今日はどのようなご用でいらしたのですか?」
「ん?ああ、今日来たのはこれを試そうと思ってな」
そう言いながらスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを掲げる。双子の顔は驚愕に変わる。
「本当ですか!それで・・・あたしたちもそれを見てよろしいのですか?」
「ああ、構わない。私だけが持つことを許された、最強の武器の力を見るが良い」
やったーと喜んでいるアウラ。マーレも喜色が隠しきれていない。
「・・・それとアウラ。今から一時間もしないうちに全階層守護者がここに集まる」
「え?シャルティアも来るんですか!?」
「全階層守護者だ」
「・・・はぁ」
たしか設定ではシャルティアとアウラは仲がよくないということになっていたか。揉め事だけは起こすなよと、モモンガは小さく呟いた。
しばらく自身の魔法を試し、協力してくれた双子に水をついであげたりとしているうちに守護者たちが集まった。セバスも戻ってきている。
「それでは、至高の御方に忠誠の儀を」
アルベド言葉に合わせ守護者たちが隊列をくむ。モモンガは慌てて絶望のオーラを発動する。
「第一、第二、第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン。御身の前に」
「第五階層守護者、コキュートス。御身ノ前ニ」
「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ。御身の前に」
「お、同じく第六階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレ。御身の前に」
「第七階層守護者、デミウルゴス。御身の前に」
「プレアデスリーダー、執事長、セバス・チャン。御身の前に」
「守護者統括、アルベド。御身の前に。至高なる御身よ。我らの忠義全てを御身に捧げます」
ごくりとモモンガの鳴らないはずの喉が音を立てるようだった。なんとか言葉を絞り出す。
「・・・面を上げよ」
ザッと音が聞こえそうな動きで、全員の頭が一斉にあがる。
「では・・・セバス、報告を」
「はっ!まず周囲1キロですが、草原です。人工建造物および知的生物は確認できませんでした。いたのは小動物がいく匹かだけでございます。また空は星空が広がっておりました」
「そうか。ごくろうだったな」
モモンガはセバスの報告を聞き、自身の仮説が正しかったことを確認する。
「守護者たちよ。聞いた通りだ。現在ナザリックは原因不明かつ不測の事態に巻き込まれている。まず各階層の警戒レベルを一段階あげろ。侵入者がいた場合、捕縛だ」
『畏まりました』
「次に、マーレはナザリックの隠蔽をしてくれ。壁に土をかけ、周囲にダミーも作るように。必要なものがあれば各階層から持ち出して構わない。上空部分は幻術を展開しておこう」
「は、はい。か、畏まりました」
とりあえずはこんなものか。抜けている部分もあるだろうが、それは追々でよいだろう。
「さて、今日は解散だ。どの程度で落ち着くか分からない以上、決して無理をするな。ああ、最後にお前たちに聞きたい。私とはお前たちにとってなんだ?」
モモンガは興味本位で自分の評価を尋ねる。それが死ぬほど──アンデットなのでもう死んでるが──後悔することになるとも知らず。
「・・・あいつら・・・え、何あの好評価」
異世界転移から一週間がたった。モモンガは自室にいる。部屋のすみには護衛として任命したナーベラル・ガンマがいる。最初は何人もつけられていたが落ち着かないからと一人にしたのだ。正直なところ、ナザリック内で危険はないし、護衛はいらないと思っているが。
ナーベラルのこともだが、この一週間はいろんなことがあった。外に出てデミウルゴスと星空を眺めている時に冗談で言ったつもりの「世界征服なんておもしろいな」をガチで受け取られ、いつの間にか世界征服計画が始動していたり(偶然気付くことができ、情報が少ないからと先延ばしにした)、宝物殿に行って
さて、モモンガが自室で何をしているかというと、『
しばらく弄っていると村らしきものが確認できた。よく見ると火が上がっているように見える。
「・・・祭り?いや・・・殺戮か・・・」
モモンガは冷静に分析する。いや、「冷静に」分析できてしまった。殺戮風景などリアルでのモモンガなら耐えられなかっただろう光景だ。危険な兆候だとモモンガは感じる。
(異形種のアバターに精神が引っ張られているな。しかし、不快感があるあたり『人化の指輪』のおかげか。・・・さて、どうするかな・・・)
モモンガは村を助けるかどうかメリット計算をする。すると、鏡に兵士に追われる姉妹が映る。
(どのみちこの世界の戦闘力の確認は必要だからな。それに、たっちさんに救われた身として、見捨てる訳にもいかないな)
『困った人を助けるのは当たり前』
かつて自分を助けてくれた聖騎士を思いだしながらモモンガは指示をとばす。
「ナーベラル。私は少し出てくる。アルベドに完全装備で来るように伝えろ。次に後詰めの準備だ。この村に隠密能力に長けたシモベを複数人送り込め」
「畏まりました」
「あくまでこの村を助ける名目だ。それをしっかり伝えろ。では、
モモンガはナーベラルに命令を出し、すぐに村へ向かった。
〈原作の変更点〉
・アルベドの設定「 」あえて空白に
・アインズが世界征服計画を把握
・パンドラズ・アクター登場
・『人化の指輪』