山口は被害から1カ月後の1月8日に動画配信サービス「SHOWROOM」で涙ながらに事件を告白した。翌日、ツイッターの投稿でも「先月、公演が終わり帰宅時に男2人に襲われました。暴行罪で逮捕されましたがもう釈放されてしまいました」と明かした。しかも、犯人の一人は以前メンバーが住んでいた向かいの部屋から出てきたという衝撃的な内容だった。
「殺されてたらどうするんだろう」とまで言って怯えた彼女の言葉からは、事件の裏で犯行を手引きした「身内」がいた疑いも浮上した。しかし、グループの支配人ら運営側は山口に対応を約束しながらも、実行には移されなかったという。
警察は犯人側に「性的暴行などの意図はなかった」として起訴せず釈放した。だが、事件が明るみに出た際のグループ運営サイドの動きは、10日の「一連の騒動についてのご報告」を見ても明らかな通り、あまりに不自然なものだった。
「メンバーの一人が男から道で声をかけられ、山口さんの自宅は知らないものの、推測できるような帰宅時間を伝えてしまったことを確認した」
メンバーの関与を認めながらも「アイドルが通りすがりの男から別メンバーの帰宅時間を聞かれ、教えた」という不可解な状況を平然と伝えたのである。その上で示された防犯ベルの支給という「再発防止策」がさらに拍車をかけた。
当然、このような報告でファンが納得するはずもなく、事前に行われた公演で被害者本人が謝罪したことも相まって、インターネット上で炎上した。しかし、一連の事件に関する週刊誌の記事は、わざと核心に触れる気がないような内容になっていた。
アイドルを商品として扱う所属事務所が、その商品を傷つけられたにもかかわらず、メディアも抱き込んで事件解明より事態収束を急いだのである。芸能界を長く取材している人間からすれば、表にできない裏事情があるからだと察しがつく。
その事情が山口の命よりも大事なのだから、運営側にとっては金儲けの邪魔になるような話であったことは容易に想像つく。運営会社のAKSは「メンバーの中に違法な行為をした者はいない」と強調したが、違法性がなくとも事件の引き金になった可能性が疑われている中での弁明は、いかにも何かを隠したいと勘繰らざるを得ない。
そんな運営側による不可解な対応を見て、私は別の女性アイドルグループのあるメンバーの愚痴を思い出した。約3年前、共通の知人を介して食事したとき、彼女は「仲間の嫌がらせがエスカレートしている」とこぼした。