| 鹿落坂を登り、やや平坦になった道を東進し最初の信号を右折すると、道はヘアピン状になった急坂になり八木山へ向かってひたすらの登りになる。 この道は最終的に動物園前のT字路になって終わるのだが、その間、思いきりの汗をかかせてくれる。向山の高校を過ぎて緩く左に折れる頃には市街のビル群が遙か遠くの街のように浮かんで見えたりもする。 こういった景観でも広がらなければ、坂を悪戦苦闘しながら漕ぎ登る行為はなんとつまらんものだろう。かっての「旅の人々」が峠の茶屋までひたすら登り、そこで来し方を眺め行く末を眺めては時を過ごしたのもそんな気分からか。 まあ、そこまでの感慨も湧かないが、できれば坂の天辺に大きな窓のある落ち着いた喫茶店があり、静かにコーヒーでも啜れるのであれば言うことはない。そしてできればそう遠くないあたりに港でもあって、霧笛でもぼんやり聞こえてくるような環境だったらいいのだが。 この坂を朝夕登り降りしなければならないとすれば、このあたりの児童生徒の足腰は、きっと知らず知らずの間に鍛えられるに違いない。どうりでビュンビュンぶち抜かれるわけだ。 せっかく天辺まできたんだからと、またぞろ動物園でカバやローランドゴリラとのご対面となった。まだ猛獣舎の新築工事が進行中でライオンやトラやシロクマはどっかに一時引っ越し中だった。戻りたくないなんて駄々をこねなければいいが。 どこの檻の前に立っても、どっかから「可愛いっ!」の声が聞こえてくるのは、ちょっと面白かった。 |