本町の交差点を駅方向に向い、結婚式場の隣の路地を入ると、緩やかな坂道が花京院方向に延びている。 仙台七坂のひとつ茂市ヶ坂である。 いたって平凡な、坂としては味わいに乏しい坂なのだが、何ゆえここが七坂といった坂として伝えられてきたものかよくわからない。 昔、このあたりに目の不自由な茂市という男が住んでいたのだ。またこのあたりの坂の両側と、坂下から元寺小路東部は職人町だったと辻標にあるのみで、はあ、そうなんですか。といったところではある。 このへんは予備校に通っていた頃、もうとんでもなく遙かな昔、よく寄り道をしていたあたりで、その頃のことを考えればその変貌ぶりは驚くばかりだ。 茂市さん、どんな思いでこの坂を行き来したものやら。そしてそんな姿を周りの職人やその家族がどんなふうに見ていたのか、そのへんの言い伝えがないのが多少残念ではある。 |