米人気ドラマ俳優、ヘイトクライムを自作自演か 警察が訴追
米シカゴの警察は20日、人気ドラマ「Empire 成功の代償」に出演している俳優、ジャシー・スモレット氏(36)が警察に対し、ヘイトクライム(憎悪犯罪)の被害に遭ったとする虚偽の通報をした罪で訴追したと発表した。スモレット容疑者は先月、男2人から同性愛者嫌悪的で人種差別的な暴力行為を受けたと主張していた。
この事件をめぐっては米メディアが、スモレット容疑者自身がこの襲撃を計画し、ナイジェリア人の兄弟に金銭を支払ったという捜査筋の話を報じたことで、主張に疑念が持たれていた。
シカゴ警察のアンソニー・グリエルミ報道官は20日にツイッターで、容疑者を治安びん乱行為および虚偽通報の疑いで訴追したと明らかにした。
「捜査員は容疑者の弁護団と連絡を取り、逮捕のため適切な出頭方法を交渉する」と、報道官はツイートした。
容疑者の代理人を務めるトッド・ピューとヴィクター・ヘンダーソン両弁護士は声明で、「すべての市民と同じように、スモレット氏には推定無罪の原則が適用される。特に今回のように、真実とうその情報が繰り返しリークされた今回のような捜査においては」とコメントした。
弁護団はこれまでに、スモレット容疑者がヘイトクライム攻撃をでっちあげたという主張を強く否定している。
訴追に先立ち米CBSシカゴは20日、ナイジェリア人の兄弟が、犯行時に使用したとされるスキー用のフェイスマスクなどを購入する様子だとされる映像を入手した。
米CBSシカゴのチャーリー・デ・マー記者は、「『襲撃』の前に物品を購入する兄弟が映った監視カメラ映像を入手した。情報筋によると、ジャシー・スモレットはどれを買うよう兄弟に指示していた」とツイートした。
ナイジェリア人の兄弟、オラとアベル・オサンデイロ容疑者は事件後にアメリカを出国し、先週再入国した際に逮捕された。その後2人は釈放され、捜査に協力しているとされる。
兄弟のうち1人はスモレット氏の個人トレーナーで、2人ともドラマ「Empire 成功の代償」にエキストラとして出演経験がある。
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騒動の経緯
自分が同性愛者だと公表しているスモレット容疑者は、夜間に食べ物を買いに外出したところ、2人組みの白人の男たちから人種的で同性愛者的な侮辱を浴びせられ、殴られ、なんらかの化学物質をかけられ、首にロープをかけられたと主張していた。
2人はドナルド・トランプ米大統領の「Make America Great Again(米国を再び偉大にしよう)」というスローガンを引き合いに、「ここはMAGAの国だ」と言ったという。
スモレット容疑者は、この事件によって自分は「永遠に変わってしまった」と述べていた。
事件以降、アカデミー賞受賞者のヴァイオラ・デイヴィス氏やスーパーモデルのナオミ・キャンベル氏ら著名人から同氏を支持する声が殺到していた。