【芸能・社会】松本幸四郎、13年ぶり三谷幸喜作 6月歌舞伎「大黒屋光太夫は不思議な人です」2019年2月22日 紙面から
歌舞伎俳優の松本幸四郎(46)が6月の歌舞伎座公演夜の部で、江戸時代に漂流の末、ロシアにたどり着き、10年の時を経て帰国した大黒屋光太夫の数奇な運命を演じることになり、21日、三重県鈴鹿市の大黒屋光太夫記念館などゆかりの場所を訪れ、役づくりの抱負を語った。 みなもと太郎さんの人気歴史漫画「風雲児たち」が原作で、三谷幸喜さんの作・演出。染五郎時代に主演した「決闘!高田馬場」以来13年ぶりの三谷さんの歌舞伎作品で、新元号での最初の新作歌舞伎になる。 光太夫役の幸四郎は、一行17人が出帆した白子港近くの記念館で、光太夫がロシアの言葉を書いた掛け軸や帰国後に蘭学者らに招かれた宴会の絵などを見学、供養碑前で手を合わせた。 「漂流はアクシデントですけど、彼には運命だったのでは。ロシアを日本に教えてくれた、世界に視野を広げてくれたという役割を持った人だったのかな。運命を受け入れて、純粋に生き抜いた人」と幸四郎。 舞台では、ロシア語を学んだという史実に基づき、ロシア語のセリフもありそう。「日本の場面がない歌舞伎は初めてでは」。 市川猿之助(43)が船乗り庄造と女帝エカテリーナ、松本白鸚(76)が船親司(ふなおやじ)の三五郎とポチョムキン、片岡愛之助(46)が船乗り新蔵を演じる。 光太夫の人柄について、幸四郎は「ヒーローとかではなく、俺についてこいというタイプではなかったんじゃないかな。不思議な人です」と思いをはせた。三谷作品には絶大な信頼を寄せていて、「傑作にしかならない」。ただ父の白鸚はロシア人の役もあり「一番不安に思っているかも」。公演は、6月1~25日。 <大黒屋光太夫> 1782(天明2)年、船頭として16人とともに新昌丸で三重県の白子港を江戸に向けて出帆。駿河沖で暴風雨に遭い、漂流。7カ月後アリューシャン列島のアムチトカ島に漂着。約4年の島暮らしの後、シベリア本土へ。92(寛政4)年、小市、磯吉と根室に帰国。日ロ会談の端緒を開く。78歳で他界。映画化された井上靖の小説「おろしや国酔夢譚」で有名。
|